平成16年(ワ)第11513号
自衛隊イラク派兵阻止、イラク特措法違憲確認及び損害賠償請求訴訟
原  告  新井 治
被  告  国

準 備 書 面(9)陳述用

2005年(平成17年)12月16日

東京地方裁判所 民事第1部合2係 御中

原告   新井 治

 最近、杞憂な出来事が非常に多い。なかでも一番大きな問題は、憲法改正論議です。正しい方向に改めるのなら良いですが、改憲の方向は帝国憲法への復古を目論んでいるとしか思えてなりません。これでは改正ではなく憲法改悪と言える。憲法改悪とイラク問題と一件関係ないように見えますが、実は大いに関係有るのです。
 11月27日(日)のNHK日曜討論で、自民党代表者(桝添要一新憲法起草委員会事務局次長)は、今までは“解釈改憲”して自衛隊を軍隊まで育て上げてきた。自衛隊を軍隊では無いというのは、現状に合わないので自衛隊を名実ともに“軍隊”と規定すべく改憲案の策定をした。と述べた。このことはとりもなおさず、政府・自民党が私たち国民をだまし続けて憲法を自分たちの都合良いように解釈して、運用してきたといっても過言ではありません。
 準備書面(4)具体的権利侵害でも述べましたが、イラク戦争がはじまってから最近とみに“表現の自由“が侵害されるようになってきました。昨年12月の政党ビラを配布しただけで、逮捕そして75日間にわたる拘留。その他イラク戦争反対のチラシを配布しただけで逮捕というように、反戦の行動をしただけで逮捕されるという出来事は枚挙にいとまが有りません。これは表現の自由の圧殺以外何者でもありません。
 また少し前までは、戦争反対を唱える集会やデモなどはよく記事になり、新聞等を読んで励まされたものです。しかし、イラク戦争が始まってからは、平和デモや集会が報道される事は殆ど無くなりました。NHKの番組改編事件のように権力者からの何らかの圧力があり、報道・発表がなされなくなったと理解しております。
 加えて、12月9日には東京高裁が、立川ビラまき事件に逆転有罪判決を言い渡しました。ただでさえビラまき程度の行為で市民はびくびく萎縮しているのに、この判決は市民活動にとどめをさしました。
 このような表現の自由の圧殺・報道の自由の抑圧の状況下のもと、自民党から正式に改憲草案が示されました。
 今時、自民党の憲法改悪草案に脈々と流れているものは、

  1. 象徴天皇から天皇の国家元首化
  2. 愛国心と国にたいする忠誠
  3. 国民主権ではなく、国家主権
  4. 権利の矮小と国民の義務の拡大
  5. 自助努力(女性の寝たきり老人の介護)

である。
今の憲法の精神は“弱気を助け強気を挫く“です。憲法は、国家に対し「守れ」と要求しているもので、”国民“に対してではありません。憲法99条に明確にそのことが示されております。天皇・国務大臣・国会議員・裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し養護する義務を負う。と
今の憲法には、国民の権利ばかりで義務が少なすぎると自民党を初めとする改憲論者は発言しておりますが、権力を持たない弱者には権利が必要です。だから「国民の権利」がたくさん書いてあるのです。
 例えどんなに素晴らしい人柄の人物が権力者になったとしても、人間の心とは弱いものです。耐震偽装事件の姉歯秀次・エイズ非加熱製剤の安部英、みんな根っこは同じです。いったん権力を握ったら、暴走しないとは限らないのです。国民が国家に対し「暴走するな」と命令しているのが憲法です。くりかえしますが、立憲主義の一番大切なポイントは、「国民の権利・自由を保障すること」であり、そのために「権力者を拘束すること」なのです。
 今回の自民党改憲草案は、解釈改憲で改憲してきた現実を追認させ、国民の権利を奪い、国・権力の濫用を自由にするものです。とても立憲主義に基づいた憲法とは言えません。

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 準備書面(1)  59年の「砂川事件大法廷判決」のなかで、”一見きわめて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであって”のくだりがあります。また、「新しい憲法の話」の中の46ページに、『裁判所は、国会で作った法律が、憲法に合っているかどうかしらべることができるようになったことです。もし法律が、憲法にきめてあることにちがっていると考えたときは、その法律にしたがわないことができるのです。だから裁判所は、たいへんおもい役目をすることになりました。』と書かれております。今の日本は、世界第3位といわれる軍事力を装備しています。世界第3位の軍事力は、誰が考えても憲法違反です。当時は、これほどまで自衛隊が拡大膨張するとは考えられなかったのでしょうが、今の自衛隊が59年の砂川判決時に存在していたなら、”きわめて明白な違憲状態である”と認めたはずです。そのときの司法判断の忌避が、現在の自衛隊の違憲状態を造り上げてきたのです。“違憲状態”を改正するか放置するかは立法の裁量であり、違憲状態の修正は困難であるからといって、違憲か合憲かの判断を忌避すべきでは無いと考えます。少なくとも司法は「新しい憲法の話」の趣旨に則って、将来への禍根を残さない上からも合否の判断をしなければいけないと考えます。是非明確な判断を期待いたします。

 司法は、統治行為論を振りかざし、被告・国の言うところの“主張自体失当”を採用し、私たちの主張を門前払いしてきました。しかしその結果はどうだったでしょうか。当の権力者が、NHKの電波を使い臆面もなく国民の前で“自衛隊は軍隊で憲法違反だ”と言っているでは有りませんか。その憲法違反の自衛隊が

  1. 大義のない戦争
  2. 戦地への派遣
  3. アメリカ軍の兵隊・軍備の輸送の下請け
  4. イラクに要請されて無いのにアメリカの要請で派遣
    注:現在の自衛隊駐留をイラク政府は要請しているが、
      傀儡政府でありイラク国民の民意の反映ではない

という、全く国民を愚弄したやり方でイラクに行っているのです。おかしいでしょう。
少なくとも司法は「新しい憲法の話」の趣旨に則って、将来への禍根を残さない上からも合否の判断をしなければいけないと考えます。是非明確な判断を期待いたします。

 最後になりますが、政府の中枢の人や・自民党の改憲論者は、今の憲法は押しつけられた憲法だから改憲する。といいますが、本当に押しつけられたのは自衛隊です。
 準備書面(7)でそのことははっきり述べております。
何故押しつけられた自衛隊は、解散するとはいわないのでしょうか。その押しつけられた警察予備隊でさえ、「憲法を守る」と宣誓させておりました。しかし今の自衛隊員には、憲法を守るとは宣誓させておりません。『法律を守る』と宣誓させているのです。
 今度の自民党の憲法草案には、『自衛軍は、法律の定めるところにより活動出来る』となっています。これでは政権党が、“武力行使をしない“という憲法を無視していかようにも運用できる。また、治安を目的に法律を改定すれば、いくらでも殺人兵器を国民に向けることができるのです。いかに権力者が自分の好きなように憲法を蹂躙してきたか、また好きなように改訂しようとしているかがよく分かる事例である。先の総選挙では、政権与党は過半数の支持を得られませんでした。しかし議席数は2/3を越えました。国民の半数以上は政府の方針に賛成していないのです。しかし政府は数をバックに意のままに法律を改正してゆくし、これからも国民をだまし続けるでしょう。
 ここまで来ても司法はまだ口を閉ざすのでしょうか。

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イラク派兵違憲訴訟の会・東京
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