陳 述 書

本多 二朗

 訴状を東京地裁に4月14日に提出し受理されたが、作成から提出、裁判出頭にいたるまでの間にも、事態は最初から憂慮した方向へどんどん進展しているので、それに対する私見を申し述べたい。

 ならず者国家、ブッシュのアメリカはファルージャで数百人のイラク人を殺し、さらに殺戮を継続している。当然イラク国民は怒り、アメリカにとってのベトナム戦争再現の悪夢が広がりつつある。そしてついに恐れていたように邦人三人を人質とする誘拐が起こった。

 その時、小泉首相はどうすべきか。「人道主義」を標榜するなら、邦人誘拐犯が「日本軍をイラクから撤退させよ」というより前に自分の判断で「大量殺戮のようなひどいことはするな」とブッシュに忠告すべきであるのに、それはやらない。そして拘束された邦人の家族が小泉首相に会ってお願いしたいと望んでも、話を聞くことさえ断った。やりたくないことをやれといわれると、布団をかぶって知らぬ振りをする。幼児なみの幼稚さである。人質をとられたから撤退するというのはみっともなくてできないのなら、スペインのように派兵反対の野党に政権交代すればいい。昨日の新聞によれば、早期解放を訴え続ける家族のもとへは「誘拐されたのは自業自得だ」といった嫌がらせの電話や手紙が相次いでいるという。人の災難をあざ笑うような嫌な奴らが日本人の中にもいるということだが、政府としては「危険な場所へ行ったのは自分の判断だから、自業自得だ」といずれ言い出すだろうと私は思っていた。イラクを「危険な場所」にしてしまったのがアメリカとそれに追随する日本であることを棚に上げて、善意のボランティアたち自身に責任をかぶせる逃げ口上である。さすがに政府も自分でそれを言い出すことは気が引けるのか、自民党の手下を使ってそれを言わせているのではないか−私にはそんな気がする。人質救出については「アメリカに頼んで救出に全力をあげる」と小泉首相はいっていた。アメリカの軍隊にドアを蹴破って民家をしらみ潰し捜索してもらいたいというのか。正気の沙汰ではない。邦人救出策としてアメリカに頼むのなら「イラクから撤退してくれ」ということしかないだろう。

 イラク派兵違憲訴訟の私の訴状は2004年4月14日に東京地裁に提出し受理された。その日の午前中に「そろそろ東京地裁へ出かける用意をしようか」と思いながら服を着替えていた時、テレビを見てびっくりした。何かの番組で違憲判決についてテレビ局の人と対談していた出演者(検察出身のよく見る顔でいつもだいたい妥当な意見をいう人という印象を私は持っていた)が「裁判所は違憲判決など出してはいけない」といったからである。その理由として「政治家は選挙を経て選ばれたものだが、裁判官は最高裁長官から任命されたものであるので、政治のすることに対して裁判所が違憲判決を出すなどとんでもない」という。「えっ、この人はこんなことをいう人だったのか。それなら憲法違反の政治が行われた時には、だれがそれを正せるのか。司法、行政、立法の三権分立とは一体なんだったのか」という感想が浮かんだ。この番組はチラッとそのやりとりを視聴しただけだが、たぶん小泉首相の靖国神社参拝に関して意見を述べたものだろうと思う。靖国参拝違憲判決が出たあとでも、小泉首相は「私はこれからも参拝しますよ」といっていたのは、そういう背景があってのことなのか。しかし、法律違反を指摘した裁判所判決にも従わないということが認められるのなら、私も今後そうすることにしよう。最近、ろくでもない法律ばっかりつくられ、腹が立って仕方がなかったところへ、総理大臣がいい手本を見せてくれたのだから。これは強出席された法務局の方には被告の代表になっている野沢法務大臣にぜひ確認して頂きたい。

