<誌上対決>日本について語ろう
石原慎太郎・小田実対談 
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小田:

    あなたは核武装をやる方がいいと思う日本人がどんどんふえてくるという確信をもっていらっしゃる。が、ぼくはそうは思わない。それにそういう考え方は、世界的に時代おくれの考え方じゃないか。

石原:

    いや違う。これから十年後、非常にポピュラーな考え方になる。好き嫌いは別に、ならざるを得ない。

小田:

    さァどうかな。それから、四捨五入すれば少数者の問題が切り捨てられる。たとえば被爆者の問題、黒人の問題……。そういうものをどうするか。ぼくの考えでは、民主主義っていうのは人間の平等を実現することだと思う。そのための手段として多数決があるわけで、多数決自体は目的じゃない。その多数決と同等の価値をもっているのが、少数者の政治活動の権利──たとえば集会を開く、デモ行進をする、坐りこみをするというような民衆固有の権利だ。
    これがなければ民主主義は達成されないと思う。

石原:

    それがあるじゃないか十分に。

小田:

    いや、ないと思う。

石原:

    自民党がだらしなく、非核三原則なんて辻棲のあわぬパカみたいなこといい出しているじゃないか。あなた方の運動の効用、十分に足りてるよ。

小田:

    しかしあなたはそれに対して不満なんでしょう?核の問題、もっと推進しろというわけでしょう?

石原:

    そうです。少くとも、いつでも兵器に切り換えることのできるだけの平和目的の核開発はね。平和も軍事も核ってのは表裏をなしてるんだ。

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『文藝春秋』1969年12月号より