2008年3月16日、『自由の風を今後私たちはどうするか』というテーマで意見交換会が開催されました。ゲストにジャーナリストの池添徳明氏を迎え、「学校に自由の風を!」ネットワークの発足以来のメンバー13人が、ネットワークの活動全般について建設的な議論をかわしました。
(世田谷区 北沢南区民集会所にて)

以下に主な話題と意見を要約します。

― ゲスト提言 −
◆「11.15東京大噴火集会」について

この集会は市民がやるという趣旨だったが、実際に動いたのは先生たちだった。先生たちはそれぞれ裁判を抱えていて、各グループで集会を持っている。顔ぶれはいつも同じ、内容も似たりよったり。仲間うちの集会でなく、世論に呼びかけることが必要だ。その提案のひとつが「東京大噴火集会」だった。阿曽山大噴火さんが話すことで一般の人に興味を持ってもらいたいと考えた。特に若い人に関心をもってもらわなければ運動は広がらない。運動は先生たちだけのものではない。学校の外にいる市民が石原を選んでいる。
11.15集会のお笑いトークは盛り上がったが、弁護士との対話や裁判に関するクイズは宣伝臭が強かった。宣伝のコツは「さりげなく伝える」ことだ。これからの集会のあり方を考えてほしい。

◆先生たちの裁判の傍聴に若い人が来ていない。

将来の有権者である教え子で卒業生なら裁判の傍聴に誘っても問題ないはず。若い人に日本の司法のあり方も知ってほしい。先生たちは教え子が財産だ。先生自身が教え子にどう伝えていくかが課題。伝えたい側と受け手との間にギャップがある。それをわからせるのは保護者の力か。

◆大学の授業で必ず1回は教育基本法の話と日の丸・君が代の処分の話をする。

生徒の感想を読むと7割が「知らなかった。強制はおかしい。」と書いてくる。事実をきちんと知らされていない。事実を伝えればわかってくれる。強制には圧倒的に反対している。

◆神奈川の実態について。

神奈川県教育委員会の不起立者の人数把握、氏名収集に対し、県条例の審査会、審議会が2度にわたり条例違反の答申を出したにもかかわらず、収集をやめない。県議会の予算委員会で県教委がイケシャアシャアと報告している。
プリンスホテルのキャンセル事件の司法判断無視と共通する。そのような憲法違反を追及していくのは市民の力だ。

― 集会について −

  • N:東京大噴火はいい経験だった。卒業生にハガキを出したり、大学でビラをまいたのははじめての経験で、こういう集会のやりかたもあるとわかった。
    I:ビラは1000枚まいても実際に来るのは数人〜10数人だ。効果あるチラシを作るにはお金をかけることも必要。
  • Y:若い人に受けるには企画段階から若い人自身が入らないと原動力にならない。今回はイベントが重なった。 前もってわかれば一緒に組んで企画を打てる。
  • S:10.23通達直後は高校生たちにも問題意識があった。その後先生ちは教室で生徒に伝えられなくなっている。
  • N:裁判で高校生が証言した。そういう生徒も育っている。
  • M:もし恩師から自分の子に案内の手紙が来たらどうか。ちょっとイデオロギーがかったものには極度に警戒感がある。もう一歩踏み込んだ議論をせず、意見を言わない。自分たちの学生時代の論争は偏ってはいたが、今は議論すらスッポリ抜けている。今の世代はチラシ1枚では動かない。言い続けることが必要だ。
  • C:知らない人に1000枚チラシをまくより知っている人10人に直接声かけする方がよい。内部の団結集会に準備時間をかけるより教え子や知り合いにすすめてほしい。
  • D:若い人たちはネットと口コミ。チラシは工夫すべきだが、それで来るわけではない。

― 今年の卒業式アクション −

  • A:今年の卒業式では練馬を中心に8校でチラシまきを行った。生徒が気軽に受け取る高校もあったが、学力レベルの高い学校はなかなか受け取りにくい。学校側も硬直姿勢。どこでも管理職は「生徒に配らないでくれ」。当方が「これは生徒に渡したい。」というと、管理職が「強制・強要はしないでほしい」(笑)。「私たちはあなたたちと違って強制はしない。そちらこそ国旗・国歌の強制をしないで。」と言った。
    またある保護者が「私は都立高校の卒業生。都立は自由な校風が特色。昔の良き都立高校はどうなったのか?」と聞くと、
    管理職が「自由がほしかったら私立へ行け。」一同唖然とした。
    先生たちの中には保護者や市民にぜひやってほしいと思っている人が少なくないはず。練馬で活動しているとすごく楽しく、横のつながりがある。内輪で閉じこもりがちな旧態依然のやり方ではだめ。