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 その後すぐ出版された「週刊新潮4月22日号」では横浜地裁判事、井上薫氏の『やっぱりヘンだよ「靖国参拝」蛇足判決』という論文が掲載された。その論旨は「政治の場はどんな意見を述べても必ず反対論者からの反論を浴びる世界であり、下手に口を出すと司法が政治からの反動を受ける。裁判の独立を守るためにも政治的な動きに巻き込まれてはいけない」という情けない論文である。この論法でことが進められれば、どんな変な政治が行われてもチェックする手段はなく、政府のやりたい放題ということになる。立法の精神に照らして判決を下すことなど考えず、ひたすら保身を願う。裁判を小心者のルーチンワークにしたいのか。私なんか、こんな論文を自分が書いたとしたら、恥ずかしくて外を歩く気になれない。

 週刊新潮のこの号では「人質報道に隠された本当の話」というテーマでイラク撤退要求運動に対する悪口雑言特集も組まれていた。「人質は自己責任だから救出費用は家族負担でやれ、国の税金を無駄遣いするな」というのもあった。そういう意見は人質家族の家へも殺到したと新聞報道されていた。しかし、税金の無駄遣いというのなら、国際的に認められていないアメリカのイラク侵略に加担して小泉首相が国庫から支出した金額は、この時点での自衛隊派遣だけの費用でも377億円と聞いた。「人質は自己責任」という論者は奇妙なことに、ブッシュが嘘をついて始めた大量虐殺に一言も触れようとしない点で共通している。自民党本部が自爆テロに襲われたような場合には、自民党が自分で原因を作っているのだから「自己責任、自業自得だ」というのは、日本語の使い方として正しい。その時には私はそういってやるぞ。イラクで拘束された3人は子供の救済のためなどに出かけ、イラクの子供たちから愛され、人質になった身の上を心配されていた。拘束されたのは政府自民党の政策のせいであり、釈放されたのは人質自身にイラク人から恨まれる責任がないからであった。「自己責任」論の大合唱はピンボケもいいところである。まあ週刊新潮の特集は御用評論家の姿をあぶりだしてくれた。4月16日朝、ここまで書いたあと朝刊を見たら「人質3人解放」の横二段カットが躍っていた。良かった。しかしまた、ジャーナリストら2人が新たにイラクで拘束された。

 イラクへ派遣された自衛隊はアメリカ軍などとは違って住民との付き合いにずいぶんと気を配ってはいるようだが、それでも現地の住民は「占領軍には(日本の自衛隊も含めて)出て行ってもらいたい」と大多数が望んでいるようだ。自衛隊はもう帰国すればいいではないか。ブッシュの面子に義理立てする必要はない。こんなバカな戦争で無駄死にすることはないから、自衛隊員は帰国願いを出したらいい。

 4月17日の朝日新聞朝刊は、人質3邦人の解放に影響力を発揮したイスラム宗教者委員会の広報責任者アルクベイシ師が「我々の努力を日本人の多くが評価してくれている。しかし、日本政府はそうではないようだ」と不快感を示し、解放が遅れた一因は日本政府の対応にあるとも語ったと報じている。同日のテレビでもこの人のそういう話が放送された。

 自己責任を理由に報道関係者に対しても「そんな危ないところへは行くな」と報道自粛を求めるような風潮が高まっているが、日本ビジュアル・ジャーナリスト協会が16日、人質事件を考える緊急集会を開いた場で、こうした風潮に対しては「被害者の側に立った報道ができない」「日米政府にとって都合の悪い実態が隠されてしまう」などと反論の声が相次いだと報道されている。

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 自己責任論で人質非難のあふれる日本の御用ジャーナリズムと違って、仏紙ルモンドは今回の人質事件について「軽率で無邪気すぎるかもしれないが、ネクタイ・スーツ姿と夜遊びギャルの間に、激変する社会に積極的に関わろうとして、外国まで人助けに行こうという世代が日本に育っていることを世界に示した」と好意的な見方をしている。

