2002年6月13日 神奈川県藤沢市議会 総務常任委員会で有事法制3法案に対する5件の陳情が審議されました。
個人としての傍聴記録を公開します。正確を期しましたが、速記録ではないので、各発言は、言葉遣い・ニュアンス・また、法律用語などに間違いがある可能性もあります。
また、とくに最後の2・3・6・11号議案についての討議発言は、何人かの方の発言が長いため、一部記録しきれずに端折りました。ご了承下さい。
市側からの発言は、3人ほどが答えていられましたが一括して「行政」と表記しました。
今後、当事者又は傍聴者からの指摘により、訂正する可能性もあります。(6/16一部訂正)
藤沢市議会02.06.13(敬称略)
藤沢市議会の総務常任委員会で有事法制3法案反対の意見書を求める陳情3件と慎重審議を求める意見書を求める陳情1件についての審議が行われました。
総務常任委員会
委員長:水島正夫(新政会)
副委員長:木村栄子(21社・民CLUB)
委員:矢島豊海(新政会)
海老根靖典(新政会)
井手拓也(新政会)
渡辺光雄(新政会)
増井秀夫(公明党)
高橋八一(21社・民CLUB)
原田建(市政市民派議員会議)
高橋豊(共産党)
傍聴者:20人くらい
◆議題の6番
陳情14第2号 有事法制関連3法案に対する陳情
陳情者団体:神奈川県平和運動センター
陳情14第3号 有事法制関連3法案に反対する意見書提出についての陳情
陳情者団体:神奈川県労働組合共闘会議
陳情14第6号 有事法制に反対する意見書の採択を求めることについての陳情
陳情者団体:神奈川土建一般労働組合
陳情14第8号 国における有事法制関連3法案の慎重審議を求める意見書提出についての陳情
陳情者団体:平和都市をつくる会・ふじさわ
有事法制に反対するふじさわ市民の会
陳情14第11号 有事法制の立法化に反対する陳情
陳情者団体:新日本婦人の会藤沢支部
市からの概要説明
有事法制について:有事の際、国民を守るためのスキームを構築するため、これまでの法制では適切な対処がむずかしい領域について超法規的処置の危険性を回避するために一定の法整備の必要が論議の対象になっているとの認識。
2年以内を目標に整備される国民保護の個別法制定過程の動向を見守り、注視していきたい。井手拓也(新政会)
- 国民を守るための、戦後初めての重要な法整備だと思う。国土防衛の為の法律は、世界各国で整備されていて、当然ことである。日本だけそういうときに右往左往していていいのか。
- 「武力対応が憲法違反である、また、基本的人権がないがしろにされるから違憲」、という意見があるが、それはあり得ないことである。
- 有事という定義が曖昧である。政府見解を確認したい。
- 周辺事態法との関係で、アメリカに協力する法律なのか、線引きを確認したい。政府見解はいかがか。
- 理事者が責任を持って答弁すべき問題であると考える。行政担当者の答弁は、市長の答弁と考えて良いか。
行政
- 各国の有事法整備については、アメリカ:大統領権限で宣言できる戦争宣言法、非常事態法など
ドイツ:議会が各種統制を行う フランス:国会が統制を行うetc.
