えひめ丸・米原潜衝突事件でわかったこと
質疑応答

H. 航跡図の中で、ソナーが作動しないポイントですが、13時16分までは可能です。13時25分、この前後のスピードですとソナーは作動していません。その後の13時37分、これは微速ですから非常に静かで、あらゆるものが探知できます。
 ブリッジ内の火器管制官のところ、これは私たちはアタック・プロッターと言っています。攻撃対勢図です。12時32分にシエラ13を確認した時にプロッターがプットしますと、途中でプロットを止めようが止めまいが、えひめ丸が変針しない限りは、どんな風になってもここに登場します。潜水艦がどのように動こうと、対勢図は航跡図として残っていきます。今はコンピューターになっていますから。私たちの時代は歯車でしたけども、この5月に見たところでは、海上自衛隊の潜水艦もコンピュータ処理になっていました。えひめ丸のデータが変われば、分かりません。だから航海日誌を見たいのです。
 もう一つ、ソナー・モニターが故障していたとしても、音は聞こえます。西沢さんが「マイクとスピーカー」と言われたのは、私たちはテレトークと言っています。マイクとスピーカーが一体になっていて、ボタンを押してターゲット、何度、何マイル、と言うと、その声が届きます。それを艦長の所はもちろん、エンジンから水雷発射管の所まで艦内全部に配置していきます。

O. テレトークの声を艦長は聞こうとしないと聞けないんでしょうか。

H. 聞こえます。司令塔全体に流したいものは流しますから。そこにいれば聞こえます。

M. 乗客がしゃべっていて聞こえないということはありますか。

H. いや、それよりも音は大きいです。プロッターは、昔は手で書いていたかもしれませんが、今はそういうことはしません。5分おきにプロットして、その点をつないでいくと対勢図ができる。

M. プロット員の前にモニターがあるわけですか。

H. そこでプロットします。

M. 艦長もそれを見るのですか。

H. 見なくちゃいけない。

k. シークレスト兵曹は実際にえひめ丸の航路を見ていて、かなり迫っていることがわかていたんだけども、艦長が潜望鏡で見て、いないと言ったので、こちらが間違っているんだろうと思ったという風に証言しています。嘘くさいですけれども。ぶつかってから30秒後ぐらいに、どうも間違っているらしいと書き換えたということがありますね。

H. 書き換えても今はコンピュータですから、前のデータは残ります。

K. プロット員はえひめ丸の距離を3.6キロから8.2キロに修正した。ノーコンタクトだというのは、プロッターとは関係がないのですか。

H. 関係ありません。これはあくまでもESMデータのことです。

N. この近海にいる他の船も追いかけるのですか。

H. 衝突進路にある可能性のある船、あるいは行動範囲で衝突進路に向かっている船だけプロットします。

西沢 新聞報道でいうと、もう一つの目標も見つけているんです。関心を持っていた目標は二つです。

O. 民間人が操縦に参加したことと事故との直接的な関係はありますか。

西沢 私はないと思っています。民間人が緊急浮上の時に操縦席に座って、というのはいかにもセンセーショナルで、事実らしいんですが、後ろに専門家がついているわけだし、それが事故になるということはないですね。

O. 緊急浮上のレバーを引いただけだということですね。

西沢 緊急浮上が始まれば船は操縦不可能になるわけですから、素人がさわっていようと、関係がない。浮上してから360度くらい回転して、それからぶつかったわけですが、その時はもうプロがハンドルを切っている。

S. 共同配信の査問会議の勧告書を見ると、コフマン海曹というのがいますが、これは西沢さんのリストにはないんですね。もう一つ、ソナーモニターが故障していたというんですが、査問会議の勧告書では、「機器や装置に衝突の直接の原因となったものはない」と書いている。

西沢 コフマンは何をしていた人でしょうかね。ソナー装置が故障していても、それが即、衝突の直接原因にならないというのは当然で、直接原因は、海面に飛び上がったことです。それに故障していても用心深い繰艦をすればぶつからないですよ。

M. シークレスト兵曹は手書きで他船航跡図を書く、ロールでまいたのに鉛筆で書き込むと西沢さんは言っていましたね。

H. 今はそんなことはやっていないと思います。

西沢 各新聞が、みな手書きだと書いていますね。読売新聞だと「航跡モニターは、ソナー情報をもとに他に船舶を点で映し出し、担当下士官らが距離、速度、コースなどを秋席。ロール上の航跡図に手書きしていく」と書いてある。朝日は「航跡図は他の船がそれまでどのように動いていたかを、5分ごとに更新して示す」と、これはハワイ在住の元原潜艦長の証言です。「シークレスト兵曹はソナー情報を分析し、目標船舶の位置やコース、速度を司令室内にあるロール紙に書き出す航路解析図を、民間人のごった返しで中断した」と。それと、テレビで放映された艦内の様子から見ても、米原潜は明らかにロール紙なんですよ。ロール紙があって、手で引っ張って、プロッターが5分に一回ずつ書いている。

