平成16年(ワ)第8903号
違憲行為差止等請求事件
原告 田中良子
被告 国

2005年3月25日

意  見  陳  述

東京地方裁判所民事第1部合議2係御中

原告 田中良子

 私の2004年4月22日の提訴に対して2004年9月10日付で被告の国から初めて準備書面を受取りました。びっくりしました。なぜならそこには「平和的生存権及び幸福追求権は国民個々人に保障された具体的権利とは言えない。」又、「自衛隊のイラク派遣それ自体は原告に向けられたものではなく、原告の法的利益を侵害するということはおよそあり得ない。現実に侵害が発生したことについて主張していない。」と書かれているのです。何十回も読み返しては、ますます国民の一人として心外やるかたない思いで一杯になりました。国が国民の権利をこのように扱っているのだとしたら、到底納得などできないと私は思います。憲法を読んでこのように思っている国民など今までに私は出会ったことがありません。この被告の考えを知って、本当にこれで国民はよいのかを本気で問題にしていかなくてはと思っています。勿論この裁判に於いては私は準備書面によって対応を続けています。しかしごく一般の国民の素直な思いとして、もしこの被告の国の主張するような法律論が裁判で認められるとしたら、日本の司法は国民とはあまりにも遊離したものになっていると感じます。

 私は日本国憲法を法律の基本と信じて、今、国がこの憲法に違反していると主張しているのです。自衛隊は重武装でロケット弾の攻撃を受ける所に出向いて行っているのです。戦うためでなく復興支援だと言うのですが、この戦闘地で殺されたり殺したりすることはないと言えるのでしょうか。自衛隊がイラクに派兵されていることが理由で殺されて犠牲になった人がすでに出ているのです。自衛隊の派兵は国民の一人でもある原告に向けられたものではなく、原告の法的利益を心外するということはおよそあり得ないと、私の分まで勝手に言うのですが、憲法第19条の思想及び良心の自由は著しく侵害されています。非戦平和思想と良心の自由は一国民として国の憲法違反でおおいに痛めつけられ特に良心は踏みつけられるに等しい体験を日々重ねています。

 私はこの裁判は国を構成している国民一人一人が国民としての権利を憲法によって主張し、再確認しようという重大なものだと思って提訴をしています。まともに憲法裁判として取組むことをせず、これまでの都合のよい判例を並べ、却下を主張する被告の在り方は承知出来ません。大きな断層のようにみえる国民と国のこの隔たりを何とか心を感じ合えるような裁判にしたいものです。たとえ短い時間でもこうした意見陳述の機会をつくって聴いて下さる裁判官、書記官の方々にホッとします。ここに居るのは皆、人間であり、感情も心もある人間がその知恵をもって過ちをただし、生命が大切にされるよう努力を共にしようとしているのだとそう私は信じたいと思っています。

 こうした法廷は不慣れでなかなか思うように主張がのべられずもどかしいばかりです。しかし私は真剣です。60年間、憲法のおかげで、戦争によって人を殺さない、殺されない国であったのが、ここで変えられてはならないと思います。NHKのテレビでイラクに出兵したアメリカの兵士達が精神を病むその悲惨な姿をみて本当に大変なことだと思います。罪もない市民を殺してしまったことへの魂の悶えに苦悩する青年に心痛みます。ベトナム戦争のときもこうした苦しみを回避するために兵士たちは麻薬を使い遂いにアメリカ社会の深刻な問題になりました。当たり前の人間であったら、人を殺すこと、いつ自分も殺されるかも知れない不安と恐怖の緊張に気が狂ってしまいます。なぜにこの人間の罪深い行為にわざわざ日本の自衛隊は加わるのでしょう。出兵することは憲法違反です。日本がなすべきは、平和憲法をもつ国として非武装、非戦の平和な社会を実現する努力とこの憲法の理念を世界にひろげて行くことでしょう。

 憲法に書かれていることを素直に読めば、戦争を二度としない、一切武器は持たない日本であって、自衛隊などは災害救助隊であるべきなのです。戦闘的兵器などもったら偽りになります。ブルドーザーや輸送用のヘリコプターでよいのです。冷戦などという大国がつくり出した構造下で、軍拡競争なるものは止まることがないのです。国防費の名のもとに自衛隊が所有する兵器はもっと教育や福祉のために使うようにしたいものです。憲法によれば国を守るのは兵器によらず諸国民の公正と信義に信頼することによって達成する道を日本は決意したのです。今、憲法の生命を奪い、骨ぬきにし、再び戦争をする国に日本を逆もどりさせてはならないと、私は必死になっています。

 イラクで起っていること、紛争のアフリカ諸国で起っていること、人が人を殺すその残忍さをテレビで見る度に、日本を武器をもつ国、海外に派兵する国にしては絶対にいけないと思うのです。私はどこまでも憲法によって保証されている国民の権利として、イラクへの自衛隊派兵は違憲であると主張します。戦争をする国になった時、その国の国民の生きる権利は守られないのです。イラクをごらんなさい。米国をごらんなさい。イラクへ派兵している国をごらんなさい。戦争では人の生きる権利は守られないのです。日本は戦争をしない国であるという憲法をもっているのです。これを失うことをしてはなりません。失ってはならないのです。私の提訴したこの裁判がしっかりと憲法に基いをすえ、人の生命を最重要視する裁判として本気に行なわれることを心から祈りつつ、意見陳述をさせて頂きました。

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イラク派兵違憲訴訟の会・東京
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