原宿留置場問題:都知事発言1
(都議会サイトより)
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平成13年12月4日
平成13年第四回都議会定例会 知事所信表明より
4 政策の苗の着実な育成
(安心、安全な生活基盤の構築)
世論調査や都政モニターアンケートを見ると、防犯対策の充実を求める声は、近年急激に高まっており、今や、良好な治安の回復は、都民にとって非常に切実な問題となっております。実際、刑法犯は、過去最高の認知件数となりながら、検挙率、検挙件数は、ともに昭和41年以降最低の水準に留まりました。また、来日外国人の薬物事件がこの1年で倍増するなど、東京の治安は、致命的に悪化してきております。
絶対数が不足している留置場の拡充は、治安維持の基礎となるものであり、早急な対策が求められております。民間の力を積極的に活用しながら、日本社会事業大学の跡地に、オフィスビル、警察署などと一体的に、相当の規模の留置場を整備したいと考えております。東京都としての原案がまとまった段階で、関係者には十分説明したいと思っております。都民の安全を守るため、関係する皆様には、ご理解とご協力を是非ともお願いいたします。
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平成13年第4回定例会より
(開議第二日)12月11日(火)
〇百五番(渡辺康信君)
次に、石原知事の都政運営における基本的な姿勢について伺います。
いうまでもないことでありますが、都政を運営し、どのような施策を実施するに当たっても、第一に、関係者の合意を得るように誠実に努力すること。第二に、異を唱える声にも真摯に耳を傾けること。第三に、行政の継続性を重んずる立場から、たとえ前任者の時代のことであっても、都が事前に約束を交わしていたことは尊重すべきであることなどは大事なことであります。しかし、石原知事、あなたにはこうした点を踏まえようとする気があるのかどうか疑わしいと指摘せざるを得ない事例が少なくないのであります。
例えば、原宿における社会事業大学跡地への大規模留置場建設問題であります。そもそも五百人を超えるという規模の留置場を自治体が建設するという計画が前代未聞のことであり、当然予定地を初めさまざまな意見が起こるのは当たり前のことであります。
ところが、知事は、この計画を記者会見で正式に発表すると同時に、これに反対する住民の声を地域エゴだと決めつけました。その上、都は、来年度予算編成に向けた重要施策に大規模留置場を盛り込むことも既に行っています。これでは、幾ら知事がその後の所信表明で、原案がまとまった時点で関係者には十分説明したいといい、ご理解とご協力をぜひともお願いいたしますといっても、もはや知事と住民とが対等の話し合いによって理解と合意に達するというのは困難であることは明らかです。知事はまず、つくり上げた既成事実は白紙に戻し、関係する住民の声に耳を傾けることから始めるべきではありませんか。答弁を求めます。
同時に、この計画が道理も根拠もないことも明らかです。その一つは、東京都と渋谷区との間には、用地の取得に当たって、都が利用計画策定に当たっては、渋谷区及び地元住民との事前協議に誠意を持って対応するという約束を公文書をもって取り交わしていたということであります。
二つ目には、留置場が不足しているということについても、我が党の調査では、留置場に置かれている人の三分の二は、本来拘置所や入国管理所で対処すべき犯罪者が留置場にとめ置かれている、いわゆる代用監獄として使われているのであって、決して留置場が不足しているということではないのであります。また、拘置所についていえば、現在東京拘置所の建てかえが進められており、二〇〇四年三月の完成時には八百人以上も収容人数がふえることになっているのですから、東京都が代用監獄となる大規模な留置場を建設する必要がないということは明らかではありませんか。知事、これでも地域エゴだというんでしょうか、ご意見を伺います。
(中略)
〇石原都知事
次いで、日本社会事業大学跡地の利用についてでありますが、ご承知のように、近年、凶悪な犯罪が増加する一方で、検挙率は著しく低下しておりまして、都民は治安の悪化に非常に大きな危惧を抱いております。意識調査しましても、去年は十位に入らなかった治安に対する不安が三位にまで浮上してきております。
こうした中で、留置場の不足がますます深刻な問題になっております。都民の生活を守るべき東京都としましても、問題の重大性を明らかにし、対応策を示すのは当然の責任であります。留置場の建設を白紙撤回することは毛頭考えておりません。