H. そんなことをしていて戦争ができるでしょうか。手書きだと必ずミスが出るし。

西沢 プロッターは、仕事を中断したことがけしからんというので懲戒処分を受けているんです。自動的になっているんなら、シークレスト兵曹は懲戒される必要はない。魚雷を撃つときは手書きではないでしょうが、全体の戦況図は手書きです。

H. アタック・プロッターが出しているのは対勢図だけでして、火器管制のところで、いつ攻撃するかということは、もっと大きいもので計算します。発射角度とかは。

K. シークレスト証言はいま優先的に翻訳しているところです。できあがったら見ていただいて。

M. 艦長と乗組員の関係がぎくしゃくしていたという問題はあるんでしょうか。

H. 潜水艦の艦長は出航すると、ベッドで寝ることはまずないですね。

M. ふつうは半年のクルーズというのをやらないといけないんだけれども、ワドルはそれをやらないで艦長になった。

S. なぜ彼はそれをしないで艦長になれたのですか。

M. ブラウンウオーター・ネイビーの開発をやれと言われてそれをやっていたものだから、艦長になれた。それが一つの要因で乗組員との間にぎくしゃくした関係になったという話はあります。

H. 6000トンの船というと、水上艦だと1000人くらいでやる仕事を100人くらいでやっているわけですん。いくら手があっても足りないです。

S. 本来はもっといるわけですよね。

西沢 今回の事故時には火器管制が一人なんです。プロット員の仕事は紙に書くだけではなくて、解析をして、解析したのを書くのもやっていた。この人は、目標が8キロも離れていたと言って、海図を改竄したんです。今回の事件は戦争のために出航したわけではないけれども、火器管制を一人でやっていたというのは、まことに変則的ですね。

S. 正規の要員数じゃないから手が廻らなかったと。

西沢 それもあるでしょう。それにいちばん問題なのは、火器管制の部門の長が乗っていないんです。いちばんのベテランが乗っていないんですね。目標を解析するというのは、大変な仕事なんですよ。経験が必要で。そのベテランが乗っていない。

K. 全体としてみると、えひめ丸が見えていなかったはずはないし、聞こえていなかったはずはないというような事実が出てくるんですが、そうだとすると、それでありながら、なおかつ浮上したのをどう見るか。

西沢 艦長は全部、無視したわけですね。裁判だったら、私はそこを突きますよ。ソナーで聞こえたのに何で突っ走ったのかと。ワドル艦長の行為は殺人罪に近いようなものですよ。だから、ソナー員の絶叫を聞こえなかったことにしたんです。ソナー電子表示装置は壊れていた、プロット員は仕事をしなかった、だから艦長の私は何も分からなかったと、そういう形で逃げたわけです。

K. 潜望鏡偵察のビデオテープがないんですよね。あるはずのものが。

西沢 全部、証拠隠滅ですよ。

H. 潜望鏡を上げるとすぐ、昔はカメラが動いたけれども、今はビデオが動きますね。潜望鏡の中にレーザーが組み込んでありますから。この距離なら、アクティブ・ソナーならそれこそキンコンと鳴ります。衝突寸前ですから。アクティブをかけなくても、パッシブで充分に聞こえるだけのスピードです。

K. もう一つ問題になっているのは浮上の仕方ですね。最後の段階で急角度でターンしている。これはどうですか。

H. 緊急浮上だと前の潜舵はアップ、後ろの潜舵は下降で全速で上がっていくんです。グリーンビルの場合も、立ち上がるようにして上がってきた。360度回ったのはなぜか分かりません。

西沢 浮上してから回ったわけですね。何のために回ったかというと、帰港を急ぐという事は考えられますね。

W. 緊急浮上は何度ぐらいの角度ですか。

H. 45度以上です。立ってはいられない。海上自衛隊ではこんな訓練はやらないです。怪我をしますから。

西沢 アメリカ海軍だと、年に一回は義務づけて訓練をしているんですね。年中やるわけではないです。

K. 少なくとも緊急浮上はお客さんに見せるものですね。

M. ショーですよ。あの場所は観光スポットなんだそうですね。バーンと上がってくるのを、ウオッチャーがいて見ている、そういう場所だという。このショーにアメリカ海軍は力を入れているんですね、だから無理をやったのではないか。

 ESMの問題、ソナー室がらみの問題を、米海軍はよってたかってごまかしをやっている。新聞記者も知識がないので分からないのでしょう。そこで軽くごまかされて、米海軍に都合のいいような情報しか新聞やテレビには出ていないのが現状です。
 私は、米海軍の組織ぐるみの虚偽と隠蔽に怒りを覚えています。遺族の方々は現場に行って、証言を聞かれたり査問会の状況を見て米海軍の不誠実さを感じておられるでしょう。事件の真相究明のために、さらに努力したいと思います。



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