基地公害訴訟の昨今
新横田基地公害訴訟を通して

2002年12月20日学習会報告
中杉 喜代司(新横田訴訟弁護団)

判決ラッシュの2002年
 今年は基地公害訴訟にとって、判決ラッシュの年でした。3月6日に小松基地騒音訴訟の第三・四次訴訟の一審判決。4月12日に新横田基地公害訴訟の第一次訴訟の対アメリカ合衆国訴訟(以下「対米訴訟」という。)の最高裁判決。5月30日に同じく新横田の第一次から三次までの対日本国訴訟(以下「対国訴訟」という。)と、第二・三次訴訟の対米訴訟の一審判決が同時に出されました。8月29日に上瀬谷基地の土地返還訴訟の一審判決、これは対国訴訟の一審判決と対米訴訟の一審判決が同時に出ています。そして10月16日に厚木基地騒音訴訟の第三次訴訟に一審判決。これだけの判決が一年で続きました。小松、横田、厚木では、旧訴訟が最高裁まで、あるいは高裁までで終わったのですが、旧訴訟の判決が確定したあと、規模を拡大して新たに始めた新訴訟に関する一審判決が立てつづけに出たものです。そのうち横田についてだけ、対米訴訟をやっています。嘉手納基地騒音訴訟でも対米訴訟をやっていますが、これについては今年は判決が出ていません。また、厚木訴訟は、飛行の差し止めを請求せず、騒音被害の損害賠償だけを請求している訴訟です。

 これらの訴訟の判決時には、横田弁護団からすべて私が出席しています。そのため判決要旨等が手元にありますので、資料としてお届けしました。

 判決の内容を説明します。請求の内容は、夜間・早朝の飛行差し止め請求と、過去の損害賠償と、将来の損害賠償請求です。今までの旧訴訟では、過去の損害賠償についてはすべて勝利していますが、差し止めについてはすべて負けており、将来請求についてもすべて負けています。その構図自体はまったく新訴訟でも同じです。そして新訴訟では対米訴訟がありますが、これはすべて却下されたということです。結論的にはそういうことになります。

差止めで一歩前進

 夜間早朝飛行の差し止め請求については、横田の旧第一・二次訴訟最高裁判決とほとんど同じ内容での請求を棄却をしています。すなわち、条約上、米軍横田飛行場の管理運営の権限を制約し、その活動を制限することは被告(日本国)はできない、そもそも関係条約や国内法令に、米軍の権限を制限できる特段の定めはない。そうすると原告らの差し止め請求は、国が現実に飛んでいる米国に対して制限できないことを請求しているのだから、請求自体が失当で、棄却を免れないということです。
 ただ、新横田判決では、全く過去の判例を踏襲しただけでしたが、自衛隊の管理する自衛隊基地である小松基地訴訟では、自衛隊に対する差し止め請求が一歩前進しました。

 国の管理する飛行場に関する差し止め請求については、かつて大阪空港訴訟で、空港の管理をすること自体は権力作用ではないのだから、民事訴訟で審理できるという大阪高裁判決がありました。これに対し、大阪空港訴訟最高裁判決では、大阪空港で夜九時以降飛行機を飛ばせないということになると、同空港を管理している運輸大臣が航空会社に対して飛ぶなと言わなければならない。それは権力作用であるから、空港の管理自体は権力作用ではないけれども、その行使には権力作用を伴うから、不可分一体で民事訴訟ではだめだ、という判決があったわけです。

 旧厚木訴訟について最高裁判決はそれと同じことを言って、民事訴訟ではだめだと却下判決をしました。旧小松訴訟は最高裁まで行きませんでしたが、今度の小松訴訟の一審判決は、空港管理は権力作用ではないとして、旧厚木訴訟の最高裁判決の考え方を覆しています

 なぜそう言うかというと、大阪空港では国が航空会社に対して九時以降飛んでいいと許可したものを禁止しなければいけない、そういう権力作用を伴うわけです。これは国と航空会社という、法律的には別の主体の間の行為であるから、そこに権力関係が出てくる。