地元には、さまざまな異論があることは十分承知しておりますが、一応の原案ができた時点でこの問題は施策が立地される地元の利害のみで議論されるべき問題ではなく、広く都民全体の安全にかかわる問題でありまして、今後話し合いの中で、地元には大局的な見地からの判断を求め、理解と協力を得たいと思っております。
次いで、この跡地利用に関する経緯及び留置場の必要性についてでありますが、社会事業大学の跡地の当初の計画は、原宿警察署の建てかえと、防災施設の整備という内容でありましたが、その後の東京の治安状況の著しい悪化などを踏まえ、原宿警察署の建てかえに当たって、一体的に相当の規模の留置場を整備したいと思っております。
いずれにしろ、東京の限られた有効な空き地というものの利用は、ある時点で、いかなる自治体と自治体が契約を交わそうと、しかし、その後の時間の経過で、それに対する本質的なニーズというのは変わってくるわけでありまして、そういった時間の計数の中で変化していく都民にとっての必要性というものを勘案しなければ、これは、行政は行政にならないと私は思います。警察署の建てかえと防災施設の整備という当初の計画内容に関して出された地元の六項目の要望については、現在、取り入れ可能かどうか鋭意検討しております。
代用監獄制度のもとで、本来なら国が構えるべき拘置所に収容される者が留置場に収容されているという問題があることは否定いたしませんが、現実には、東京拘置所の建てかえが終了したとしても、なお相当数の留置場不足が予測されておりまして、留置場建設の必要性は何ら変わらないと思います。
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「平成」13年(2001)12月11日
【参考】野田健警視総監は和田宗春氏(民主党)に質問に対し以下のような発言をする。
「警察署等の留置場における留置人員は、毎年著しい増加を続けております。平成十二年の延べ留置人員は八十六万人を超え、平成二年に比べ二・六倍に達しております。
警視庁では、平成十一年から各方面の留置施設の増設を計画し、移転、改築した警察署の旧警察署庁舎の暫定運用、あるいは警察署庁舎改築時における拡張等の諸対策を講じております。例えば、来年二月完成予定の大森警察署の留置定員は、従来の十九人を三十二人とする予定であります。
来年度は、第八方面の多摩総合庁舎内に新たな留置施設の設置、第七方面の城東警察署の留置施設の拡張工事を計画しており、その推進に努めているところであります。
なお、第一方面、第三方面及び第四方面の各警察署から近い社会事業大学跡地に取調室を併設した留置施設が設置されれば、日々の取り調べのために常時三名の警察官で行っております自署へ護送する業務が必要でなくなりますことから、この施設を利用する警察署等は効率的な業務運営ができることになります。
また、六百人規模の留置施設に必要な護送車は、一日に大型車両で平均的には二台であり、これが朝夕二回の出入りでありますので、護送車による交通渋滞はないものと考えております。」
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平成14年第1回定例会 2月26日より
次いで、治安に関する都政モニターアンケートの結果についてでありますが、これはまさに安全神話が過去のものとなったということを突きつけたデータであると思いますし、知事であり、同時に都民の一人としても非常に強い衝撃を受けました。私が日々感じてきたことを、都民もまた同じ考えでとらえているということが確認されたわけで、これを真摯に受けとめて、積極的な対処をしなくてはならぬと思っております。
国にとってはもちろん、地方自治体にとっても、住民の生命、財産をることは最優先で取り組むべき課題でありまして、東京の治安の維持には、就任以来、強い問題意識を持って取り組んできたつもりでもございます。ぼったくり条例の制定であるとか、ピッキング対策とか、留置場の整備であるとか、警察官のわずかでありますけど増員とか、これからもできる限りのことをやっていきたいと思っております。
さらに、田中さんが先ほど犯罪の抑止ということをいわれましたが、これはきめ細かく、しかも大きなこともやらなくてはなりませんけども、私は都知事としても、仲間の国会議員を通じて政府にも再三申し込んでいることでありますが、ひとつ有力な地方自治体である東京の都民の代表である皆さんにも声をそろえていただきたいんですけども、非常にずさんな、日本の犯罪に非常に余計な計数をかけてそれを増大し、悪質化している不法入国の外国人の管理というものは、やっぱり強く行わなきゃならないと思います。
