これだけでわかる女性観

 かつて国会の論議で、当時購入したファントムが野党の攻撃にさらされその性能が極めて攻撃的で日本の憲法の理念にふさわしからざるものとされ、とうとうその爆撃装置を取り外す羽目になったが、そうした議論の限りでいえば、今回の国産FSXはそのためのリクイアイアメントもふくめて、極めて日本的ともいえる積極的攻撃性の薄い戦闘機ということにもなる。
 国産FSXのイメイジは、日本というけっして広くない国土のみをまさに専守防衛するための戦闘機であって、攻められた時だけ戦って自分を守るという憲法の規制に順応して、とにかくこの国土の上で敵を有力に防ぎかつ撃滅するという、極めて奇形なニーズに応えたものだった。

--中略--

 経緯について確認のために会った時、三菱重工の社長と担当の副社長に私が、「つまり我々は二十一、二歳のヴァージンの花嫁を迎えようとしていたのに、やってきたのは三十過ぎの出戻りということですか」といったら副社長が、「いや、三十過ぎというのは少し酷でしょう」というから、「それなら出戻りは出戻りにしてもいったい幾つくらいですか」聞いたら、「そうですな、ま、二十七、八というところでしょうか」ということだった。

*********************
『FSXの挫折-戦後体制の未終焉』(エッセイ)より
 “次期支援戦闘機”通称FSXの製造について、攻撃力に優れた国産最新鋭機を作れるはずの三菱重工につくらせず、日米共同開発のF16の改良機に決まった事への不満を述べる文章で。こういうのを“ユーモア”と勘違いする神経が信じられない。
(1991年 中央公論社:刊 『来世紀の余韻』所収)