環境ホルモン最新事情と展望
内分泌かく乱物質の生体影響に関する国際ワークショップ’
99市民プログラム
2000.1 青柳 節子
“環境ホルモン最新事情と展望”に参加して
  神戸で'99年12月9日〜11日に環境庁主催「第2回内分泌撹乱化学物質問題に関する国際シンポジウム」が開かれました。続いて13日,14日に「内分泌かく乱物質の生体影響に関する国際ワークショップ横浜’99」が横浜で開かれ、その直後の同じ14日にEED国際ワークショップ横浜実行委員会主催で、市民向け講演会が開かれました。

 私は村岡公民館主催の女性セミナー「環境ホルモンとは何か?」で、横浜市大教授の井口泰泉氏の講義を聞き、そこの参加者からこの市民プログラムの事を知り参加しました。

 ここでは井口泰泉氏が司会をつとめ、第一線の環境ホルモン学者4人が講演しました。

 まず「奪われし未来」の作者の一人動物学者マイヤーズ氏が立ち、「私たちの血液サンプルを調べれば、今世紀はじめにはなかった化学物質が何百と見つかるだろう。その健康影響への知識はなく、基本データも持っていない。私たち現代人は実験台である。」と感性に訴えるように始め、つぎのような話をしました。
野生生物への内分泌撹乱の事実、動物実験はヒトに予期できること、予測はえき学的なものと一致すること、実験室内と同様なことが世界 各地でおきていること。

毎日報告される新しい結果から、汚染はグローバル、内分泌撹乱物質の範囲はひろがっている(最近ではポリフェノール化合物の「フタラート」が欧州で禁止になった)。またエストロゲン(女性ホルモン)様のみでなく、テストステロン(雄性ホルモン)様の環境ホルモンもある。汚染のレベルが低容量でも影響を受ける。胎児の受けた影響は生涯にわたって免疫系や脳の発達に影響する。
最近の研究では乳がんがジエルドリン(Dieldrin)で増大、また睾丸ガン尿道苛烈が動物で90年代に増加している。PCBは’眠れる巨人’で、リンパガンの動物実験では、PCBのみあるいはE・Bバーズウイルス(E-BVirns)のみではリスクは5倍未満だがPCBとEBVを両方同時に与えるとPCBは免疫力を低下させるため病気にかかりやすくなり、リスクは20倍以上になる。大西洋のシャケはこの20年で減少し絶滅の危機にある。原因は大量の農薬の殺虫剤がまかれたが、その中のかくはん助成混合物であるノニルフェノールに環境ホルモン作用があった。直接は死なないが淡水から海水に移動した時点で死んだ。これは内分泌撹乱物質の特徴でその時はOKで後になって死ぬ。
動物実験でわかったことは疫学的調査は充分ではないということ。理由は、曝露してもすぐ出てこない、混合物の作用は推測困難,容量 反応が関係ない場合が多い(中容量が一番とか)などによる。
21世紀の新しいルールづくり
 1.生態系に対し蓄積する物質は撤去する
 2.蓄積が確認されなくても野生生物実験結果を再検討する
 3.人体に安全な物質以外は隔離する

 つぎに愛媛大の田辺伸介教授がイルカの有機塩素化合物汚染について講演しました。
哺乳動物のPCB蓄積濃度は陸上のイヌなどは低く,つぎに高いのは沿岸、一番蓄積されているのは外洋のスジイルカなどである。この不思議な現象の原因を調べたところ熱帯地域での有機塩素化合物の利用であった。例えば南インドなどで水田にまかれ た農薬BHCの99.6%は大気中に移り、移動して北の海に溶け込む。海洋はこの種の物質のたまり場となっていてそれがイルカや鯨 などの体内の脂肪組織に貯蔵される。酵素が弱いため分解能力が弱く、蓄積されて授乳時に60%次世代に移行する。感染症や座礁による大量変死事件が今世紀後半に集中しているのはこの影響を匂わせているが因果関係を裏付ける明確な証拠は得られていない。
 ダイオキシン汚染はヒトが600pgに対してアホウドリは10000pgである。
海棲哺乳動物には特異な汚染がありこのことはヒト中心の環境観では生態系は守れないことを示している。生態系本意の環境観に 立脚すべきである。

 3人目は京都大学院医学研究科の森千里助教授がヒトへの影響、特に日本人の精巣重量の分析結果を報告しました。
内分泌撹乱化学物質のヒトへの影響は精子数減少や尿道苛烈の増加、精巣ガン、乳ガン、子宮内膜症、女性の思春期の早熟化、その他免疫系,神経系への影響などが報告されている。またヒトの臍帯中にはダイオキシンやPCB、DDT、重金属、ビスフェノールAが検出され、 トータルで13.52pg/gあり、胎児に複合汚染がおこっている。
動物実験で精巣重量は1日精子産出量や精子数と相関することが報告されているので東京都監察医務院の過去50年間20000検死体の精巣重量などを調べた結果、つぎのことが分かった。
1)精巣重量がピークに到達する年齢に若年化傾向が認められる。
2)ピーク時の精巣重量は出生年で1960年頃まで上昇しているが、その後やや下降し始めている。
3)精巣重量のピーク時からの下降速度が速まっている。
4)精巣重量の立ち上がり(onset)年齢に若年化傾向がみられる。
精子数減少とは別の現象から日本人の生殖能力に変化が生じていることが見出された。

 最後に元横浜市大学長で現在横浜市教育委員長の高杉氏のお話でした。
まだ環境ホルモンが騒がれる以前で、流産防止剤DES症候群発見より数年前にマウスの胎児に対するエストロゲンの生涯に渡る影響(不可逆作用)を発見していた。おとなのマウスに、女性ホルモンを与えると、与えている期間中は発情状態がつづき排卵が起こらないが、投与を止めれば元に戻り排卵と発情を繰り返す周期に戻る。ところが胎児または新生児のマウスにエストロゲンを与えると発情状態がずっとつづき、投与を止めても元に戻らなくなり周期が起こらない。
可逆的な反応であれば一過性の毒性物質と変わることがないが、内分泌撹乱物質は胎児~新生児期の特定の発達段階では短期間の微量な 曝露であっても不可逆的に作用するので、これまでの催奇形性の毒物と違い、微量でも有効な遅発性毒物である。

 合成女性ホルモン(エストロゲン)DESを流産防止剤として500万人以上に与えたその後の影響(生まれた子ども達に成長してから子宮 の異常、不妊、精子形成不全、前立腺ガン、精巣ガン多発)は内分泌撹乱物質の不可逆的作用を示している。

 
 最後に横浜宣言が採択されました。私たちはすぐ結果が見えないと危険性を感じない。最近環境ホルモンの報道が減っているのが気になります。


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