本来はこれは、かつての内務省、警察がやっていたことでありますが、今、法務省がそれを担当していて、余りすぐれた人材が積極的な意思を持ってこれに当たっていると思えない。
これは、やはり、日本が法治国家であり、こういう状況というものが到来している今、私は、入国管理は、警察が担当して、犯罪の抑止に直接つなげるということが国家的に必要だと思います。都議会の方もその認識を持っていただいて、ひとつ東京都の主張をバックアップしていただきたいと思うわけであります。
その他の質問については、警視総監及び関係局長から答弁いたします。
〔警視総監野田健君登壇〕
〇警視総監(野田健君) ワールドカップサッカー大会の対策についてでありますが、昨二十五日、全国警察本部長会議が開催され、私自身出席して、種々協議、打ち合わせをしてまいりました。
過去の大会において、フーリガンによる各種不法事案が多数発生しており、今回は、特に国際テロの発生が懸念される、極めて厳重な警戒が必要であるという認識に立っております。
警視庁としては、都内で試合はないものの、大会本部の設置、外国要人や選手、サポーター等のキャンプ、宿泊や立ち寄りが予想され、また、数道県に応援派遣を求められることが予想されるというような状況にあります。
警視庁では、こうした情勢を受けまして、昨年十二月に警備対策室を設置して、事前情報の収集や実態把握に努めるとともに、防圧、検挙に必要な透明防護盾等の新装備資器材の配備や各種訓練の強化を図るなど、諸施策を推進しつつあります。
今後も、警察庁等の関係省庁を初め、大会関係者、外国の治安機関等と緊密な連携を図りつつ、不法事案の未然防止と徹底した取り締まりができる体制を確立して、警戒警備の万全を期す所存であります。
次に、治安対策についてでありますが、交番の充実やパトロールの強化が都民の切実な要望であるということを十分承知しております。
警視庁では、緊急通報としては、交番への駆け込み泣訴よりも、一一〇番電話の方が有効な場合が多いということについても周知を図りながら、一方、地域の方々の要望を的確に把握、分析して、必要に応じた交番の開所や機動隊の多角的運用によるパトロールの強化、さらには、一層地域に密着した活動ができる都市型駐在所の増設などを図っております。
また、交番に警察官が不在であっても適切な対応ができるように、ハイテク交番の整備を推進するとともに、元警察官を主要な交番に交番相談員として配置しているほか、元警察職員のボランティア活動として、警察官の目が行き届かないところを見て歩くシルバーポリス制度を導入するなど、各種対策を推進しております。
加えて、犯罪防止に配意した共同住宅、道路、公園等の設計の促進、さらに、街頭防犯カメラシステムや緊急通報装置付防犯灯などの防犯設備の整備に努めるなど、犯罪被害に遭いにくい安全・安心まちづくりに積極的に取り組んでいるところであります。
昨年、ピッキングという用具を使用した侵入窃盗を一昨年の六割減に抑え込むことに成功したように、今後も都民の視点に立って、犯罪発生を抑止するさまざまな対策を講じ、都民生活の安全確保に努めてまいります。
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「平成」14年(2002)3月14日東京都予算特別委員会の総括質疑より
矢部一氏(自民党)の質問答えて。
今、委員のお言葉に、治安の変化、悪化もさることながら、知事としての私の意思云々とありましたが、この留置所の設置に関しての私の意向は、あくまでも、とにかく東京における治安の悪化、ほとんどの都民が、意識調査をしましても、圧倒的に一番案じ、憂いている治安の悪化というものを踏まえて発案したことでありまして、それをぜひご理解いただきたい。
それから、あの土地について、今までどういういきさつがあり、どういう証文が交わされたかもしれませんが、しかし、この一、二年の間に、日本の、特に東京の治安は、非常に著しい変化、つまり悪化をしているわけであります。そういう状況の変化というものに、今まで互いに交わしたどんな文書があり、どんな約束があったか知りませんが、しかしやっぱり、焦眉の問題として、私たちはこれを正面からとらえなくちゃいけないと思うんです。
それに迅速に対処することが、お互いに政治家の責任であり、行政の責任だと思いますし、そのために私は、これに対していろんな疑義を持っていらっしゃる都民の方々に出向いて説明することはやぶさかでありませんが、いずれにしろ、これは単に渋谷区のためだけじゃなしに、全東京、日本のためにも実現しなくちゃいけない、この国家社会、東京というものを安寧に維持していくための絶対必要条件の一つだと心得ております。