 4月18日朝刊で新たな人質2人も解放されたことが報じられた。二人の解放もイスラム宗教者委員会のアルクベイシ師の力によるものだが、同師は日本の上村駐イラク臨時代理大使が17日夕バグダッド市内のイスラム宗教者委員会へ解放された2人を迎えに行った時、「私たちは日本国民ではなく日本政府を責めているのです。自衛隊をイラクに派遣したことで憲法に反する行動をとったからです」と話したとロイターテレビは報じている。日本人でも外国人でも、憲法をすなおに読めば、今回のイラク派兵が憲法違反であり、日本政府の解釈がそれを曲解していることはすぐ判断できる。だが、この日朝のNHKテレビ討論に登場したある評論家は「こんどの釈放の裏では日本政府がいろいろと打開に努力しそれが実を結んだと思いますよ」と発言した。アルクベイシ氏が「日本政府はなにもしなかった」といっているのにである。こういう人でないとテレビには出してもらえないのであろうか。

 4月18日夕、帰宅してテレビのスイッチを入れたら小泉首相が写っていて、例の突っかかるような調子で声張り上げて「イラク復興はアメリカがやるのではない。・・・イラク人自身がやる気にならなければできない。私たちはそれをお手伝いするのです」と叫んでいた。「おっ、この人言うことが変わったな」と思ったが、考えてみればそれまで単独行動主義だったアメリカがイラク人の抵抗で行き詰まって、とうとう国連主導に方針転換したばかりだった。すると小泉首相もそれを口写しして国連主導を口にしただけのことである。まあ、いいことではあるが。「単独行動主義のアメリカに追随するのでなく、復興に協力するにしても、国連主導の下でイラク人の要請に応えて民間人を派遣すべきであり、自衛隊の海外派遣はやめよ」ということを私たちは当初から主張してきたが、ブッシュ氏が国連主導に転換しなければ、小泉首相はお預けを食った犬みたいに、いつまでもアメリカ主導にしがみつく態度を変えなかっただろう。政府閣僚のうち小泉首相を含む何人かがいろいろな場所で「国連は何もしてくれない。やってくれるのはアメリカだ。日本はアメリカに頼るしかない」と発言したことを私は記憶している。アメリカ追随方針の転換はいいことだが、それが本気ならアメリカに追随した自衛隊派遣をやめて帰国させるべきなのに、それは実現していない。アメリカの方針転換は実は「アメリカは自分のやりたいようにやるから、国連もアメリカを手伝え。そのお墨付きを出せ」という虫のいい注文であり、イラクに居座り続けて命令は自分が出すというのだから話にならない。そして日本政府はそれに追随しているようである。派兵するのもそれを帰国させるのも、何でもアメリカがやる通り。ブッシュの三下だからね。

 4月19日夕刊は、スペイン首相がイラク早期撤退の方針を表明したことを報じていた。「6月末までにイラクで国連に主導的な役割をもたせなければ撤退する」と条件をつけていたが、国連主導が期限内に実現するとは予測できないとしてこの判断にいたったものである。スペインは野党に政権が代わって幸せだ。日本だって立場は同じはずなのだが、小泉首相は「撤兵せぬ」と聞き飽きたいつもの1つ覚え。しかも、前提条件は「国連主導で」とブッシュに追随して変わっているのに関わらず「撤退せぬ」という結論が変わらないから、論理的には支離滅裂である。

 4月21日朝刊、ワシントン・ポスト紙のウッドワード記者が書いたイラク戦争内幕本「プラン・オブ・アタック」が発売されたが、発売前から政府関係者らが記事内容に反論するなど米国内は騒然とした状態になっているという。中でもサウジアラビアの駐米大使との密約暴露は衝撃的だ。イラク開戦をブッシュ米大統領は03年1月に決断、チェイニー副大統領やラムズフェルド国防長官がサウジアラビアの駐米大使をホワイトハウスに招いて戦争計画を説明したら、フセイン政権崩壊を望むサウジの大使が原油価格引き下げでブッシュ政権を支援することを約束したというものである。この記事の隣のページには「イラク、続く撤兵決議」とスペインに続いて中米諸国でも政府批判が高まっている特集が載った。

