災害は戦争と一緒

 今夏、三宅島を何度となく視察しました。硫黄ガスの異臭と靄がかった大気、地表を覆い尽くした火山灰、さながらヴィヤールの絵のようなモノクロームの世界の、住民避難後の人気の消えた町並みを目にする度に、何度となくある感慨にとらわれました。
 
災害は、人間にとって社会にとって最も歴然とした敵である、と。

−中略−

 それにしてもやはり今回の訓練で画期的だったのは、自衛隊三軍が多く参加してくれたことにあります。−中略−
 しかし、都だけでやろう、というわけにはいかない。国が動いてくれなければどうしようもない。で当時の小渕首相に相談をしたら、協力してくれることになった。私は小渕さんに「いってみれば、僕が二〇三高地で苦労している乃木中将で、君はそれを助けにくる総理大臣、桂大将なんだからな」と話したことがある。結局桂大将の役は森さんがやることになったわけだが、もともとは小渕さんの役回りだった。

−中略−


 もう一つ、外国人に関わる報道にも、偏見に満ちたものが多く見られましたね。「三国人」発言を誤読した上で外国人差別の論調とかみ合わせた、これもセンチメンタルな報道だ。が、実態は全くの逆。情報のとどきにくい外国人をどうやって救助するかが大事で、いかに日本人と同様の保護を与えることができるか、が大きな課題になっているんです。今回は訓練の主眼を<レスキュー>に絞ったため、次回は外国からの救助隊をどう扱うか、といったことにも踏み込んで訓練を行うつもりです。
 ただし、一般の外国人を保護するためにも、不法入国した外国人や蛇頭、アジアン・マフィアは彼らとは別に引き続き危険視していかないとね。先にも記したように、災害は騒擾を惹起します。その騒擾主体に彼らがなる可能性はだれにも否定できない。もちろん、災害が起きれば彼らも救助の対象となるから、今回の訓練で作った外国語のパンフレットやマニュアルを配布したい。でも、大使館に彼らが顔を出すことはまずありえないので、どうしたらいいのかね。逆に彼らに教えてもらいたいくらいだよ。


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ビッグレスキュー2000[総括]
 
あえて「俗論」を駁す!』より
 新聞報道や反対意見の論調をさんざん馬鹿にして話してます。でも、冒頭のこの数行を読んで災害も人ごとにしか思ってないように読めるのは間違いでしょうか。下からものを見る視点はない人だと思えますが。この人にとっては、何でも戦争ごっこにしてしまうネタなのでしょうか。
 後半の、マフィアを含めた外国人も救助するという言葉については、その実現を見守りたいと思います。

(2000年 株式会社文芸春秋:刊 『諸君!』11月号所収)