1)「納税者の権利宣言」
1986年に社団法人自由人権協会は「納税者の権利宣言」を 発表した。担当理事は北野弘久であった。宣言は7項目の権利を宣言し、4番目の権利は〔租税の徴収の仕方と使途等を統制する権利〕となっているので、その項を引用する。
- すべての納税者は、憲法及び法令に適合しない不公平な税制及び 税務行政について、裁判所に対し、その違法の確認等を求める権 利を有する。
- すべての納税者は、租税が憲法及び法令に適合しない手続きまた は目的により支出されたときは、直ちに裁判所に対し、当該財政 支出の停止を求め、または当該財政支出に対応する自己の納税義 務の排除を求める権利を有する。
2)「北野税法学の特徴」
上記の宣言を担当した北野弘久は税法学会で著名であると同時に、良心的軍事費拒否訴訟等で裁判所も既にその学説は知るところと思われるが、次の如く分析する学者(小山廣和)がいる。
1:憲法論的税法学
2:納税者の立場に立った税法学
3:法社会学的税法学
4:「行動する学者」の実践的・創造的法理論
3)北野説の学風
「--思えば、微力ながら私の税法学の研究生活はすでに30余年になる。もっとも、初期の数年間は、実務界にあって税制の調査・企画・立案事務や税務行政の一端に関与しながらの研究であった。学会に転じて本格的な研究と教授の生活に入ってから計算しても、すでに20年を経過している。その際の私の研究思考は、一貫して、研究室で抽象的にあれこれ考えることよりも体(カラダ)全体で体験的に実践的に考えることにウエイトが置かれた。各方面から、現実に生起するさまざまな問題に対して、先取り的に創造的に法理論的な解決を早急に示すことを要請されたからである。そのような問題の性質上、多くの場合、私の目の前には当該問題に対する回答を示唆する文献等は、ほとんど存在しなかった。たとえば、一つの訴訟を提起するにあたって、まずどのような法論理構成が可能であろうか、から『試行錯誤』的に思索するよりほかに方法がなかった。」(『サラリ−マン税金訴訟』の「序文」ヨリ 1985.11)
◇原告はこれまでに「納税者基本権」の判示を数度受けている。しかし、判決には納得し難く、納税者の権利無視がはなはだしい。
本件訴訟の自衛隊イラク派兵に使用される16年度予算は135億円・予備費99億円と聴き及ぶ。原告は血税が鐚(ビタ)一文でも違憲行為に使用されることに耐え難き苦痛を感じている。原告への人権侵害には「納税者の立場に立った税法学」が必要であり、時代は「憲法論的税法論」「実践的.創造的法論理」を要請していると考え、再々度、北野説を主張する。参考著書は『納税者の権利』岩波新書と『納税者基本権論の展開』三省堂を参照。