都教委に対して公開討論を求める記者会見の報告
2008.08.04


要請書

東京都教育委員会 殿

貴委員会に対し、私との公開討論に応じるように要求いたします。
テーマは、「職員会議において職員の意向を確認する挙手・採決の禁止」の撤回についてです。以下理由を述べます。
 私の信条は基本的人権の尊重と平和主義です。中でも言論の自由は、民主的な国家・社会の構築・運営のために絶対不可欠な基本的人権です。過去の歴史を見ても言論の自由のない組織、社会、国家はことごとく崩壊しています。(たとえば、第二次世界大戦前の日本、ソビエト連邦等) 私は、言論の自由は、社会の発展、活性化に絶対に必要で、民主主義の基本だと思っています。特に将来の日本を担う子ども達に民主主義を教えなければならない教育現場において、言論の自由の尊重は一層重要だと思います。
しかし貴委員会は、平成18年(2006年)4月、都立公立校の職員会議において職員の意向を確認する挙手・採決の禁止の通知を出されました。この通知によって、教員には何を言っても意見が反映されないのなら言っても意味がないという空気が広がり、自由な討論がなされず、学校の活性化にもつながっていません。
 生徒に民主主義を教えなければならない学校だからこそ、生徒を教える教員組織は民主的に運営されなければならないと思います。教員に言論の自由がなくなることは、生徒の言論の自由もなくなっていく可能性が高いと考えます。
 そのため、私は昨年11月の校長会で、言論の自由を奪うような、「職員会議において職員の意向を確認する挙手採決の禁止」を撤回するように求めましたが、貴委員会には、その要求に応じていただけず、また納得のいく理由も示していただけませんでした。そのため今年7月10日、貴委員会に対して以下の三点について申し入れを行いました。

  1. 職員会議における挙手・採決の禁止の撤回等の教育問題について、是非とも私との公開討論を行っていただきたい。
  2. 公開討論に応じていただけないのなら、公開討論を要求する記者会見を行う。
  3. それでも公開討論に応じていただけないなら、私の意見を一方的に表明する記者会見を行う。

 残念なことに7月18日に貴委員会から、組織内部のことなので@の公開討論には応じられないとの連絡があったため、申し入れ通り、今回、Aの公開討論を要求する記者会見を開かせていただきました。 公開討論を行っていただけるか、いただけないかの回答を8月20日までに文書でお願い致します。
 私は今まで生徒のため、東京のため、日本のために教員として頑張ってきたつもりです。貴委員会も生徒のため、東京のため、日本のために教育施策を実行されていると思います。お互いに、生徒のため、東京のため、日本のためを思って教育活動を行っているわけですから、公開討論の場でお互いの意見を述べ合い、都民、国民にどちらの意見が正しいか判断してもらいたいと思います。貴委員会への支持が多ければ、私は素直に都教委の意見に従うことをお約束します。
 貴委員会が、私との公開討論にぜひとも応じていただくことを強く要請致します。

平成20年(2008年)8月4日

東京都立三鷹高等学校 校長  土肥信雄

記者会見報告

PartI.

土肥先生と都庁舎1階のロビーで待ち合わせ。そこには石坂啓さんも見えて、土肥先生とすぐに打ち解けて、話しこんでいました。1時45分過ぎにエレベーターでわいわいと会見室へ。会見室に入ったときは、すでに多くの記者や傍聴の人が来ていました。テレビカメラも3台待ち構えています。記者席にもかなりの数の記者。報道関係の他に目立つのは保護者や市民の傍聴者の姿。藤田先生、尾木直樹さんも見えてご挨拶。
正面に土肥先生、藤田英典国際基督教大学教授、尾木直樹氏(教育評論家)、勝野正章東京大学准教授、石坂啓さん(マンガ家)、そして司会の勝守が並びました。
幹事社の日本工業新聞の合図で開始。
まず、土肥先生が都教委への要請内容とその理由を表明されました。(添付要請書)10分ほどの内容でしたが紙を読むでもなく、正面を向いてきっちり、はっきり述べられました。
要請書に書かれた言葉以外で印象的だったのは「私の学校では挙手・採決の禁止通知はきちんと守っている。個人的には通知に反対ではあっても法に準ずるものである以上、守るのは当然。」とおっしゃったことです。

続いてゲストの教育専門家の応援団のメッセージ。
    • 藤田英典国際基督教大学教授:
      教育研究者として土肥校長に賛同する理由は3点。1.学校教育と学校の運営は基本的に民主的なものであるべき。2.近年の都教委のありかたに重大な危機感をもつから。言論の自由、思想信条の自由の抑圧で教員の自発的な営為を押さえ込み、通達と処分による行政はゆがんでいる。3.職員会議で校長が教職員の意向を知るためにも、どこかの時点での採決はもとめられる。しかし採決したからといって、校長の決定権が損なわれるわけではない。細かいことだが非常に重要だ。

    • 尾木直樹氏:
      現場の正常化のために通知を出したというが、このようなかたちで一律に統制することは全くおかしい。僕が教育長だったら問題のある学校へ直接出向いて、その学校を正常化をはかる。このような非常識がまかりとおっている教育委員会とはいったい何か。東京都の学校は言論の自由がないことが知られて、東京は教員採用試験の志望者が激減している。都教委は説明責任をはたすべきだ。これは決して内部の問題ではない。

    • 勝野正章東京大学准教授:
      現職の校長が学校の現状について公的な場で発言をすることの重要性を痛感し、支持した。
      こういう通知を出すこと自体が異常で、ほかの組織では考えられない。校長のリーダーシップを確保するためと言っているが、このような通知はかえって校長のリーダーシップを否定していることになる。今回公開討論を要求されたことは大変意義深い。学校の基本的な問題は学校内だけでなく社会的な対話の場で広く話し合っていくべきだ。教育行政のアカウンタビリティが問われている。

    • 石坂啓さん:
      職員会議で採決が禁止されていることに素朴に疑問をもつ。それは子どもにとってあまりうれしくない環境だ。萎縮した大人たちに教育される子どもたちには何らかの弊害があるだろう。東京で実施されることは必ず地方へ波及する。土肥校長が言っていることはきわめて常識的なことで過激でも何でもない。だから応援する。

    • 司会:「保護者や市民が土肥校長のことを知ることができたのも、マスコミの皆さんが報道してくれたおかげ。今回も大きくとりあげてほしい。」

質問は3社から出されましたが、土肥先生はいずれにもよどみなく、わかりやすくお答えになっていました。
記者会見に出席のメディアは朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、東京新聞、サンケイ新聞、共同通信、日本TV、TBS、MXTV他フリーランスジャーナリスト。

Part.

3時から都教委へ要請書提出。黒田課長が休みのため、応対したのは徳田教育情報課係長。
報道のカメラが直前まで土肥校長を撮影。報道陣が退室後、土肥校長が要請書を読み上げ、徳田係長に手渡しました。
藤田先生、尾木直樹氏、石坂啓さんも同席し、あらためて要請と支援の言葉を述べていただきました。
コの字型に机が並び、その一辺に土肥先生と3氏、向かい側に支援の保護者や市民約20人、両辺にはさまれた正面に徳田係長と記録の女性。
心なしか徳田係長もいつもより鄭重な態度で、「公開討論の要請を担当部門にしっかり伝える」と繰り返していました。土肥校長「返答は三鷹高校へ直接ください。」で締め、20分あまりで終了しました。

追記:

4日のTBSのNEWS23では番組の後の方で数分放映されました。ご自宅を出る土肥先生の姿を追い、要請を表明する話す姿と都教委に要請書を手渡すシーンが出ました。

以上


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