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 4月22日各紙ではスペインに続き、ノルウェー、ポーランド、ホンジュラス、ドミニカにも撤退の動きが広がったことを報じた。サウジアラビアでは政府ビルが自爆テロで爆破された。ウッドワード記者の内幕告発を知ったあとでは「これこそ自業自得」の感がするが、巻き添えの市民が痛ましい。

 人質家族のもとへ「自己責任だ」「自業自得だ」と匿名の非難・中傷のメールが殺到したことに対して、今度は新聞紙上などで有名人が氏名を名乗っての怒りの反論が噴出した。海外諸国の論調も「自己責任論」にビックリしている。自己責任論など出てくるのは政権与党支持者の頭脳レベルの反映であろう。

 同日、「続・人質報道に隠された本当の話」という特集を載せた週刊新潮4月29日号を読んだ。「人質は元反戦自衛官だった」と私たちから見れば立派な前歴にケチをつける記事▽「米軍急襲直前だった土壇場の3人解放劇」の記事は何をいいたいのかよく分からないが、米軍の急襲が近いという情報を流したので犯人側が恐れて人質を解放したとも読めるような内容で出所は官邸。要するに政府の米軍に対する働きかけが功を奏したといいたいのか。噴飯ものの記事である。▽「共謀説まで出たイラク聖職者協会の怪しさ」の記事は、仲介した聖職者協会がレジスタンス側とグルだったろうと憶測している。▽「イスラム慈善団体が受け取るという身代金」の記事は「聖職者が人質解放の仲介者として慈善団体を指定して寄付させているかもしれない。真相は神のみぞ知る」と、要するに根拠のない記事を逃げ口上つきでいわくありげに言いふらす汚いやり方である。聖職者がレジスタンス側から信頼されていたことは確実だが、新潮社側が疑いを投げかける見解の出所は米軍諜報関係者だったり官邸だったり。時には国際テロ専門家などという大学教授も登場したりするが、この手の人物の言動は前歴を洗ってみればうなづけるだろう。▽「一転家族謝罪で起こった支援団体との不協和音」は、卑劣な非難中傷の殺到で家族が政府に謝罪したら「なぜあんな奴に謝るのか」という支援団体との仲が悪くなったという記事。支援団体は人質の安全を第一に考えているから、人質家族の気持は理解していると思う。▽「3人の帰国会見を仕切った謎の弁護士」は人質の記者会見を仕切った弁護士が「自己責任論を展開する産経新聞社みたいなところへ連れていかない」と会見会場をドタキャンした話。その気持はよくわかる。▽「救出費用20億円なのに自己負担は35万円」は救出のために動いた役人などの出張費に比べて家族の自己負担額が少なすぎるというせこい話。政府は救出に何の役にも立たなかったくせによく言うよ。▽「最後まで自衛隊のせいにした朝日社説」は自衛隊派遣に反対した朝日新聞をののしっている。自衛隊を派遣した政府が悪いのは自明のことではないか。▽「イラク電撃訪問をボツにされた小泉首相の怒り」は、サマワ派遣の自衛隊をゴールデンウィーク期間中に電撃訪問する予定だった小泉首相が人質事件のためにパーフォーマンスができなくなって悔しがっているという記事。あれだけイラク側から信用されていない小泉首相がたとえ行っても何ができるのか。

 新潮社というのは以前から体制側を代弁して巨悪擁護の記事を載せるので、体制側の考え方を知る参考にしてはいるが、同社の記者にはかねがね質問したいと思っていた。「あなた方は何がやりたくてジャーナリストになったの」。私たちジャーナリストは「強きをくじき弱きを助ける」浪花節的心情の持ち主が多く、私もその1人だが、巨悪横行を素知らぬ顔で見逃し、強きにへつらい弱きをくじくマスコミで働く記者はどういう人たちなんだろうと不思議でしようがない。

