食べ物が足りなくなったら?
2002.8 諏訪謙司
不測時(有事も)には、供出・配給・物価統制・・・・

 表題は、7月農林水産省が発行したパンフレット名で、これは今年3月発表の「不測時の食料安全保障マニュアル」の概要である。不測時とは、国内外における、異常気象等による大不作、地域紛争や突発的事件、外国の輸出規制、有害農産物の輸入規制時などである。

 日本の人口は世界の2%なのに、農産物貿易では世界全体の約1割を輸入。食料自給率は先進国で最低の40%であり、国民食糧の60%を外国からの輸入に依存している。
平成12年度の国民1人1日当たり供給熱量は2645kcal。輸入が全て停止されたと仮定したら1058kcalとなる。日本人のエネルギー所要量は、2歳の女児でも1150kcal必要。敗戦直後の摂取水準でも1人1721kcal。これでは、国民の生存すら危ない。

 このような不測時における対策として、食糧備蓄や緊急食料増産、米麦いも類などへの作付け転換。農地以外の土地の農業利用。食料配給・物価統制の実施。生産者・事業者などに対し、食料の売り渡し、輸送、保管すべきことの指示、命令などを決めている。
 敗戦から57年目の夏、戦中・戦後の食料不足・飢餓状態を体験した世代にとって、食料の強制供出、配給、物価統制などという言葉は、思い出すだけでも戦慄を覚える。

 パンフレットは、「備えあれば憂いなし! 食料はいつ不足するとも限りません。日頃から不測時を想定した準備をすることも考えましょう。」と書いている。災害などに備えて国民食料を確保するための緊急対策は当然必要である。
 しかし、最近起きた不測時・食料供給の混乱の事例として、平成13年のアメリカでの同時多発テロによる農林水産物の輸送など一時的な制限などを挙げている。
 こうしてみると、この時期に、「備えあれば憂いなし」という言葉は、小泉総理のアメリカのテロ事件を挙げ、今春、有事法制の必要性を説いた言葉と重なってくる。
 有事法制にいう「備え」とは、戦時動員の備えである。自然災害から国民の命の源、食料を守る「備え」とは、事情が違う。この時期に災害対策が戦争法制に敷き写しされたと考えられる。万一戦争になったら、緊急備蓄や増産では間に合わない。国際紛争予防対策は、平和的手段に徹すべきで、戦争準備対策であってはならない。


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