しかし、外国の手続きについては不明- 違憲かどうか・・・国会審議で出ている説明のみ。
平和について・・・憲法第9条の堅持のおかげでこれまでの平和が保たれてきたというのが政府見解。しかし、自衛権は否定されていないというのも見解。
集団的自衛権は認められていない。専守防衛に徹するということ。- 「予測される」とは:あえていえば、「おそれ」には至っていないが、相手国が部隊の充足や予備役の招集、我が国を攻撃するための基地の新設などが認められるとき
「恐れ」:意図を明確にして多数の戦艦・戦闘機を集結させているとき- 周辺事態・・・武力攻撃を想定していない。いってみれば近所の火事。
武力攻撃事態法に想定される「武力攻撃の恐れ」というのは、火が我が家に移りそうな事態だと。
その他については、今後2年間の間に整備されるのを待つ。- 12月の全国知事会でも、個別法をあげて検討すべきだという意見が出された。本日の答弁は、市長見解として受け取ってももらっていい。
井手
- 地方自治体の国からの委託には法定受託義務と自治義務とあるが、自治義務にまで及ぶ内容であればそれを教えて欲しい。
- 防衛出動した場合、自治体としてどのような影響が出るのか。
- 自治体の責務や責任について、国から説明されていたか。
- 国民の保護に関して、国に対して意見を言っていく必要があると思うがどうか。
- 現状では、国の発動権に制限がある。この法案で、どう変わると予想されるのか。
行政
- 地方自治法に、国の独立や平和が乱されることについて規定した内容はない。段階を踏んで内容をはっきりさせて制定するので、地方自治法の本旨に反しないというのが、国会答弁。
- 墓地・埋葬・医療・漁業・漁港・建築・・・公園・海岸・河川・都市緑地保全などの法律が影響を受ける。
- 全国知事会でも、説明はない。国民保護法制の骨格について、5/17に都道府県担当者を集めて説明がされた。
- 個別法の制定される2年後までに意見を言っていきたい。
井手
地方自治との関連で、わかりにくいのだが、説明される予定はあるのか。
行政
国会でも知事会でも説明をやっていくといっている。
井手
地方自治法の根幹を揺るがすことはないか。
行政
攻撃された段階で、国と地方が一帯となってやることになる。総合調整した内容を地方自治体に指示してくるはずで、その場合異議も出せるし。
答になっていないことは承知しているが、政府見解を繰り返すしかできない。高橋八一(21社・民CLUB)
- 我が国は、憲法の規定により武力攻撃しないことになっているので、地方自治法に規定がないのは当然である。
- 充分説明がされていないということは、けしからんことである。
- 国に対して、いうべき事は言っていくべきである。
- いかなる説明があったのか、これからあるのか。
- 藤沢市として、国に対してものを言っていくつもりがあるのか。
行政
- 説明はない。県や、全国知事会からの説明や新聞報道で内容を知った状況。
- 国に対しては一定の時期にものを言っていく。今はまだ、総則的な内容、理念的な内容なので。
高橋豊(共産党)
神奈川市民キャラバンが質問状を出した県内38自治体のうち、30自治体から回答があった。
藤沢市は横浜市と並んで二つだけ、「国に協力していく」と答えている。
藤沢市の回答「違憲の懸念もあるが、協力していく」と。これは、地方自治を投げ捨てたものではないのか。行政
先ほどの回答でご理解を。
高橋豊
- 物資の保管命令違反に関する答弁の中で、反戦の意志によって命令に違反した場合もかかわらずその行為で判断して処罰すると、思想信条の沈黙の自由の侵害がいわれているが。
- 自衛隊法改正の中で武力攻撃が行われた地域では損失補償の対象にされないという。黙って協力せよというのか。
行政
- 防衛庁長官の答弁では、武力攻撃が起こり、被害が発生しているときは協力してもらうのが基本とのこと。
- 思想信条の自由については、いろいろな立ち入り検査を拒否したらやはり罰せられるということがある。
内心に関わりなく、事実についての罰則である。災害基本法にも、保管命令などの規定はある。- 憲法第29条3項(私有財産を公共の用に資することができるという規定):損失補償については、これの適用を考えているとのこと。あとは、個別法で対応していく。
高橋豊
アメリカの戦争は、ずっと続いている。
政府見解の棒読みでいいのか。
市は、なぜ国にものを言っていかないのか。これは、憲法違反ではないのか行政
- 憲法第9条については、自衛権は否定していないという見解である。
- 各自治体から、慎重審議・説明要望を出している。県は、基地を抱えているし、基地に隣接した市としても、充分な説明を求めていきたい。県を通じて慎重審議を求めていきたい。
