ダイオキシンの環境リスク評価を研究されている
松崎早苗先生
(通産省物質研)を訪ねて
1998.1 鈴木 健介

 先生はこれまで新利根町の焼却炉のダイオキシン汚染を調査しておられ、本年のインディアナポリスでの国際ダイオキシンシンポジウムで摂南大学の宮田先生が発表された「焼却炉周辺におけるダイオキシン類汚染実態」に関するデータの説明を受けました。また、本年のシンポジウムでは、1996年3月にアメリカのコルボーン女史によって出版された「Our Stolen Futuer」(日本語訳「奪われし未来」翔泳社)と言う本に代表されるダイオキシンの生殖毒性、環境ホルモンとしてのエンドクライン作用(物質が細胞の外側から引き起こす作用)が非常に話題になったらしく、これらの問題の重要性を話し合いました。先生の警鐘が「水情報」'97年9月号に「『Our Stolen Futuer』の問題提起と私たちの課題−これだけ命を追いつめたら、もう充分−にまとめられていますので、参考にして下さい。
新利根町焼却炉周辺地域のダイオキシン汚染
 焼却炉は竜ヶ崎市と江戸崎町と新利根町の境界にあります。焼却炉を中心に7方向、400mおきの土壌のダイオキシン濃度を測定し、風下の新利根町方向への汚染等が非常に高いことが報告されました。特に癌による死亡率が高いと問題になっている根本区域では、他区域より2倍も高濃度であり、癌死亡率が2倍高いこととの関連が疑われます。毒性等価量(pg/g)(ダイオキシンの異性体はそれぞれ毒性が異なるので、もっとも強い異性体TCDDの量に換算したもの)風下方向へは400mおきに、252、211,52,14,16,30,29,30,32となっており、焼却炉から風下へ1km以内が非常に危険であるとのことが実証されました。
 先生との間で話題になったのは、「焼却炉の使用停止と賠償、新設炉建設の工事差し止め」の裁判を、全国で初めて新利根町住民が起こしたことです。癌との因果関係等難しい問題もあると思いますが、裁判を通して明らかになることもあるでしょうし、裁判所がダイオキシンのリスクをどのように評価するのか興味深い裁判だと思います。
2. ダイオキシンの生殖毒性
 ダイオキシンと健康被害の面で今後問題になるのは、環境ホルモンとしてのダイオキシン、つまりダイオキシンが女性ホルモンであるエストロゲンと同じ作用をするという問題ではないかと話し合いました。「Our Stolen Futuer」では、妊娠中のラットにダイオキシンを投与した場合、男性胎児の生殖器が著しく萎縮するという実験が詳しく報告されています。本年のシンポジウムでもっとも注目を浴びたのは、十数年前に起きたイタリア、セベソ市での農薬工場爆発事故後のダイオキシン追跡調査で、男の子があまり生まれず、女の子が圧倒的に多く生まれるという報告であったそうです。データ的にも両親のダイオキシンの血中濃度と女の子の生まれた比率との関連が見事に示されており、非常に重大な問題だと感じています。
 以上、先生とお話ししてダイオキシンの現状をんまで感じることができ、ここに紹介しました貴重な情報を得ることができました。また、所沢・狭山境界の産廃処理場の資料もいただいてきました。いろんなところの活動から得るものも多いことを改めて感じています。


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