(中略)
必ずしもそういうことじゃございませんで、PFIというのは世界全体の非常に好ましい流れだと思います。民間の合理感覚で経営をすれば、官僚、役人がものをこう−−要するに運営するよりもはるかに低コストで、また、条件としてもいいものが整えるという事例が幾つかありますが、その一つを、思いがけないけれども、非常にいい事例がロンドンの刑務所だと思います。
そういうことで、刑務所と留置所というのは明らかに違いますけれども、これをPFIなどでやれば、非常に低コストで、非常に合理的な、しかも、そのときついでに申しましたのは、留置する、特に外国人の調書をとったりするときに、非常に通訳のコストがかかるわけで、それを見越して警察も微罪の外国人の容疑者というものを捕まえるのを手控えるような傾向が、必ずしもないでもない。そういうことを含めて、商社などに経営させて、そのOBで、それぞれ外国語の堪能な海外経験の長い人たちをうまく使えば、ほとんどただで通訳もできる云々という話はいたしました。
そういう発想で、新しい留置所も民間の力をかりて、PFI方式でやったらどうかということをいったわけであります。
(中略)
不法入国する外国人についての認識がちょっと矢部委員と私は違うんですが、いわゆる法務省が正規の入国管理事務所で摘発するという不法入国の人間というのはかなりの数ですが、それはもう本当に、日本に不法入国する外国人の中では数の知れたものだと思います。これは明らかに全然そういう手を通じずに、例えば、悪名高い中国のシンジケートのスネークヘッドのようなものが組織的に不法入国させる。つまり、不法入国ゆえにパスポートを持ちませんから、結局、正規の就労ができないので、犯罪要因になる。そういった人間の数がはるかに多いと思いますし、これは警察庁がつかんでいることで、警視庁の管轄じゃございませんけれども……。
ですから、私は、最低限、入国管理も法務省じゃなしに、警察がかつての内務省にするべきだということをいってまいりましたし、それ以外の対策は、この間も私の知人の野中君が中国に行くときに、強くいってくれといいましたけれども、広州というのは北京の政府の管轄の及ぶところじゃございませんで、ほとんど野放しの形で、かなりの数の、要するに、中国人が不法入国しているということは事実だと思います。
(中略)
せっかくの機会ですから、総監ご自身はちょっといいにくいことだと思いますので、私の口から申し上げさせていただきますが、私の親友の佐々淳行も含めて、警察のOB、治安担当のエキスパートを私、何人も知っておりますが、彼らがひとしくいうことは、とにかく外国人がかなり野方図にやり過ぎている。大体、日本の警察官の総数が、日本人の、国民の人口の割りに非常に少のうございますのと、もう一つは、これはご存じかもしれませんけど、つい最近までは、日本の警察官はけん銃を持っても絶対撃たないというのが外国人の犯罪者の通り相場でありまして、ついにこの間、あるケースで、朝鮮人の犯罪者に向かって発砲して、朝鮮人、韓国人の犯罪者の世界では、日本の警察は撃つぞといううわさが徹底した。
中国人の系統の犯罪者がどういうふうに認識しているか知りませんが、ともかくも留置所が足りないため、金もかかるし、尋問にもかかるし、微罪は見て見ぬふりをして、警察官が手控えるようなトレンドさえ、このごろ出てきているわけです。そうすると、この程度のことをやって見逃されるなら、完全に捕まったと思ったのが見逃されるならば、よしということで、だんだん不法滞在している外国人の犯罪というのは、質的にも悪化していくというのが現況だと私は思います。
こういう認識を私は持たないと、つまり、警察は非常に大きなハンディキャップをしょいながら、命がけで、ある場合には対処しているということもひとつご認識いただきたいと思います。
(中略)
まさにそういう仕組みをつくる必要がありまして、どこかの新聞が抜いたという形でこの記事が出まして、いろいろ疑心暗鬼が拡大しているわけでありますけれども、六百という数字も必ずしもコンクリートなものではありません。
ただ、おっしゃるとおり、これは本来、国が刑務所なり、拘置所というものを十分に設置していくべきものでありますが、国の行政がおくれている限り、その被害というものを都民が集約して受けるのは、私は許せない。
例えば、過剰に留置所をつくったにしても、それが無為に、要するに、何年かたって役に立たなきゃほかのことに使えるわけですし、今せっかくあそこに大規模な移転というものが行われる限り、それを活用するということで、私は都民の安心というものを担保できると思うんです。