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 私は新聞社で教育関係の記事を担当している間に大学は何百校も取材したが、親しくなった大学関係者から「マスコミはこちらの言い分を正確に伝えてくれない」という苦情をたびたび聞いた。その際、新聞記者である私に遠慮したのかどうか「新聞の方はまだましだが」という前置きつきで「ひどいのは週刊誌だ。最初から書くことを決めていて、それに合うことだけ取り上げる。いくら一生懸命事情を話しても、自分たちの筋書きに合わない材料には見向きもしない」という。そういう話の時、真っ先に名前が上がるのがいつでも週刊新潮だった。このたびの週刊新潮の特集記事を読んでみると、その言葉がうなづける。人質被害者に対して「費用を自己負担せよ」という世間の風向きには、こんな御用マスコミが煽動したせいもあったろう。

 4月25日のアエラ20号はFBI人質救出チームの元隊長の話として「当然、人質救出部隊が送り込まれたはずだ」という記事を載せている。イラクのレジスタンス側が「人質は日本政府と関係ないことが分かったから返す」といっている時に、アメリカに頼りっきりの日本政府の要請がいかに危険なものであるか。まかり間違ったら悲惨な結末になっていたかもしれないと慄然とした気持になる。

 4月27、28日の各紙によると、イラクで人質となったイタリア人4人のうち1人は殺害されたが、残る3人の生命はイタリアでイラク侵略反対デモが行われるなら解放すると武装勢力側が発表したのに対して、イタリアの与党だけでなく野党にも「テロリストの脅迫に屈してデモはできない」と反対する考え方があり、撤退デモを拒否した。しかし、世界的なカトリック平和運動のNGO「パクス・クリスティ」のイタリア支部は「外国軍によるイラク占領と戦争に反対する理念に基づき、人質を救うために喜んでデモをしよう」と呼びかけ、デモは実現した。イラクに派兵しているポルトガルではサンパイオ大統領がイラク戦争を「国連の承認のない不当な軍事介入に対して歴史が審判を下すだろう」と批判演説を革命30周年記念の国会で行った。イギリスでは元外交官52人が「対イラク政策の根本的見直し」を求める公開書簡をブレア首相に送った。スペイン軍はナジャフ撤退を完了した。

 そんな中でアメリカは全然反省していない。「米軍がクラスター爆弾を使っている」とファルージャの地元評議会使節団が国連事務総長に調停派遣を求めた。アメリカ人4人が殺されたのに対して、イラク人700人を殺し、停戦交渉では武器の引き渡しを要求、「我々はいつまでも待ちはしない。早く引き渡さねば戦闘を再開する」と脅しをかけるアメリカ。イラク人の方こそ「我々はいつまでも待ちはしない。早く撤退せよ」といいたいだろう。ファルージャ住民の証言によれば、米軍はすべての動くものに対して銃爆撃を加え、残虐の限りを尽くしている。アメリカってほんとにゴロツキだよ。

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 日本でも軍隊経験者が「相手を殺さなければ、こっちが殺される」という話をするのはよく聞いた。だから軍隊をつくり戦場に投入したら、殺人はエスカレートする。中国に侵略した日本の軍隊が通過したあとは、軍隊が精鋭であればあるほどゲリラ多発地帯になった。アメリカ軍は腕っぷしが強いから、やっつけられればこっぴどくやり返してゲリラをますます多発させる。絶対にこういう戦争で勝つことはできない。最後はアメリカ軍が雪崩を打って敗走し撤退用輸送機に先を争って逃げ込んだベトナム戦争のような結末になるだろう。アメリカはベトナム戦争の教訓をいまこそ噛みしめて考えてみるべきである。

 軍隊は命令されれば人を殺すのが仕事なのである。止めさせるのは政治の力だが、自分で戦争を始めた政治家がその戦争を止めさせることは全面的自己否定になるのではないかと恐れておそらく不可能であろう。政権交代しか泥沼からの脱出はない。