 しかし厚木基地でも小松基地でも、自衛隊の上司が部下に向かって飛ぶ、飛ばないを指示しているだけであって、要するに自衛隊の内部問題に過ぎず、権力作用は出て来ないはずです。それを旧厚木訴訟最高裁判決は、きわめて妙なことを言って、自衛隊機が飛ぶと住民がそれを受忍しなければいけない義務が生じると言っています。それが一種の権力作用なのだから、住民対自衛隊の権力作用と、空港の管理という非権力作用が不可分一体だから、民事訴訟では訴えることができないとした。
 それに対して、今度の小松訴訟第一審判決では、自衛隊がただうるさいだけだで、うるさい自衛隊と住民との関係は権力作用でも何でもないと言っています。ただ、差し止めの受忍限度を超える騒音がない、それほどにはうるさくない、ということで差し止め請求は認められませんでした。結論は変わりませんでしたが、理論的には従来の最高裁判決を覆し、一歩前進したと評価できます。

騒音減少の成果

 それででは、現実の飛行騒音には全く成果が見られないかというと、そうでもありません。横田基地では、平成5年をピークにして、騒音は少しずつ減る傾向にあります。平成12年になるとまた若干上向き加減になっているのですが、夜間の騒音回数も若干減っている状況になっています。

 いま横田で大問題になっているのは、国が昭和52年から53年にかけて騒音の線引きをして、コンター(WECPNL、うるささ指数)線を引いたのですけれども、それを平成10年でやり直し、騒音地域が狭くなったと主張しています。しかし、そのやり方が非常にいい加減だとして、今度の一審判決ではその国の主張は採用されませんでした。国としては、騒音が減ってきたので、これを機に被害地域を狭めて、損害補償を減らそうとしています。このように、差し止め判決は出ていないけれども、飛行回数が減っているという現実の成果が出ていると考えています。

 このほか、日米両政府間で、1994年の11月18日に、午後10時から午前6時までの間、緊急の場合以外は飛行も地上活動もしないとの合意が成立しました。旧横田の第三次の控訴審で和解協議をしている最中のことでした。午後10時から午前7時まで飛行を止めるよう努力しろという裁判所の和解案が出たのですが、それから10日後に日米合同委員会の合意が出たのです。翌年の沖縄の少女暴行事件で大運動になった時に、嘉手納基地でも同様の日米合同委員会合意が成立しています。

損害賠償の範囲

 損害賠償請求が認容された範囲については、当初旧横田訴訟だけが、いちばん外側の広い範囲に当たるコンター75W地域まで損害賠償が認められていたのですが、他の訴訟ではその内側の80Wの地域までしか認められていませんでした。旧嘉手納訴訟の高裁で、横田以外で初めて75W地域まで損害賠償が認められた。そして、今度の判決で、小松訴訟でも、厚木訴訟でも75W地域の損害賠償が認められました。
 賠償額も均一化されて、今までは旧横田第三次訴訟の控訴審判がいちばん高かったのですけれども、小松訴訟厚木訴訟もそれと同じレベルになった。高値で均一化してきた。また、今度の横田訴訟判決でも前とまったく同じ金額が認められ、全国の賠償額がほぼ統一されました。

危険への接近

 損害賠償請求について、いま最大の争点は何かというと、「危険への接近」の攻防です。「危険への接近」とは、うるさいことを知っていて、また知ることができたはずなのに、騒音地域へ移動していたのだから、騒音の損害賠償を求めても認めないという考え方です。それも二つに分けていまして、今回の横田の判決で「私法関係においては、自己責任の原則が妥当するから、危険に接近した者がその存在を認識しながらあえてそれによる被害を容認していたようなときは、事情の如何により加害者の免責を認める場合がないとはいえない(免責の法理)」。また、「加害者の免責までは認められなくても、危険に接近した者が危険の存在を認識し又は過失により認識していなかったような場合には、過失相殺の法理を類推して、その者に発生した損害の一部を負担させるべきである(減額の法理)」と判示しています。

 このように、全部免責して損害賠償がゼロだというのと、その一部を減額するというのに分けています。今まで「危険への接近」を全く認めなかったのは旧嘉手納訴訟判決でした。また旧厚木訴訟では、途中からNLP(夜間飛行訓練)を開始しましたので、その前の前に転居してきた人には「危険への接近」を認めないという判決が出ています。