それから、皆さん、勘違いしていらっしゃるのは、あそこに何も網走の、要するに、番外地が引っ越してくるわけじゃないんです。ぜひごらんいただきたい。(写真を示す)これ、マンハッタンのチャイナタウンの裏側です。マンハッタンのまさに目抜きのところに、こうやって、これは拘置所です。つまり、容疑者じゃない、告発された犯罪の容疑者が、(「拘置所が必要なんだ」と呼ぶ者あり)そうなんです。この横に裁判所がある。この下は有名な、いつも満杯のチャイニーズフードのレストランですよ。こういうものをご理解いただきたい。
都会は、やっぱりスペースが限られている。それをいかに有効に活用するか。今、都民の一番の関心が治安である限り、つまり、それに対する安心というのを確保するために、私はできる限りの努力を、国がしないなら、かわってでも都がすることが、都民に対する、国民に対する責任の履行だと私は思います。どうぞひとつご理解いただきたいし、あそこにいらっしゃる渋谷区の皆さんも、都民として、日本人としてひとつご理解いただきたい。
【参考】野田健警視総監の矢部一氏(自民党)の質問に対する発言。
昭和五十年代ごろは一日平均で千五百人ぐらいの留置人が警察署の留置場におりました。それが平成四年ごろは九百五十人ぐらいに減っていたのでありますけれども、それ以後、一日当たりの留置人はふえてまいりまして、そのふえ方が特に平成十年以降になってきますと、著しいふえ方になっているということで、現在は留置場の定員をオーバーする日というのが非常に多くなっているということで、留置場が不足しているという実態にございます。
(中略)
警察署で逮捕した場合には、警察署の留置場に留置するわけであります。四十八時間たちますと、検察庁に送致して、そして拘留をしてもらうということが多いわけですね。そして、拘留期間というのは最初十日で、一回延長されて二十日になる場合もありますけれども、その間に起訴するか、あるいは釈放するかという決定が検察官によって行われる。
こういうことですが、いろいろな意見の違う方もあるんですけれども、警察としては、警察で逮捕した被疑者については、自分で責任を持って調べをして、そして、検察官と協力しながら起訴に持っていくということが必要だということで、その二十日間について必要な取り調べもしなきゃならない。ですから、警察の近くに留置場があるということが一番便利だというふうに思っています。
ただ、今度は起訴されますと、原則として取り調べはしなくていいことになるんですが、共犯がある場合とか、あるいは本人がほかの犯罪をやっているということで再逮捕するというような場合もございます。
それで、現在、留置している者が平均して何日ぐらい在監しているかということでありますけれども、総数では、平成十三年は一人当たりが三十六・三日でありました。これは平成四年ごろが十九・二日でありましたから、倍ぐらいになっているということであります。この三十六日のうち、日本人の平均は三十日、三十一日ぐらいでありまして、外国人の平均は約六十日であります。ですから、外国人の方が長く留置場にいるという状況になっております。
(中略)
警視庁で留置している人を見ますと、起訴前の者というのが、昨年一年間の延べ留置人員で見ますと、三十五万三千人で、一日平均九百六十八人であります。起訴後の者は約五十五万五千人で、一日平均が千五百二十一人となって、六〇%を超えるという状況になります。
ただ、これらの中で、共犯者もいないし、ほかに余罪もないということで、取り調べをする必要もないと。ですから、できるだけ早く拘置所に行ってもらった方がありがたいという者はどれぐらいいるかというと、昨年は一日平均で五百三十八人ということで、一日平均収容人員二千四百九十人の二二%でありました。
(中略)
現在の留置場不足というのがどこから生じているかといいますと、その主たる原因は、来日外国人の組織犯罪が非常にふえているということによっていると思っております。
なぜかといいますと、日本人の場合ですと、保釈されるというようなことで、起訴と同時に留置場から出る、あるいは拘置されないというような事態になることが多うございますけれども、現在の来日外国人の組織犯罪というのは、共犯があると。あるいは、正式裁判が求められるというようなこともあり、同時に保釈できないということで、拘置所なり、留置場がいっぱいになると。
残念ながら、もう一つ問題は、刑務所も定員がもう満杯だということでありまして、ですから、確かに今工事中の東京拘置所ができれば、とりあえず三百人ぐらいは移れると思いますけれども、それでも、現実に足りないと。
それから、警視庁の留置場が、千五百人ぐらい留置されているという状態がおおむね定員的には適当だということから考えましても、現在仮に三百人減り、あるいは五百人減っても、今の状態でも留置場は足りない状況にあるというふうに思っております。
