神奈川県知事
岡 崎 洋 様

『ダイオキシン類河川調I査等の結果報告』に対する
市民対策会議の質問と要望

2001.2.1

荏原ダイオキシン問題市民対策会議
代 表 井之川平 等
〃  川 崎  健
 〃  戸 田  摂
  〃 山 本 範 子

[総合的所見]
 神奈川県は昨年12月8日に『ダイオキシン類河川調査等の結果について』を発表しました。
 この報告書は、昨年5月31日に公表された調査結果の続編とも言うべきものですが、子細に検討していくといくつか明らかになったことと新たな疑問が浮かび上がってきます。

 明らかになったことのひとつは、水質に含まれるダイオキシン濃度が3/24〜4/26の時点にくらべて5/24〜6/16の数値が著しく低下していることで、その背景に荏原の焼却炉の操業停止があったことから、引地川水系のダイオキシン汚染源がまさに荏原の焼却炉であったことを客観的に証明したことです。もうひとつ、高名橋の上流域の引地川や支流から環境基準値をこえる高濃度のダイオキシン類が検出された結果、荏原以外にも汚染源が存在することが明らかになりました。しかしその汚染源がどこにあるのかは、特定されていません。そのことはわずかずつとはいえ水田土壌の検体から230pgTEQ/gが検出されたことと重ね合わせると、無視できない疑問を呈していると言わねばなりません。

 一方今回の調査結果でも明らかにされなかったことが幾つもあることが気になります。その第1は、底泥に沈殿しているダイオキシンの状態と量が見えてこないことです。私たちはこの間、折に触れて底泥の中に沈殿・滞留しているダイオキシンを調査するとともに引地川水系のダイオキシン汚染を根本から排除するためには、ダイオキシンを潜ませた底泥を回収・撤去する以外に無い、と指摘してきました。ところが今回の調査でも底質に関しては調査地点こそ17ヵ所あげられていますが、下層底質の調査はわずか3ヵ所、河口付近の調査は3ヵ所で、いずれも1回限りで済ませています。これで一体どれだけのことが検証されるというのでしょうか。
 また、生態系への調査結果が公表されませんでした。そもそも生態系調査が行われたのかどうかすら、一言も触れていないのです。ダイオキシン汚染の影響の範囲と毒性については、人体への影響が心配され、藤沢市が健康調査と母乳調査を始めたところです。同時に水棲昆虫や魚類、鳥類の調査を通じて影響範囲や程度が確かめられ、今後の対策に貴重なデータを提供する筈なのです。
 以上見てきたように今回の調査結果の報告は、全体として中間報告の域を出ていないし、むしろ調査結果から新たな課題も浮かび上かってきたということができます。

 この報告をうけて、一部に『荏原ダイオキシン問題は最終版を迎えた』とか『事実上の幕引き』といった報道がされていることは、きわめて遺憾です。県民・市民とともに問題の早期解決を図る立場を堅持されるよう強く要望します。

[調査結果についての質問]
1 なぜ調査結果の公表が遅れたのですか
 この調査の大半は7月に終わっています。事前に私たちが確認したところでは調査結果のまとめと公表は9月中ということでした。それにもかかわらず実際は2ヵ月余りも遅れたわけです。この遅れは何に起因するものなのでしょうか。勘ぐれば水賃、底質の調査で高い数値が検出されたことから、ある程度それらの数値が下がるまで調査を継続し、環境基準を下回る数値が得られるまで公表に“待った”をかけたと言うこともできます。
 とりわけ底賀詞査に関しては、5/24〜6/16の調査でも最高値210pgTEQ/gが検出されており、この数値は環境庁が行った平成10年度、11年度の全国調査の最高数値に近い濃度です。
このことは依然としてダイオキシン汚染が底泥中に滞留していることを推測させます。

2 底質調査の範囲、とりわけ下層底質について
 底泥に沈殿しているダイオキシンの濃度を知り、高濃度に汚染された底泥を撤去回収しない限りダイオキシンによる生態系への影響は断ち切れない、というのが専門家の意見であり、私たちの当初からの主張でした。この点に関して調査方法に疑問があります。
 表2をみると下層底質については5/24の3ヵ所以外調ペていないようなのです。しかもその3地点においてもそれぞれ深度に差異があり、どのような基準で深度が選択されたのか疑問です。加えて、サンプル数が極めて少ないことも指摘しておきます。
 いずれにしても、7年余にわたって荏原製作所が垂れ流してきたダイオキシンが、底質のどの層に潜んでいて、どのような条件の下で湧出するのかを知ることが求められているはずなのに、この程度の調査で良しとする姿勢に納得がいきません。

