1999年9月18日(土)、会場:シニアワアーク東京
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資 料
◎「ハーグ平和会議」(1899・1907)
国際仲裁裁判運動とハーグ平和会議
1870年代から世紀末にかけて、法律家・政治学者・議員達による国際仲
裁裁判制の設置によって戦争を避止する運動が展開され、今世紀に影響を残し
た。
1)1871年にイギリスに出来た国際労働者平和協会は「国際最高裁判所設立
案の概要」を発表 ⇒1880年に国際仲裁連盟となる。
2)ヨーロッパ大陸諸国においても、各国の議会の議員から成る万国議員平和同
盟の設立が主張された。
3)これらの運動組織は、英仏合体して「国際仲裁・平和協会」に統合。
1880年代にはイタリアや北欧等ヨーロッパ九ヶ国に約80の支部を設けた。
4)1889年「国際的仲裁制のための国際的議員会議」の第一回会議。
A.仏英米伊等九ヶ国から代表が参加して、パリで開催。
B.諸平和協会組織が合流して「国際的議員大会」を行うこととし
⇒戦争に代えて国家間の仲裁裁判制を設立する目的のため作業を進めた。
5)「1897年大会」決議⇒あらゆる政府が当該国の憲法を修正して例外なく
一切の紛争を仲裁裁判に服せしめることを受諾するという条項を組み入れる
べきである。
6)この、憲法に仲裁裁判制を条項として導入する要請は、ただちに実行される
ことはなかったが、この種の思潮の高まりに応じて、仲裁裁判に付すること
なしに宣戦をなしえぬ諸憲法が出現。
1911年 ブラジル憲法改正43条
1911年 ポルトガル憲法26条
1917年 ウルグアイ憲法79条8項等
ハーグ平和会議
ハーグ平和会議は、1899年および1907年の二回にわたり、ロシア皇
帝ニコライ二世の招請によって、軍備縮小と世界平和を議題として行われた
が、両回とも軍縮問題は討議されていない。
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☆第一回会議(1899(明治32)年・第二次山県有朋内閣)
1.日本など26ヶ国が参加。「国際紛争平和的処理協約」「陸戦ノ法規慣例ニ
関スル協約」その他を採択した。
1)国際紛争平和的処理協約
国際紛争を平和的手段で解決するための諸方式を規定した。
2)陸戦ノ法規慣例ニ関スル協約
戦争の起こった場合の各種の規制について規定し、戦時国際法の確立に
重要な貢献をした。
2.赤十字条約の原則を海戦に応用する協約を採択。
3.軽気球よりの投射物の禁止や窒息ガス・有毒ガスの使用禁止も宣言された。
☆第二回会議(1907(明治40)年・第一次西園寺公望内閣)
1.日本など44ヶ国が参加。開戦に関する協約等10協約を採択。
2.いずれもこの時代での普遍性の高い協約であり、戦争の人道的・法的規制
として高く評価されている。
3.だが、第一次世界大戦の破局を阻止することは出来なかった。
ミニミニ歴史
1900. 6.15 閣議、義和団征圧の派兵決定。
1904. 2.10 日露戦争亘戦布告
1907. 4.23 満鉄調査部設置。
7. 3 伊藤韓国統監、ハーグ平和会議への密使派遣
(日韓協約の無効を訴える)で韓国皇帝の責任追及
⇒ 7.19皇帝譲位。
7.23 第1回満鉄社債400万ポンド、興銀引き受けにより、
ロンドンで発行。
7.24 第三次日韓協約調印。
8. 1 京城で韓国軍隊解散式。一部韓国軍、日本軍と衝突。
反乱全国に拡大⇒義兵運動
(はて?さて?)
大津事件(1891年一明治24)二題。
1)ハーグ平和会議招請者ニコライは大津事件の被害者!
日露戦争の当事者にして、ロシア最後の皇帝。
2)大津事件で政府と対立、司法の独立を護った児島惟謙は「護法の神」で
衆議院・貴族院議員歴任。
他方、長沼ナイキ訴訟の福島重雄判事は国会の裁判官訴追委員会に。
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◎過去の平和主義関連裁判で
「裁判所が憲法判断に立ち入ったか否かという観点からの、四つの類型」
第一は、安保条約や自衛隊の憲法適合性に真正面から審査。
☆判決、安保条約や自衛隊は憲法違反。
☆判例、砂川(刑特法)事件一審判決 ⇒伊達判決
長沼事件一審判決 ⇒福島判決
第二は、「統治行為論」安保条約や自衛隊の存在を不問。
☆判決、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の
司法審査権の範囲外。
☆判例、砂川(刑特法)事件最高裁判決
百里基地訴訟一審判決
第三は、「統治行為」論を援用することもなく、それ以外の理由で、憲法判断
を回避。
☆判決・判例
警察予備隊違憲訴訟最高裁判決 ⇒事件性の要件の欠如。
長沼訴訟最高裁判決 ⇒訴えの利益の喪失。
恵庭事件 ⇒構成要件不該当。
小西反戦自衛官訴訟差戻判決 ⇒構成要件不該当。
百里訴訟最高裁判決 ⇒私人間への九条適用拒否
湾岸戦争訴訟判決 ⇒具体的な権利侵害の不存在。
第四は、訴訟当事者自身が、安保条約や自衛隊の違憲性を正面から争うことを
しない。したがって、裁判所も、法律問題、権利侵害問題について判
断を下している事例。
☆事例、一連の基地公害訴訟、4・27反戦自衛官訴訟
出所:山内敏弘・太田一男『憲法と平和主義』(現代憲法体系A小林直樹監修)、
法律文化社、1998年12月15日第1刷
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