(中略)
平成十四年三月一日に施行されました改正入国管理及び難民認定法に書いてある内容は、一つはフーリガン対策で、おっしゃるように、フーリガンのようなことをやった者について入国を断るというようなことであります。
それから、外国人犯罪対策としては、刑法とか、暴力行為等処罰に関する法律、あるいは盗犯等の防止及び処分に関する法律に定める一定の罪を犯して、懲役または禁錮に処せられた者、これについて再入国を拒否する、あるいは退去を強制できる、こういう規定ができると。この辺については、いわゆる来日外国人の犯罪対策としては非常に有効だというふうに思っておりますけれども、留置場にいる人間を減らすという点においては余り関係はないというふうに思っております。
(中略)
不法入国であるとか、不法滞在というものについては、これが犯罪者に変わってしまうという危険が非常に高いので、一番いいのは水際で入国させないということと思って、入管とも人事交流するなどしながら、全力を尽くしているというところでありますけれども、現実問題として、二十数万人の不法入国、あるいは不法滞在があるという実態でありますから、容易な事態ではないというふうに考えております。
(中略)
外国人が日本で犯罪をするというのは、多分バブルのころが一番警視庁では留置人員が少なかったということを見ますと、そのころは今よりも多分不法滞在の人の絶対数は多かったと思うんです、いろいろな統計から見ますと。ですけれども、犯罪は少なかった。外国人の犯罪というのは、そのころは、統計資料の留置場の中で見ますと、九人に一人ぐらいが外国人だった。それが現在は絶対数もふえた上に、三人に一人が外国人という実態になっているということで、恐らく不法滞在の人、あるいは不法入国してきた人が、今、組織的な犯罪をやっている。
というのは、もう一つは、平成四年ごろの共犯率というのは一〇%以下でありますけれども、現在は五〇%を超えているのが共犯がいるというような実態になっていまして、そういう意味で、来日外国人の組織犯罪が繰り返されているという実態にある。そして、この数字は、ちょっと残念ながら、来日している外国人を全部外国に送り返す以外に減らす方法はちょっとないんじゃないかなというふうに思いますので、まだ当分の間はふえざるを得ない、残念な状態にあるというふうに思っています。
(中略)
先ほどの八・五%というのは犯罪の増加の比率ではなくて、延べ留置人の伸び率を八・五%で計算しているということであります。
外国人の犯罪の対策につきましては、政府において関係省庁が寄り集まりまして、抜本的な対策を考えながら検討しているというふうに聞いております。
(中略)
留置場が非常に足りないということで、何とかしなきゃいけない事態になっているというのは、割合に最近起きた現象と思います。というのは、延べの一日当たりの平均が千五百人で、昭和五十年代。それが平成四年ごろには千人を下回ったということですけれども、千五百に戻ってから現在の二千四百台に至るまでが、非常に短い期間でふえてしまったと、こういうことがありまして、留置場を何とかしなきゃいけないということで、昨年、どこか既にある警察署の中で、警察施設の中でふやせないだろうかということで、一つは、八方面本部の施設の中に、無理すれば百人規模ができるぞということで、それを予算で要求しようではないかと。
もう一つは、城東警察署の中庭に署長公舎がありましたけれども、これを取り壊して、そこに留置場をつくれば、もう少しふやせるというところまでは行ったわけでありますけれども、どう見ましても、今のまま世の中が変化し−−来日外国人がいなくなれば別なんですけど、そうでない限りはふえざるを得ないという事態に対処するためには、早急に警視庁全体で千人分ぐらいの留置場が必要だということであります。
したがって、とりあえず原宿に、今は六百ということで考えておりますけれども、いずれ警察署の改築が進んでいく過程では、それぞれ、例えば原宿でしたら、最低でも十四人が二十五人ぐらいにはしなきゃいかぬとか、あるいは女子房ももう五十ぐらい要るんじゃないかというようなところまでは、数年前の考えであったわけです。
ところが、今の事態はとてもそれどころじゃありませんので、次に臨港署ができるとすれば、臨港署にも二百人ぐらい、あるいは月島署の改築が十年以内にはあるだろうと思っていますけれども、そのときにまた同じように二百人ぐらいをふやしていくというような努力をしていかないと、とても今の事態で手を打つのがおくれてしまうというふうに思っておりまして、ぜひご理解をいただきたいと思っております。