原田建(市政市民派議員会議)
- 神奈川市民キャラバンへ、5/16付けで、藤沢市は、「住民の罰則規定や私権の制限を含む規定について」の質問に、「緊急時においては、すべてにわたり否定されるべきものではなく、必要最小限の制限は必要と考えます。」と回答しているが、今の見解はこれと違っているのか。
- 国の見解を、市としてどう受け止めているのか答えてほしい。
- 法案では「意見を述べられる」となっているが、市は「異議を申し立てられる」との見解。
国と、意見の対立があった場合どうなると思うのか。
また、市の職員への罰則も想定しているのか。- 国や国民を守るということは、どの法案の何条に書いてあるのか。
- 「有事」とは何か。市当局の見解がなく、国の見解をなぞっているだけであること自体が「有事」であると思うが、市としての有事に対する見解を具体的に述べてほしい。その際、優先順位はどうか。
- 災害救助法は、阪神大震災で、どう役だって、何が課題だったと考えているのか。
- ドイツでは、海外派兵した結果、国内でどのような議論が起こっているか、把握しているのか。
行政
- この答弁は、市長の立場で答えているものと受け取ってほしい。
- 有事の際、市としての優先順位は、通常とは異質なものと捉えている。
- 自治権侵害かどうか:地方自治体の自治は、国の統治権の元に行っているものであるから、逸脱とは考えない。
地方自治法は、緊急事態を予測していない。平時の自治権と、戦時下は異なっている。同一のものと考えるのはいかがなものか。- 武力攻撃事態法案の第一条に、国民を守るための法律であると書かれている。
- 「意見」とは、具申すれば可能な限り尊重されるものと認識している。
- 5/16の回答は、対処措置の中身のことで、国民を守る措置もそちら集結させるということなので、市として、個別に対応するという意味で言った。今も見解は変わっていない。
- 国と対立したら:総合的調整段階では、対立はないものと考える。別の法律の定めるところによって、地方公共団体に個別指示が来るものと考える。個別に対応する。
- ドイツ国内の議論については把握していない。
- 災害救助法は、市町村を越えて県知事が直接施行したのが問題・・・?
原田
- “平時ではないときの法律”という認識でいいか。自治権侵害も是とするのか。
- “有事”は“戦時”との認識だが、ほかの“有事”についてはどうか。原子力発電への攻撃など、万が一“有事”があるなら最も予想される事態について考えられていないのは問題ではないのか。
- 答えていただいたのは、法案の理念の部分。それが具体的にどの条文で表現されているのか。
- 国に対し、自治体の意見を尊重するよう確認するつもりはないか。
- 自治体としては、国の指示を強制と認識しているのか。
- 職員に対し、ペナルティーが起こりうることについての認識は?
- ドイツでは、海外派遣された人の人権を守るための議論が起こっている。
- 災害救助法は、阪神大震災では役に立たなかった。不備であることが露呈されたにもかかわらず、また、整備を約束されたにもかかわらず、いまだに整備されていない。
この法案についても、2年後までに国民を守るための法整備と謳ってあるが、期待できない。行政
- 市民の権利を侵すことは必要最小限にしなければいけない。そのための法整備だと認識している。市町村の考え方を充分反映した法整備にしてほしいと、県や他の市町村と共に、国に対して言っていく。
- 法の第一条で、理念として国民を守るとしているので、そのための法律だと認識している。
- 「意見は可能な限り尊重する」と言われているので、そうであると認識している。
- 強制であるか:個別法制を詰めていく段階で、自治体の意見を充分聞くとしている。今後も、法整備の動向を注視していく。
原田
- 「これからのことはわからないが、白紙委任する」というように聞こえるが、そう受け取っていいのか。「イエス」か「ノー」で答えてほしい。
- 市町村合併で話題になっている“湘南市”に関わる論議の際、藤沢市長は「自立した地方自治体」という言い方をされているが、これとの整合性をどう考えるか。
行政
- 全国知事会でも、具体的なことは不明確であると意見が出ていると報道されている。行政としては、今後を注視し、意見を言っていきたい。
- 「自立した地方自治体」として、より慎重な審議を求め、意見を言っていきたい。
矢島豊海(新政会)
- 政府首脳というか、官房長官というか、彼の、「核兵器保持も可能」との発言は残念である。非核三原則は思想信条に関わらず、堅持すべきものと考えるが、このことへの見解を述べてほしい。
