東京都教育委員会の
「国旗掲揚・国歌斉唱」の通達等についての
会長声明

2005年(平成17年)2月28日
第二東京弁護士会 会長 山田勝利
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 東京都教育委員会は、2003年(平成15)10月23日付で、都立学校の入学式・卒業式などにおける国旗掲揚・国歌斉唱の実施について、教職員は国旗に向かって起立し、国歌を斉唱すべきこと、国旗掲揚・国歌斉唱の実施に当たり、校長の職務命令に従わない教職員は服務上の責任を問われることを周知すべきことを通達した。また、東京都教育長は、2004年(平成16)3月16日、都議会において、卒業式で多数の子どもが国歌を歌わない、起立しないことは、教師の指導力不足であるか学習指導要領に反する恣意的な指導があったと考えざるを得ないので、処分の対象になる旨答弁した。さらに、同年6月8日には国旗国歌に関し、学習指導要領や通達に基づいて児童生徒を指導することを校長の職務命令として教員に出す方針を示した。
 これら通達等に基づき、東京都教育庁は、同年5月25日までに、卒業式、入学式において国歌斉唱時に国旗に向かって起立しなかったことを理由として、合計248名の教職員に対し職務命令違反による懲戒処分等を行い、また、生徒に不適切な指導をしたとして、67名の教職員に厳重注意等を行った旨発表した。

 今日においても、日章旗については過去の日本の軍国主義を想起させるものとの主張や、君が代については国民主権と矛盾する天皇制を賛美するものとの解釈などが国民の間に存在している。
 個人によってはその解釈の大きく分かれる国旗・国歌につき、教職員に対し、起立・斉唱を処分等を背景に教育委員会が求めることは、公権力による強制であり、教職員の思想・良心の自由を侵害する疑いが強く存するものである。また、児童生徒への指導に関して、児童生徒の不起立・不斉唱について教職員に厳重注意等の処分を行うことは、公権力たる教育委員会が、教職員をして児童生徒への起立・斉唱を間接的に強制することにつながり、子供の思想・良心の自由な形成を侵害する疑いが極めて強いものである。

 思想・良心の自由は、個人の内面的精神活動のうち最も根元的な自由であり、憲法19条は、その根元的自由を外部からの干渉介入から守るために絶対的に保障している。個人の内面的精神活動の自由についての規律は、あくまでも個人の自律に委ねるものである。
 1994年(平成6年)の政府統一見解では、「学校における『国旗・国歌』の指導は内心にわたって強制するものではない」とされ、1999年(平成11年)7月21日の衆議院内閣委員会文教委員会連合審査会においても、国旗・国歌の指導について「何らかの不利益を被るようなことが学校内で行われたり,あるいは児童生徒に心理的な強制力が働くような方法でその後の指導等が行われるということはあってはなら」ず、「学習指導要領は直接、児童生徒に対して拘束力を持つものではない」と確認されている。

 よって、当会は、東京都教育委員会に対し、2003年(平成15年)10月23日付「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」を廃止すること、そして、都立学校の卒業式・入学式において、教職員・児童生徒に国旗への起立・国歌斉唱を強制しないこと、さらに、教職員・児童生徒の不起立・不斉唱を理由として教職員に不利益処分を科さないことを強く求めるものである。


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