 そういう事態に陥らないために、戦争放棄の平和憲法をつくったはずだったが、まず自衛隊をつくり「これは軍隊ではない。自衛のための戦いだけに出動するから『自衛隊』なのだ。海外にまで派兵はしない」と長い間政府はいってきた。小泉政権はその留め金を1つ1つ外している。「これは軍隊だ」といい、次は海外へも派兵した。
 イラクの現地事情が悪化して自衛隊員に死者が出たら自衛隊もイラク人を殺すかもしれない。ブッシュ米大統領とブレア首相は殺人犯だが、小泉首相はまだ外交官2人を死なせた過失致死の罪だけで今のところすんでいる。しかし、自衛隊がイラク人を殺したら、この事態を予測しながら派兵した小泉首相の責任になるだろう。彼も間もなく人殺しになるかもしれない。
 連日の報道に対する感想文を延々と続けてもキリがないので、4月で一応終わりにしたが、その後、刑務所収容イラク人への米軍の虐待問題が浮上した。石油利権目当てでは「アメリカ帝国主義」という言葉を思い出したが、虐待問題では太平洋戦争当時いわれた「鬼畜米英」という言葉を思い出した。どちらも該当する面があるようだ。

 フォトジャーナリストの森住卓さんの著書「私たちはいま、イラクにいます」(講談社)が産経の児童出版文化賞に選ばれたが「この戦争を産経はどう報道したのか。日本政府が加担する姿勢を批判したか。こんな賞を受けたらイラクの子供たちに顔向けできない」と辞退された。産経はガマの油のガマのように鏡に己が姿を写してその醜さに脂汗を流したらいいと思うが、自分の醜さが分かるくらいなら、もう少しマシな報道をしていたであろうな。

 もう1つ浮上したのが年金未納問題である。未納に悪気はなく制度の不備が原因であると政治家は弁明しているが、その説明が極めて不十分であり、ろくに説明もないまま、採決してしまう。しかも年金では政治家と役人が一般国民より非常に優遇されているが、優遇の資金は税金を注入しているのだから、制度を改正するのならその辺から平等にしていかないといけないと思う。ところが改正の要点は、国民にとっては掛け金を多く払わなければならないのに受け取る年金額は少なくなる。こんな制度の不合理を改めないでイラク戦争にいつまで税金注入を続けるつもりなのか。弁償しろ。税金なんか払わんぞ、ほんとに。

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 そして恐れていた事態がついに現実化した。フリーカメラマン、橋田信介さんと小川功太郎さんの2人は5月下旬、イラクのバグダッド近郊マフムディヤの幹線道路を北上中、追走してきた車から銃撃され死亡した。5月29日付の朝日新聞夕刊によれば、〈・・・銃撃された4輪駆動車は立ち木に激突して、炎上した。「4人の男たちは顔を隠していなかった。炎上する車に向け、さらに撃ってきた」とヒラル運転手。男たちの言葉が聞こえた。「米国の手先」と言ったようだった。現場で救急車を求めたが誰も手を貸してくれなかった。・・・〉。橋田信介さんはファルージャの戦闘に巻き込まれ失明したイラクの子供、サレハ君の眼を治すことを約束していたが橋田さんの死後、奥さんは夫の約束を実行した。6月4日、サレハ君は治療を受けるために父親に付き添われて来日し、「目はとても痛むけれども体調はいい」と語った。自分の生命をなくしてもイラクの子供を救おうとした日本人。この良心的な人たちが殺される原因をつくったのは小泉と石破である。イラク派兵によって事件の引き金を引いた日本の首相と防衛庁長官はその責任をどう感じているのか。政府は自衛隊派遣に先立って自衛隊員が殉職した場合の弔慰金の増額を決定したが、橋田さんらの死亡に対してはどういう対応をしたのであろうか。

