第1回 口頭弁論 原告陳述書
2004年6月25日
東京地方裁判所 民事第43部 御中
原告 石川 文恵
下記の通り、陳述します。
1 子どもにも説明がつかないイラク派兵
私には、中学生と小学生の2人の息子がいます。現在中学3年の長男が小学6年の時、社会科で日本国憲法の学習をしました。当時のノートを開くと「憲法→平和主義→戦力を持たない」と書いてあります。今でも思い出すのは、その時学校から出された宿題です。内容は、「世界の平和のために、日本ががんばってやっていること」を調べてくることでした。そのことを、息子にたずねられた私は「う〜ん、難しいな、何だろう」と、改めて考え込んでしまいました。その時の日本は、テロ特措法によって、アメリカのアフガニスタン攻撃の手伝いをしていました。
「憲法9条の中身をきちんと守り、育てていくこと」かろうじて、私は息子にこう伝えました。
現在、実施されている自衛隊のイラクへの派兵は、戦争放棄を決めている憲法第9条に違反する行為ですし、いわゆる「イラク特措法」にさえも違反しています。素人でも、また子どもでも明らかに違憲違法とわかることが、次々と既成事実として積み重ねられ、なし崩し的に平和憲法の根幹が破壊され、武力優先の世の中へと突き進む現状は、耐えがたく、看過することができません。数々の憲法破壊行為がまかり通る今の日本は、法治国家といえるでしょうか。私が今回、訴訟を起こそうと決めた最大の理由が、これです。
自衛隊のイラクへの派兵について、被告(国)が違憲、違法でない、つまり、合憲、合法であると主張するのであれば、そのことを、子どもにも納得いくように、わかりやすく立証していただきたいです。立証責任は、被告(国)側にあると思います。
子どもは、大人が考えているよりも、世の中の動きについて鋭い感覚を持ち合わせています。昨年12月9日、小泉首相が自衛隊のイラク派兵の記者会見をしました。その時、当時小学5年の二男とテレビで見ました。小泉首相は、くり返し「戦争に行くのではない。武力行使はしない、人道支援、復興支援のため」と力説しましたが、息子は心配そうな顔で、ただひと言「戦争に行くの?」と私にたずねてきました。
難しい理屈もわからない子どもは、それでも鋭い感覚で、その小さな胸を痛めています。親として、大人として、本当に申し訳ない気持ちです。青少年による生命を傷つけるような事件が起こるたびに、「生命を大切に」「暴力はいけない、対話を大切に」などと大人はすました顔で言いますが、このうさんくささほど子ども達が嫌がることはありません。「正義のため」「国益のため」と大人は、まことしやかな理屈を千も万も並べたて、要は人と人の殺し合い(もしくは、一方的な人殺し)でしかない「戦争」を肯定してしまいます。学校では道徳の授業で「生命の大切さ」を学んできても、夜、テレビのニュースでは「戦争で○人死んだ」です。子ども達にとって「ちゃんちゃらおかしい」のです。「建て前と現実は違う」ということを、毎日これでもか、これでもかと、大人がよってたかって子ども達に教え込んでいます。私は、この現状を変えたいと思っています。2 テロのターゲットにされる恐怖
自衛隊のイラク派兵により、日本がテロ攻撃を受ける可能性は飛躍的に増大しました。4月に起きたイラクでの日本人に対する人質・拘束事件は、自衛隊のイラク派兵がなければ起こらなかったはずです。5人は、無事に解放されましたが、自衛隊がイラクにいる限り、同じような事件は再び起きます。先日は、日本人ジャーナリスト2人が、惨殺されてしまいました。日本人がテロのターゲットにされるようになってしまった責任を、小泉首相はじめ政府の方々にとっていただきたいです。
もちろん、日本国内においても、テロの危険性がかつてないほど増大してしまいました。アルカイダが名指しで日本の首都東京を攻撃すると言っているというニュースなどを耳にすると、心が凍りつくほどの恐怖を覚え、夜も眠れなくなります。スペインでは列車がねらわれ、大勢の市民が生命を落としたといいますが、これはもはや、他人事ではありません。去る5月20日、小学6年の息子は社会科見学で国会へ、5月27、28、29日には中3年の息子は修学旅行で新幹線に乗って京都・奈良へそれぞれ出かけ、無事帰って来ましたが、とても心配でした。
「まさか、テロに会わないよね」と親同志の会話にも出てきます。社会科見学の行き先を東京以外に変更してほしかったのですが、無理でした。小泉首相に言わせると、こういう場合、「行き先を変更すると、テロに屈したことになる。テロに屈してはならない」となるのでしょうか。しかし、それで万が一、テロに巻きこまれてしまったら、「東京都心は危ない」とみすみすわかっていて自ら出かけていったということで「自己責任」と言われるのでしょうか。本日のように、こうして東京へ足を運ぶことは、正直言って、とても怖いです。最近は極力、東京方面へ出かけないようにしています。例年ですと、5月の連休中は、都心の車が少なくなるので、よく出かけましたが、もうそういう気持ちは全くなくなりました。公共施設では、ゴミ箱が撤去されたり、飛行場などでは手荷物検査が厳しくなったりと、日常生活の中で不便を強いられる場面が、格段と増えてしまいました。
万が一、テロ攻撃を受けた時、その時点ですでに手おくれなのです。ですから、絶対にテロが発生しないような世の中にすべきです。自衛隊のイラク派兵は、テロの呼び水そのものです。一日も早く、撤退させなければいけません。テロが起きてしまってからではおそいのです。
3 子どもでさえ赤面する、
小泉首相のはぐらかし無責任答弁
前述しましたが、去る5月22日、二男は国会議事堂へ社会科見学として出かけ、国の最高議決機関を目の当たりにしてきました。重厚で立派な建物に感動し、「さすが国会だ」と言っていました。ところが、テレビで放映されている国会の様子は、大人はもちろん、子どもでさえ赤面するほど恥ずかしい状態です。特に小泉首相の不誠実なはぐらかし無責任答弁は、一国のリーダーとして、あるまじき行為です。国会に対する、国民に対する、そして、子ども達に対する冒涜です。小泉首相が日本全国の子ども達に与える影響ははかり知れません。子ども達が、小泉首相の答弁の真似をして、物事を真面目に受け取らず、茶化したり、はぐらかしたりすれば、日本全国の小中学校は学級崩壊になります。もちろん現場の先生方は、そうならないよう地道な実践を続けています。
国会が、本来の機能を、正常に働かせられない今、私は、司法の場で、きちんと筋を通さなければいけないと考えます。以上