 旧嘉手納訴訟の判決で「危険への接近」を認めなかったいちばんの理由としては、危険を避けるといっても沖縄本島の中部でどこへ行ったらいいのか、逃げようがない、というものでした。一審ではそれでも「危険への接近」の法理を適用しましたが、控訴審では沖縄の特殊事情からして「危険への接近」の適用はないとしたのです。旧訴訟では、それ以外の判決は、はすべて「危険への接近」のうち減額の法理の適用を認めています。
 今回の三つの判決では「危険への接近」の法理に対する判示がそれぞれ違っています。
小松訴訟一審判決では、免責の法理は認めず、減額の法理を認めましたが、その適用範囲をかなり絞って、一部の原告の賠償額を減額しただけでした。
 今回の厚木訴訟一審判決では、「原告らが入居する前に、騒音の実態について、正確に把握することは極めて困難であり、また、原告らがコンター内に転入した理由は、仕事や家庭の事情に基づくものであり、少なくとも被害を積極的に容認するような動機は認められない」として、免責の法理も減額の法理も適用されないと判示しています。また、騒音地域の中からいったん外に出てまた戻った人についても、事情があるから戻っているのだということで、減額の法理を適用することもできないとしています。特に減額の法理を適用しない理由の一つとして、判決が非常に強く言っているのは、国の努力が足りない、ということでした。

 私どもがさかんに主張したのは、一つは、「危険への接近」どころかたびたび賠償判決が出ているのに何もしないで居座っている方が悪い「危険の居座り」だということ。また、もう一つは、国が危険があること(騒音地域であること)を知らせる努力を何もしていないということです。外国の例を見ますと、ニュージーランドなどでは、騒音地帯には防音工事を施さない住宅は建てさせないという施策を取っています。わが国では、騒音地域であることを何も知らせずに住宅をどんどん建てさせて、あとで「うるさい」と言っても、騒音地域に近づいた方が悪いというのです。この点についても、今回の厚木判決は十分に指摘しています。
 新横田訴訟の判決がいちばん悪くて、免責の法理も減額の法理も認めて、現実に適用しています。しかも、その減額率が大きく、いったん騒音地域に入ったならば10%、さらに高いレベルの地域へ行ったら10%と、どんどん減額していています。

陳述書の未提出者の排除

 今回の横田訴訟判決で、陳述書の未提出者が負けてしまいました。1000名余りの原告が陳述書を提出していませんでしたが、被害の立証が足りないということで負けてしまったのです。水俣大気汚染の喘息などの他の公害事件では、それぞれの原告が自分の症状について被害を個別に立証しなければならないのですけれども、広範囲にほぼ均一に及ぼされる航空機騒音の場合には、その地域に住んでいる人の被害もかなりの部分共通であるから、被害者はそこに住んでいることだけを立証した原告でも認容されるのが通例でした。今回の横田判決が初めて、騒音については主観的側面が重要だという理由で、陳述書を出さない被告は被害の立証が十分でないとされたわけです。

 これは今回の厚木判決でも、わずかですが踏襲されています。横田訴訟では陳述書を全世帯中の8割くらい出しているのですけれども、2割の原告の陳述書は提出しませんでした。厚木訴訟では、提訴の時にほぼ全員にアンケートを取っています。その後に裁判所が陳述書を出せと言ったのに出さない人が何人かいるということです。ところが、アンケートも提出しなかった数人の原告たちは、損害賠償を棄却されてしまいました。また、アンケートしか出さず、陳述書を出さなかった原告は、30%減らされています。
 あとは、国の騒音対策の防音工事を1室施工すると10%減らすというのは3つの判決で共通ですが、2室について以上は小松判決では5%、横田判決では10%減額しています。
 今までは横田訴訟が各訴訟をリードしているという風があったのですが、今回は横田の判決がいちばん悪い。他の訴訟の足を引っ張っている懸念がある形になっています。

将来請求

 将来の損害賠償請求は、これは全部認められていません。将来、騒音状況がどうなるか分からないのが理由です。将来請求が認められるには損害が確かでないといけないのです。例えば、賃料の不払いをした場合、将来の賃料として現在の賃料と同額が認められています。しかし、騒音が不安定で被害がどうなるか分からないと判決は言っています。それに対して私どもは、同じコンターの騒音地域に住んでいる人の騒音被害には変化がなく、その騒音地域から外で出ない限り、その騒音被害は変わらないと主張しました。しかし、我々の主張は、今のところ一顧だにされていません。

