平成16年(ワ)第6503号 違憲行為差止等請求事件
原 告  石 川 文 恵
被 告  国

陳 述 書

2005年5月26日

東京地方裁判所 民事第43部合議 係 御中

原 告  石 川 文 恵

 サマワでの自衛隊は、今何をしているのでしょうか。その様子は全く報道されず、駐留し続けることだけが唯一の目的であり、任務であることは、明らかです。
派遣差し止めを改めて求めます。

1.自衛隊のイラク派遣が 憲法改悪を先取りしている
  • 4月4日に自民党新憲法起草委員会の要綱が発表され、各新聞に載りました。一読して、まず思ったのは、憲法改定は「改正」でなく「改悪」だということです。
  • 憲法を変えようという話を耳にするたびに思うのは、憲法が変わって今よりも、もっと暮らしやすく一人一人が自分らしく生きていける世の中になるか、ということです。憲法改定によりバラ色の明るい未来が待っているのか、もし、そうなのであれば、こんなにうれしくめでたいことはなく、改憲大賛成です。社会の良し悪しを見きわめるバロメーターのひとつは、その社会が弱者やマイノリティーを大切にしているかどうかだと思いますが、改憲の方向は、残念ながら、そうではありません。
  • そもそも、誰のための、何のための改憲なのでしょう。昨年の冬、新聞の世論調査で改憲に興味・関心のある人は5%にすぎず、80%以上の人達は、年金、介護、仕事とありました。ほとんどの人は、改憲に関心がないにも関わらず、新聞やテレビでは、改憲ムードが高まっていると報じています。誰かが一生懸命に改憲ムードを高めている?いったい誰が?‥‥それは、きっと改憲によって得をする人なのではないでしょうか。「とにかく改憲」「何が何でも改憲」と声高に叫んでいる方達は、どういう人達なのか見きわめたいと思います。
  • そこで、まず「憲法とは何か」素人なりに確認させていただきます。
    近代憲法の歴史をひもとけば明らかなように、憲法とは国民一人一人の人権や自由を守るために生まれたもので、「弱者を、強者の権力から守るための道具」とも言えます。ヨーロッパでは、かつて強大な権力を持つ国王や領主達に、人々が支配され、日々の生活から職業・結婚・宗教などに至るまで、がんじがらめに縛られてきて、市民革命を経て立憲主義という考えが生まれました。国家という権力が暴走して、権力を持たない弱者をいじめないよう、前もって憲法でその権力を制限しておく、つまり権力者の行為を全て憲法に基づかせる、憲法という枠内でしか権力を行使できない‥‥これが立憲主義であり、憲法の存在する意味です。「弱きを助け、強きを挫く」心に満ちあふれています。
    憲法99条には、国家権力者は憲法を守らなければならないと、明示されています。
    権力を持たない弱者には権利が必要です。だから、憲法には「国民の権利」がたくさん書いてあります。憲法は、権利だらけだからこそ、憲法になりうるのだと思います。
  • ところが、「今の憲法は、国民の権利ばかりで、義務が少なすぎる」という批判が、主に第99条の方達(政権中枢の人々)から発せられているわけです。彼らにとって、現憲法は、縛りがきつすぎる、もっと自由にのびのびと権力を行使したい‥‥ということでしょうか。
    しつこくくり返しますが、立憲主義の一番大切なポイントは、「国民の権利・自由を保障すること」であり、そのために「権力者を拘束すること」です。たとえ、どんなにすばらしい人柄の人物が権力者になったとしても、この点は変わりません。人間の心とは弱いもので、いったん権力を握ったら、暴走しないとは限らないのです。国民が国家に対して「暴走するなよ」と命令しているのが憲法です。
  • ですから、4月4日に出された自民党の要綱の内容は、明らかに憲法改悪を目指すものとなります。「個人の尊重」よりも「国家の尊重」「国家権力の強化・拡大」「人権は認めるが、国家のお情け(善政)として認めてあげる」という発想。国家は「個人の領域」に踏み込まないという近代憲法の原理を、自民党の方々は、確信犯的にひっくり返そうとしています。社会的・経済的弱者やマイノリティーにとっては、ますます暮らしにくい世の中になってしまいます。「弱きを助け、強きを挫く」という憲法の心が台無しにさせられます。
  • 憲法第13条「すべて国民は個人として尊重される」は、憲法の真髄であり、目的です。13条以外の全ての条項は、この13条を実現させるためにある(手段、道具)と言ってもよいと思います。そして、国家権力による最大最悪の人権侵害は、戦争(戦争を前提とした社会)です。特に日本は、日本人300万人、アジアの人々2000万人の尊い犠牲の上に“平和憲法”(第9条)を持つに至りました。9条の存在なくして、13条の実現は不可能です。権力の発動の最たるものである戦争、最悪の人権侵害が引き起こされる戦争、それを第9条は全否定しています。(この点において、第9条は、立憲主義をも付き抜け、さらに一歩先を行き、人類普遍の価値を有しています。)