3 汚染された水田土壌はどこにあるのですか
 「農作物などの調査」のうち、水田土壌の1検体に230pg−TEQ/gというのが目を引きます。このことに関しては市議会特別委員会でも「市域か市外か」という質問が出され、「個人情報にかかわり公表できない」との答弁があったとか。もしそうだとすれば全く論外です。個人を特定したり、特定の個人に被壱や不利益が及ぶのであれば非公開も当然と言えるでしょうが、汚染された水田が藤沢市内かどうか明らかにしたところで、個人を特定できようはずも無いのですから。伝え聞くところによるとこの水田は藤沢市内で稲荷雨水幹線より上流の引地川沿いにあるとのこと。仮にそうだとすれば、荏原以外の汚染源が考えられます。排出源究明調査で蓼川の底賃から最高値46pgTEQ/gが検出されていることと重ね合わせると、他の汚染源を特定することは焦眉の急務ではないでしょうか。
 情報を秘匿するよりも原因を糾明し、万全の対策を請じることこそ取るべき態度だと考えます。そのことが荏原製作所以外に新たに汚染源を浮かび上がらせ、対象の拡大と調査の困難を招いたとしても、行政として真正面から受け止めるべきでしょう。

4 生態系調査はどうなっているのですか
 今回の報告で漏れているのが生態系の調査結果です。報告されないということは、調査自体がされていないということでしょうか。漁業組合の協力を得て、対象種目、サンプル数とも少ないながら調査がなされていたという情報もあります。
 言うまでもなく、ダイオキシンの毒性や有害性を知り、有効な対策を立てるうえで生態系への影響を調査することは不可欠です。これまで報告された限りでは、調査は主に引地川河口域、江の島周辺の海域でシラス、キス、ボラ等の魚類を対象として行われて釆ました。
 しかし最も汚染されていると思われるゴカイ、ムラサキイガイ、カニ顆や水生昆虫の調査がされていません。また食物連鎖の“始まりと終わり”ともいうべきプランクトンと鳥類も対象外です。これらの調査の困難なこと、時間と経費がかかること、などは十分理解したうえで、なおかつ、国の協力も得てもっと対象種目とサンプル数を増やして調査すべきと考えます。ことは市民の健康と次世代まで持続する健康への脅威にかかわることなのですから。

[調査結果を踏まえた要望]
1 底賃調査の継続とサンプルの増大を図ること
 底泥の回収・撤去の必要性を見極めるためにも稲荷雨水幹線放流地点から河口域海岸 付近までの底賃調査を継続するとともに調査地点とサンプリングの増大を図って下さい。
 下層域の調査にあたってはボーリング調査して下さい。

2 蓼川の水質と底賃の調査を継続すること
 今回の調査で蓼川のダイオキシン汚染が水質、底質ともきわだっていたことから、同 川の調査を継続するとともに、汚染源の特定を急いで下さい。

3 汚染された水田土壌対策を急ぐこと
 報告書にある汚染水田がどこであれ、汚染源の特定と汚染除去対策が急がれます。ま た、汚染の範囲を知るためにも周辺土壌の調査は不可欠です。

4 生態系調査の結果報告を急ぐとともに調査対象を拡大すること
 生態系調査の結果が公表されていないことは、情報公開の原則からも認められません。 また調査対象をより広範囲に、サンプル数を増やすことも必要です。

5 納得のゆく調査結果と対策が得られるまでは事故炉の解体とガス化溶融炉の実験再開は認めないこと
 ダイオキシン発生のメカニズムを解明し、発生抑制、排出規制、健康被害と環境汚染 の未然防止、汚染の除去と原状回復などの対策が請じられるまで、荏原製作所の事故炉 解体とガス化溶融炉の実験再開は認めないで下さい。

以 上

荏原ダイオキシン問題市民対策会議
◆川と海の環境を守る会◆湘南のなぎさを守る藤沢市民の会◆
新日本婦人の会藤沢支部◆デポジット藤沢の会◆すずめの会◆
ストップ・ザ・ダイオキシン住民の会◆生産者と消費者が手をつなぐ会藤沢支部◆
藤沢環境運動市民連絡会議◆