対米請求

 これは、外国政府を被告にすることができるかという問題なのですが、これについては、日本の裁判はわが国の権力の発動ですから、外国をわが国の裁判権に服させることができるのか、という問題になります。外国が応じてくれば、つまり外国が自ら被告になると応訴してくれば別だが、それ以外は裁判権が及ばないというのが「絶対的主権免除主義」です。これは昭和3年の大審院決定というのがありまして、それがこれまでほぼ唯一と言ってもいい判例でした。

 新横田基地第一次訴訟の一審判決では、東京地裁八王子支部が絶対的主権免除主義を取りました。二審は、少し変わったことを言っています。最高裁判決に引用された部分で見ると、日米地位協定「一八条五項の規定は、上記相互協力及び安全保障条約に基づき我が国に駐留する合衆国軍隊の構成員の公務執行中の不法行為に基づく損害賠償請求訴訟について、合衆国に対して我が国の裁判権に服することを免除したものであり」、つまり地位協定で免除しているから米国は日本の裁権に服さなくてよいという判断をしました。同一八条五項は、米軍の不法行為による損害賠償は、米国に代わって日本国が代わりに賠償するという規定です。損害賠償は、米国に代わって日本国が代わりに払うのだから、日本国はこの規定によって米国に対する裁判権を放棄したというのです。この規定は、損害賠償に関する規定ですが、それを差し止め請求にも類推する、ということでした。

 ところが、損害賠償の規定を差し止めにも類推するのであれば、米軍機の飛行差し止め請求について国を被告にしてもよいことになり、国に対する差し止め請求を認めていない判例と矛盾してしまいます。そこで、今回の横田最高裁判決は、「制限的主権免除主義」、つまり裁権が全部の事件で外国政府に及ばないというわけではなく、基本的には外国政府にも裁権が及ぶのだという考え方を取っています。ただ、例外的に国家の権力の発動たる行為については裁判権は及ばない、という原則と例外を逆転したような形での制限的主権免除主義を初めて採用しました。

 その上で、「本件差止請求及び損害賠償請求の対象である合衆国軍隊の航空機の横田基地における夜間離発着は、我が国に駐留する合衆国軍隊の公的活動そのものであり、その活動の目的ないし行為の性質上、主権的行為であることは明らかであって、国際監修法上、民事裁判権が免除されるものであることに疑問の余地はない」、すなわち例外の主権的行為だから、米国に対して裁判権が及ばないと判示しました。
 主権的行為を除外しないと、例えば先のいわゆる「テロ戦争」でも、アフガンの人たちが米国に対して損害賠償請求ができることになってしまうということで、主権的行為については免除されるという。これが、航空機の飛行についてまで免除されるのか、しかもこれまでの判決で受忍限度を超える違法な騒音と認定されているのに、このような不法行為についても米国には裁判権が及ばないのか、大いに問題があります。

上瀬谷基地訴訟

 ここのところで非常に面白いのが、上瀬谷訴訟判決です。
 この判決は、「いわゆる絶対免除主義の原則」に代わって、「今日では、国家活動をその機能により本来の『主権的行為』と私法的商業的な性質を持つ『業務管理的行為』に二分市、前者についてだけ裁判権の免除を認めようとする立場(いわゆる制限免除主義)が有力となっている」と判示したうえで、「被告は、我が国の安全保障に寄与するため、我が国から……『施設及び区域』として本件各土地を含む上瀬谷基地の提供を受け、これに米軍を駐留させているのであり、同基地によける米軍の駐留及び活動が、その目的及び行為の性質上、主権的行為であることに疑問の余地はない」として、わが国の裁判権が米国に及ぶことを否定しました。