 私の提起した訴訟に対して被告の国は事前に答弁書を送ってきたが、その中で「求釈明 原告は、原告のいかなる法的権利または利益が侵害されたとするものか、明らかにされたい」と言っている。それなら言って聞かせてやろう。「国は憲法に違反して有害無益なイラク派兵を行っている。こんなことに私たちの納めた税金を浪費することをやめろといっているのに、いまだに続けている。これは私たちの法的権利と利益をともに侵害するものである。そんなことが分からんのかアホンダラ」

 6月18日の朝日新聞朝刊の1面に「首相、多国籍軍参加を表明/日本の指揮権、米英了解は口頭」、2面には「多国籍軍『米が指揮』/米国防次官補、議会に文書」という記事が載った。多国籍軍に参加することを小泉首相は早々と表明したが、これはアメリカ軍の指揮下に入り、否応なく戦闘に巻き込まれる恐れがあると懸念する声が出たのに対して「いや、指揮権は日本にあるんだ」と言い訳する。そんな証文をアメリカがくれたのかというと「在英と在米の日本公使が先方の政府の高官から口で言ったのを聞いた」というだけ。ところが当のアメリカでは「多国籍軍はアメリカが指揮する」と国防次官補が議会で証言している。これでも信用しろというのか。

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 さらに同じ新聞の社会面には「タイヤ談合疑惑、全入札不調、随意契約に/03年度の航空機用、3社、意図的か」という記事が載っている。防衛庁発注の航空機用タイヤの入札が不調で随意契約となったのは入札参加の大手メーカーが寡占状態を利用して意図的に入札を不調に終わらせ、言い値で買い取らせ防衛庁と談合した疑いがあるというもの。防衛庁は予算をいっぱいもらっているから、金の使い方は大甘だ。科学技術庁の仕事なんかもうからんから引き受けたくないという企業も防衛庁の注文なら飛びついてくる。そういう状態がこんな談合疑惑を生み出す根源である。国の防衛だ、愛国心涵養だなどといっていると、また防衛庁予算が増えて超大甘の無駄遣いに走る恐れがある。太平洋戦争突入前の日本の軍部の予算が愛国心の旗のもとに増やされていったのと同じ傾向である。

 小泉首相は日本の多国籍軍参加をまずブッシュに約束し、閣議への報告はそのあとにしたというから、政府閣僚も舐められたものである。

 6月22日の朝日新聞夕刊3面でも多国籍軍参加問題を扱っている。3段見出しの記事で「多国籍軍参加・撤退の要件/『一律には言えず』政府答弁書」。これはいつもの通りぬらりくらりと何もいっていないのと同じ政府の態度。続く記事では、イラク駐留米軍のキミット准将が多国籍軍に参加予定の自衛隊は独自の指揮権を持つとの日本政府の見解について「米軍では、大統領が戦場の個々の兵士に指揮権を持つ。英軍や自衛隊もそれは変わらない」と述べ見解を受け入れる考えを示した。ただ、准将は「軍事作戦であれ、平和支援活動であれ、戦場での作戦上の統制は、指揮権と別物だ」と指摘。「参加国が個々の活動について、いちいち本国に(可否を)照会するような仕組みは望まない。これが、自衛隊が多国籍軍に参加する際、われわれが描く姿だ」とも述べている。この記事には「『自衛隊に独自指揮権』/駐留米軍准将が容認発言」と見出しをつけているが、これはごまかし発言にだまされた編集者の誤りで、正確につけるなら「戦場統制は指揮権と別」とすべきである。私かがデスクだったら編集者にそう忠告する。思えば4月14日に私の訴状を提出してからわずか2カ月余、その間にごまかし答弁の積み重ねでなし崩し憲法改正がこれだけ進んだ。
 小泉売国首相、もう辞めろ。

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イラク派兵違憲訴訟の会・東京
会としては2007年9月 解散しました。
ここでは、訴訟の記録を残していきます。
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