- また、新たな法整備は現行の防衛指針から逸脱してはならないものと考えるが、いかがか。
行政
- 憲法第9条は、自衛権を放棄してはいないというのが政府見解。
- 核については、恒久的に持てないと認識している。
非核三原則・核兵器不拡散条約・原子力基本法など、国内法・国際条約から言ってもそうである。- 日本の自衛力については、専守防衛・文民統制・非核三原則のもと、その範囲でのことであると認識している。
矢島
有事法制について、いたずらな不安を招かないよう、憲法の5原則についての見解を述べてほしい。
その認識がはっきりしていないと、このように陳情されている市民の方々の不安が起こるのだと思う。行政
主権在民・戦争の放棄・基本的人権・議会制民主主義・地方自治、これが5原則であると認識している。
訂正:主権在民・戦争の放棄・基本的人権・良心思想信条の自由・地方自治が、5原則でした。木村栄子(21社・民CLUB)
万が一有事の際、食糧の8割が輸入という現状で安全は守れるのか、その方が大事ではないか。
これは、国に言うべきことかも知れないが。行政
何らかの方法でやっていくのではないかなと思っている。
木村
自治体として、具体的に市民をどう守って行くのか。
国の指示と矛盾する場合、どうするのか。行政
現在の法案は、あくまで総則的なものであり、国民保護の部分はこれからであると考えている。
木村
1999年のジュネーブ条約追加議定書第59条に、国際的に認められた“無防備地域”についての規定があるが、これを順守する気持があるか
行政
法案第21条2項でも触れられていて川口外相も触れているが、負傷者や一般人への保護を含むジュネーブ条約を締結する方向であるということである。
木村
実は、戦国時代にこの江ノ島で、“無防備地域”が存在した。戦国時代にあっても無防備地域は保障され、戦火を免れたということだ。こういうことを、国に対して逆提案していくことがあってもいいのではないか
行政
市民の生命財産を守る方向で努力していく。
木村
実は、今の話は、私が15年前に市議会で答弁していただいたことを繰り返したことです。
委員外議員発言〔異議なしにより許可〕
高松みどり(共産党)
この法制は、アメリカの戦争に加担するためのもの。自衛艦が、今、インド洋にでている。周辺事態法の中では、これは攻撃を受ければ逃げ帰ってくることになっているが、有事法制のなかでは反撃することになる。これは、戦争をしかけるためのものである。
2年かけて制定するという個別法は、今、明らかにできないだけで既にできているはず。防衛庁はずっとその研究をやってきたのだから。注視するというような暢気なことでいいのか。行政
戦後、平和が保てたのは憲法第9条があったればこそ。しかし、自衛権は放棄していない、専守防衛の方針であるというのが国の見解である。
この法案が、国民のための法律であることを願ってやまない。
動議:8号議案(慎重審議を求める意見書提出についての陳情)について
海老根靖典(新政会)
動議を提案する。
井手委員の詳細な検討の結果を見ても、この法案には不明な点が多々あり、8号議案(慎重審議を求める意見書提出についての陳情)について、保留・継続審議の動議を提案する。高橋(八)
今、国会で議論が集中しているときであり、今結論を出さないと意味がない。
海老根
国会の熱心な審議がされているところであり、内容も未だ不明確なので、議論を見守りたい。
原田
国会の議論を見守りたいという趣旨なら、地方自治体から発言すべきである。一刻を争う時に出してこそ、意味がある。
採決:賛成5人
矢島豊海(新政会)
海老根靖典(新政会)
井手拓也(新政会)
渡辺光雄(新政会)
増井秀夫(公明党)8号議案について採決保留・継続審議に決定
2・3・6・11号議案(反対の意見書を提出することについての陳情)について
不了承の討議
増井秀夫(公明党)
有事について、法整備しないと、独立国家としての権利を放棄したことになる。地方自治体の権利を守れるように注視する。
海老根靖典
この国の自立とは何か、自治体も責務を負うべきと考える。地方自治法と、法案の整合させていく。憲法のは抵触しないと考える。
了承の討議
高橋豊
国民の権利と生命・財産を守るべき多数の法律の著しく制限するこの法案は憲法違反であり、認められない。
原田
有事とは何か。原発一つ考慮されていないところから、この法案の目的が別のところにあるといわざるを得ない。地方分権にも反する法案である。
採決:賛成4人
木村栄子(21社・民CLUB)
高橋八一(21社・民CLUB)
原田建(市政市民派議員会議)
高橋豊(共産党)結果:趣旨不了承