 しかし上瀬谷訴訟は、土地の返還訴訟です。新横田訴訟の第一審判決が採用した絶対主権免除主義に立つ昭和三年の大審院決定でも、不動産の訴訟を除いては絶対に及ばないと書いてある。なぜ不動産訴訟を除外するのかというと、領土主権が国家主権の最も基本的なものであるからです。土地についてまで何も言えないとは、冗談ではないと、戦前でも言っているわけです。上瀬谷訴訟ではその領土主権まで放棄してしまっているということになります。
 判決文の少し前の部分では、「本件請求は、所有権に基づく土地の明渡訴訟であり、明渡しの対象となる本件各土地は我が国の領土内にあるから、一見すると、絶対免除主義の下においても例外として裁判権免除が否認される場合に該当するようにも見える」というのは、昭和三年の決定のことです。それにもかかわらず、主権行為をいわばジョーカーのようにオールマイティに使って、米軍の行為には何も言えない、米国を被告には絶対にさせないという判決をしているわけです。

 上瀬谷は通信基地ということになっているのですが、今はほとんど利用していません。一部を金網で囲って利用しているかのごとき状況がありますが、他はすべて遊休化して何も使っていない。その中に民有地があって、その賃貸借契約が平成9年に更新されたというのです。しかし、賃貸人である原告は、更新の印を押していない。国は、原告の妻が押したというのですが、妻は押した覚えがないと言っている。そこで、裁判所が早々に印影の鑑定をしたところ、「偽造」と出てしまった。ところが、裁判所は、被告国に対し私的な鑑定を促し、その結果国が2つの鑑定を提出したのです。そして2対1で、判決は裁判所の鑑定を覆した。それで更新契約が有効に成立したという判決を出しました。原告は一人だけですけれども、直ちに控訴しています。
 なお、今年提訴しました普天間基地では、対米訴訟ではなく、基地司令官を被告として起こしています。

基地騒音訴訟の課題

 横田基地周辺だけでも20万人を超える住民が騒音地域に居住し、騒音被害を受けています。6000近い大原告団といっても、損害賠償を受けることのできる住民はわずかに過ぎません。また、夜間早朝の飛行差し止めは認められず、昼間の飛行も含めて騒音被害が日々再生産されているのです。それにもかかわらず、裁判所は、過去の損害賠償しか認めず、せっかく損害賠償請求が認められた原告でも、再び裁判を起こさないと、判決後の被害の救済は認められていません。
 このように、基地騒音訴訟には、極めて困難な課題が山積しています。これらの問題を一挙に解決する「米軍基地の撤去」の見通しも立っていません。

今後の展望

 夜間早朝飛行の差止めについては、嘉手納訴訟小松訴訟において住民の健康被害調査が実施され、身体的被害の発生を立証することで差止め請求を認めさせようという努力が行われていますが、裁判所は、身体的被害をまともに認めようとはしません。そこで、嘉手納訴訟では、沖縄県の被告調査で騒音性難聴と認められた住民にしぼって、身体的被害を具体的に立証し、差止め請求を認めさせようという取組をしていると聞いています。

 また、新訴訟では、小松、横田、厚木、嘉手納の各訴訟において、数千名規模の大原告団が組織され、今回の3判決でも大多数の原告の損害賠償が認められました。さらに、今年沖縄の普天間基地で新たな基地騒音訴訟が提起されました。今後もっと訴訟団を拡大できれば、単に損害賠償による被害救済だけでなく、夜間早朝の飛行差止め等、騒音の減少に向けても効果が期待されます。ただ、現在の訴訟においては、訴訟団や弁護団が大きな労力を費やしているだけに、もっとシンプルに、かつ、大きな効果を生み出す訴訟の提起・進行を考え出すことが必要です。

 さらに、将来の損害賠償請求を認めさせることが非常に重要です。これによって、同じ原告が何度も訴訟を繰り返す必要がなくなり、訴訟団の負担を大幅に軽減するとともに、訴訟団を拡大させることもできます。仮に今よりも賠償額が減ったとしても、将来の請求をシンプルに安定的なものに替える工夫をすることによって、何とか将来請求を認めさせたいと思っています。

 最後に、基地周辺には、まとまった地域に同じような騒音被害を受けている人が非常に多数居住しています。これらの原告以外の住民にも運動に参加してもらう方法を考え、さらに地元自治体とも連携し、被害救済の制度化まで視野に入れる必要があります。
 まずは、全国の訴訟団や弁護団が基地騒音訴訟の展望について、忌憚のない意見を交換させて話し合うことから始めなければなりません。
ページトップへ


トップページへ