平成16年(ワ)第11404号 損害賠償請求事件
原告  片岡顕二
被告  国

意見陳述書

2004年9月3日
東京地方裁判所民事第15部合B係 御中
                   原告   片 岡 顕 二

 訴状の主旨および補足意見を陳述する。
はじめに

 私は1970年から89年にわたり自衛隊に勤務してきた元自衛官です。この18年強の自衛隊生活で私が強く感じ、危惧したことは、自衛隊がこのまま行けば再び他国へ侵略する軍隊になってしまうという事です。なぜそう感じたのか。戦後自衛隊は、日本国憲法のもと、「戦争放棄」「交戦権の否定」の上で、あくまでわが国の防衛を目的として創設されたのは明らかである。その証左として、1954年国会で「自衛隊の海外出動を為さざる事に関する決議」が議員の全員一致で採択されたのである。被告・国が「派遣と派兵」の違いだとか「国際貢献」という言葉のごまかしではなく、はっきりと海外出動はしないと宣言したのである。にも関わらず、今や自衛隊の武器・装備、訓練、教育そして活動までが「海外出動」を前提に大変貌してきた。それも、その時々の政府の独断的憲法解釈によって、たった一握りの閣議決定やその場しのぎの「特措法」「海外出動」を既成事実化してきたのである。そして今、イラクという「戦場」に自衛隊が派兵されているのである。
 私は、寝食をともにした仲間である自衛官を、再び「殺し、殺される」戦場に狩り出させたくはない。自衛官の命が左右される事態は、派兵された他国の民衆の命はもちろん、私たち日本に住む人々の命に直結する問題でもある。

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訴状の補足意見
 自衛隊のイラク派兵の違憲・違法性は訴状のとおりであるが、現在イラクに展開している多国籍軍としての自衛隊派兵の法的根拠を、被告・国は明らかにすべきである。
 現在イラクに展開している多国籍軍は、6月の新たな国連安保理決議第1546号に基づいて編成された軍事組織である。被告がいう「同じ活動をするから問題はない」として「イラク特措法」をそのまま適応させる事は許されない。「イラク特措法」の目的第1条ではこう記述されている。

 (目的)
第一条 この法律は、イラク特別事態(国際連合安全保障理事会決議第678号、第687号及び第1441号並びにこれらに関連する同理事会決議に基づき国際連合加盟国によりイラクに対して行われた武力行使並びにこれに引き続く事態をいう。以下同じ。)を受けて、国家の速やかな再建を図るためにイラクにおいて行われている国民生活の安定と向上、民主的な手段による統治組織の設立等に向けたイラクの国民による自主的な努力を支援し、及び促進しようとする国際社会の取組に関し、我が国がこれに主体的かつ積極的に寄与するため、国際連合安全保障理事会決議第1483号を踏まえ、人道復興支援活動及び安全確保支援活動を行うこととし、もってイラクの国家の再建を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的とする。

 いわば、イラク戦争を仕掛けたアメリカによるイラク占領当局の呼びかけに応える形で、占領軍(有志連合軍)として自衛隊を派兵させるために成立させたのが「イラク特措法」である。そのイラク占領当局が解散し、占領軍の編成が解かれた時点で、当然「イラク特措法」の効力は失っているはずである。その後、新たな国連安保理決議で治安維持を目的に編成された現在の多国籍軍に、自衛隊を参加させる法的根拠は何もないと言わざるを得ない。

 さらに、イラクの現状と自衛隊の活動の実態を検証すべきである。その事によって、自衛隊のイラク派兵の違憲、違法性はより明らかになる。
 連日報道されているように、イラクでは毎日毎日住民はもとより多国籍軍にも多数の死傷者が続出している。その状況下で、2名の外交官とフリージャーナリストが殺害され、自衛隊の宿営地にも連日迫撃砲の攻撃を受けている。誰が見ても、イラク全土、自衛隊の活動地域は戦闘が継続されており、まさに「戦闘地域」である。「イラク特措法」の基本原則さえも満たさない違法行為である。
 さらに自衛隊の活動実態も、被告のいう「人道・復興支援」が目的ではなく、「イラク特措法」にある「安全確保支援」、いわば軍事的にいう「兵站支援」の任務が中心である事は、編成、装備、人員的観点からいっても明らかである。戦争や戦闘行為の遂行は、戦闘部隊と兵站部隊の一体化が必要不可欠であり、これは軍事的常識でもある。
 このように、多国籍軍に参加している自衛隊の活動はまさに違憲・違法な軍事活動であり、被告は直ちにイラクからの自衛隊撤退を行うべきである。

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被害法益について
 訴状のとおりであるが、私は、ボランティアで「米兵・自衛官人権ホットライン」という、米兵や自衛官とその家族の方からの相談を受ける市民運動に関わってきた。この「ホットライン」に寄せられた自衛官やその家族の方の悩み、戸惑いは、被告の違憲行為に翻弄される当事者の「命の叫び」である。
 憲法の第11条で は、基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、保障されている。被告の違憲行為である「戦場=イラク」への派兵は、私たち一人一人の「基本的人権」を侵すものである。 平和的生存権は脅かされ、個人よりも国家が尊重される雰囲気、生命・自由・幸福追求の権利もままならない状況である。
 私たちが納めた税金が、自らの首を絞める政策に使われる事に、深い憤りと耐えがたい精神的苦痛を感じる。
 被告・国は速やかに違憲行為を止め、自衛隊の即時撤退を実施すべきである。


おわりに
 自衛隊のイラク派兵は、ただ単にイラクに対し日本がどう対応するのかの問題だけではなく、これから50年、100年後の日本をどのような形にしていくのかが問われている。
 戦後半世紀以上日本は、戦争の悲惨さ、残虐さを学び二度と戦争はしない、させないと誓い、「戦争放棄」を国是としてきたはずである。憲法の下で、軍事力によらない外交政策で中東やアフリカ、アジアなど世界各国と付き合ってきた。それによって、中東の民衆は親日的であり、「尊敬の念」さえ抱いていたのである。しかし、被告は自衛隊の「戦場=イラク」派兵によって、その「歴史的財産」を自ら捨て去り、日米同盟による「砲艦外交」へと一気に舵を切ったのである。その結果が、民間人5名がイラク住民に誘拐・拘束、外交官2名が殺害され、ジャーナリスト2名も襲撃、殺されるという惨劇が起こったのである。
 もはや一刻の猶予も許されない状況であり、裁判所は憲法判断を回避してはならない。次の時代、子供や孫たちの時代に、私たちがどんな日本の姿、ビジョンを残していけるのかが問われている。
 司法・裁判所の公正な、毅然とした態度での判断を願うものである。

以上

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イラク派兵違憲訴訟の会・東京
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