  • さて、自民党の要綱では、9条の2項を全面「改正」し、「自衛のために自衛軍を保持する」「自衛軍は、国際の平和と安定に寄与することができる」と明記しました。
    集団的自衛権の行使については、明記せず、憲法解釈として、容認していくようです。
    自衛隊のイラク派遣という既成事実は、9条2項の改悪の先取りという役割を果たしてしまっています。改悪により、海外派兵のたびに「特措法」をつくらなくてすむ、つまり、「海外派兵を国の常態にするための改悪」です。政府与党は明文改憲を避け、解釈改憲によって、9条2項の空洞化を進めてきましたが、自衛隊のイラク派遣はその決定打とも言うべき、最悪の既成事実になりつつあります。9条2項を変えて、武力を持つことを正式に認めてしまえば、イラクでの自衛隊の活動も、今のようなわけにはいかなくなります。アメリカと共にファルージャなどの攻撃にも参加するようになり、日本人が武力によって殺し殺されるようになります。派遣の差し止めを改めて求めます。
2.劣化ウラン弾による自衛隊員の被爆
  • 14年前の湾岸戦争のとき、アメリカと多国籍軍は850トンの劣化ウラン弾を使い、広島型原爆の14000〜36000倍の放射能がイラクにばらまかれたと言われています。
  • 劣化ウランとは、核分裂反応を起こしやすい原子力発電や核爆弾の原料となるウラン235を抽出する過程(濃縮)で残ったウラン238を主成分とする「核のゴミ」のことです。「核のゴミ」は、放射性核廃棄物として残り、半減期が45億年です。(日本の原子力発電所で使われているウラン235の原料も、実はアメリカに委託して製造されている。日本の核のゴミが劣化ウラン弾に転用されている疑惑は濃厚。)ウラン238は、放射性同位体として人体に有害な放射能を出すだけでなく、重金属としての特性と化学的毒性も兼ね備えています。
  • 劣化ウランは比重が高く、その特性を利用して、つくられた劣化ウラン弾は、装甲車の厚い鋼鉄をも容易に貫通します。その際、衝撃で高熱を発して燃焼し、直撃を受けた人は、瞬時に炭化してしまいます。さらに燃焼と同時に、0.001ミクロン〜0.1ミクロン単位の酸化ウランの微粒子となって、周囲に大量に放出され、拡散します。広範囲にわたって、大気、土壌、地下水(劣化ウランは、水溶性がある)を半永久的に汚染し続けます。大気から肺に吸収されたり、汚染された土壌の作物を通じて、体内に取り込まれたりします。劣化ウランは一度体内に取り込まれると、アルファー線という放射線を出し続け、低線量被爆を通じて細胞や遺伝子を破壊・変容させ、癌、白血病、リンパ腫、遺伝子異常、先天性異常児出産を発生させ続けます。
  • 14年前の劣化ウラン弾の後遺症は深刻です。最も被害がひどいイラク南部の都市バスラでは、戦争前に比べ、癌10倍、白血病4.5倍、リンパ腺障害9倍、子どもの悪性腫瘍3倍、奇形児の多発など、イラクの人々を苦しめています。湾岸戦争後の経済制裁によって、薬をはじめとして様々な物の不足で、子ども達はすでに60万人以上が生命を落としています。そして、「湾岸戦争症候群」として知られるように、イラクから帰国した米国兵士にも、同様の深刻な後遺症があらわれています。
  • 2年前のアメリカによるイラク戦争では、14年前を上回る劣化ウラン弾が使われま
    した。サマワでも劣化ウラン弾が使われ、すでにオランダ軍兵士が発見し、オランダ政府の照会に対して、アメリカ政府も「サマワ周辺の数箇所で、使用した」と認めています。そして、サマワ市内で強力な放射線が観測されました(東京の30〜50倍)。
  • 自衛隊員は、派遣命令によって、サマワの地に出向くわけですが、命令する側は、どれだけの事実を自衛隊員に伝えているのでしょう。石破茂防衛庁長官(当時)は、派遣の際、「放射線が出ていれば自衛隊の活動を中止する」と国会で明言しました。帰国した自衛隊員に今後深刻な健康被害が生じることは避けられません。一日も早い派遣差し止めが求められます。

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イラク派兵違憲訴訟の会・東京
会としては2007年9月 解散しました。
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