― 市民運動として ―

  • I:僕の世代は今の若い人よりは議論をしていた。今の若者は半径10メートル以内しか関心がない。仲間うちの話題についてはすごい関心がある。そこから踏み出させるのはどうしたらいいか?
  • Y:社会全体がそうだから難しい。
  • K:「自由の風」で何ができて何ができないか。再検討の時期だ。
        教科書採択と選挙が2年おきにやってくる。ムーブメントがあると垣根をこえてつながりやすい。都知事選の時は「自由の風」は情報交換の広場だった。最近市民運動は元気がなくなってきた。団塊の世代が元気なくなると市民運動は元気なくなるようだ。
    30代、40代と一緒にやりたいが、その世代は一番忙しい。世代的にそこで切れる。むしろ20代と組みやすい。
    ある人は「おじさん、おばさんで元気でやってくれればいい。」と言う。留学生は日本の集会で50代、60代のエネルギーにびっくりする。

―「自由の風」の意義と今後のありかた ―

  • Y:「自由の風」も分散化ないし発展しはじめ、ひとつの曲がり角に来ている。今後どのような形でこの会を持続していくか。

  • K:「自由の風」の存在意義は次の二つ。
     @異なる労組間をつないだこと
     A教員と保護者と市民をつないだこと

  • I:「自由の風」の存在意義は大きい。おじさんおばさんが中心になるのはやむを得ないが、若い人をとりこんでいくためにも「自由の風」がイデオロギーぽくないことが重要。
    S:根津さんによる模擬授業と池田香代子さん対談「虹のたね」はよかった。従来の集会と違い、主催者が子育て真っ最中の若いお母さんたちだった。内容も生活に密着したものだ。

  • B:世界最大手の人材コンサルティング会社の内部資料を見る機会があった。そこには「これからは中国でなくインド。インドはクリティカル・シンキング(critical thinking)と議論(discussion)に強い人材を育てている。中国は儒教的。」日本はもっと逆行している。日の丸・君が代を疑うような人が世界に通用するので、日の丸・君が代推進者は世界の非常識になっている。(笑)

  • I:日の丸・君が代の強制の話を授業で200人に話した。うち3人が家でそのことを親と話した。考えるきっかけになればよい。
    N:大学の先生に授業でそういうテーマを話してほしい。若い人にはいろいろな可能性があり、ちょっとしたきっかけで理解する。
    しかし親が運動に熱心だと子どもはひややか。わが家でも娘は「こういう人は一家に一人いればいいのよ」と言い放った。その娘もフランスへ留学し、海外生活をする中で「自分たちの権利を主張することが大切だとわかった」と言ってきた。

  • D:都立高校の現役保護者の立場で考えると、保護者同士の情報交換の場として貴重だ。学校のリアルな問題を個人として受け留めるだけでなく、都立学校共通の問題としてとらえることができる。一校でおかしいと思うことは他校でも起こっている。学校や教育をめぐる状況に当事者として関わる中でしっかり教育を監視する責任と義務があると思う。それには保護者同士の広域的な連携が不可欠だ。
     また子どもが卒業すれば、市民として学校や社会の中で民主主義がおびやかされる事態を見過ごさず、情報を広く伝えたり支援したりする役割があると思う。いま「自由の風」はだんだん元保護者が多くなっているので、後者の役回りになっているのではないか。先日も現役の保護者と元保護者とで、都教委へ要請に行ってきた。10.23通達が撤回されるまで、あきらめずに何年でも都教委へ申し入れに行くつもりだ。

  • K:「自由の風」は特定の政治色に偏らず、広域性と即時性ある活動が特長だ。例えば町田の声量問題など、何かあればワッと集まる。個別的、具体的なテーマの運動は他に任せてよい。
    M:「自由の風」活動の当初よりメディアとのつながりを意識的に追求してきた。縛らないゆるやかな人と人とのつながりを大事にしてきた。「学校に自由の風を!」は当を得たネーミングで、今、学校には不自由さがあって国際的にも問題だ。

  • Y:「自由の風」の活動は、日常的にはメール交換やメールニュースを主にし、何かあった時に集まるという形か。しかしマスコミの対応などもあるので窓口はあった方がいい。

  • M:今まで運営委員会がその役割だった。

  • Y:当初はあえて代表を決めずにやることが、主体的に動く広がりを作っていた。けれど、つながりが広がり、今はみんなが地域の各市民活動に向かっている。それはそれでひとつの発展だろうと思う。しかし、自由の風で何かをやろうとすると代表(窓口)を設ける必要を感じる。

  • N:定期的に会議を持つのは大事。年単位で役を持ち回りにするとか役割の分担などを工夫する。

  • M:負担にならず、各種グループがつながっていくかたちをさぐりたい。

次回は6月1日(日)を予定

                        以上

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