平成16年(ワ)第13465号 違憲行為差止等請求事件

意見陳述書

2004(平成16)年10月19日

東京地方裁判所 民事第28部 御中

黒  滝  正  昭

 2004(平成16)年6月24日付けで貴裁判所に標記請求事件に関し訴状を提出した、原告の黒滝 正昭です。本日第1回の口頭弁論の機会に原告として最初の意見陳述を行わせて頂きます。

 私の訴状に対する2004(平成16)年10月19日付け被告の「答弁書」を見ると、私が「請求の趣旨」の第1項で述べた「被告は『イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法』により自衛隊をイラクおよびその周辺地域並びに周辺海域に派遣してはならない。」という訴えも、第2項で述べた「被告は原告に対し金1万円及び本状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」という訴えも、原告の具体的な権利義務ないし法律関係に対し何らの影響も及ぼさない事柄を、「平和的生存権」という日本国憲法前文から取られた抽象的権利を唯一の根拠に掲げ、無理矢理訴訟に持ち込んだものであるかのように歪めた上で、それは抽象的理屈で裁判に値しないと、同義反復を行っているだけです。訴状の趣旨を歪めなければ成り立たないような「答弁」は、答弁として失格です。

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 第一に、「答弁書」3ページでは、上記「請求の趣旨」第1項の「本件差止めの訴え」
「自衛隊のイラク派遣により原告の人格権としての平和的生存権が侵害されることを根拠とするもののようである(訴状7ページ)」とされているが、訴状7ページにはそういう趣旨は全く書かれていない。そこに書かれているのは、被告がさせている自衛隊の活動は、憲法前文に規定された「平和的生存権」に反し、憲法第9条に違反し、自衛隊法第3条1項に違反し、「イラク特措法」にさえ違反するということである。これに対して「答弁書」は一言も答えていない。

 第二に、「答弁書」3〜4ページでは、「イラク人道復興支援特措法に基づく自衛隊のイラク派遣は、原告に向けられたものではないし、そもそも原告の具体的な権利義務ないし法律関係に対し、何らの影響を及ぼすものではない」とされている。これによれば、命の危険を冒してイラクに派遣される自衛隊は、自分たちに直接向けられたイラク特措法に対して国を相手に訴訟を起こしてしかるべきである。被告は、そういう訴訟は「適法」であると、自衛隊に何故説かないのか?

 第三に、自衛隊員は命を懸けさせられるけれども、私たちはその費用を負担させられる。その点でイラク特措法は、間違いなく原告にも向けられているのです。これを見落とすほど被告の「答弁書」は一面的・抽象的になっているので、その主張自体「失当」と言わざるを得ません。

 今回の自衛隊イラク派遣は通常の予算に基づく自衛隊の通常の活動ではなく、突然にアメリカの強い要請と小泉政権のそれを利用した政治判断によって、実現させられたものです。だから自衛隊員の心の準備もないし、予めの予算の手当ても何も無い訳です。
 既に支出した分だけでも自衛隊の派遣に377億円、ODA総額1,650億円、イラクへの債務帳消し7,700億円ということです。「訴状」p.5, p.15に書きましたように、政府は「特別措置法」の期限が切れる2007年までに、55億ドル(6,050億円)を支出することにしています。
 これだけの巨額のお金を誰が負担するのですか? それは直接であれ間接であれ、私たちが追加の税金で負担させられる他ないものでしょう。これが、納税者である原告の具体的な権利義務に直接影響を及ぼすものでなくて何ですか?

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 第四に、これだけの負担を私たちに強いるイラク戦争は、正当性の一かけらも無い、アメリカとその太鼓持ち有志連合によるただのイラク侵略戦争に他なりません。ごく最近アメリカ自身の調査団が、イラクへの先制攻撃正当化の根拠とされたイラクの「大量破壊兵器」は存在しなかったこと、それを作る計画も存在しなかったこと、ただフセイン元大統領がその保有を望んでいたことは事実である(!)[心の中で望んだだけで極悪犯罪者として罰せられたイラクと、大量の破壊兵器・核兵器を使い切れぬほど現に持っているのに、罰せられるどころか世界に君臨して憚ることのないアメリカ] という報告書を出しました。
 またラムズフェルド米国防長官は、フセイン政権とアルカイダの結びつきを証明する資料は何もないことを、嫌々認めました。それにも拘らずブッシュ大統領もチェイニー副大統領も「イラク戦争によってアメリカと世界はヨリ安全になった」と、根拠も説明できずにただ繰り返し続けています。「フセインが発見されなくともフセインの存在は確実であるのと同様、大量破壊兵器も未だ発見されていなくとも必ず存在する」と国会で大見得を切った小泉首相は、その無責任な発言の責任を全く取っていない。まさに「人道」「倫理」も地に堕ちています。こういう人たちの言う「人道支援」「復興支援」のために税金を取られることがどれほど苦痛か分からないのですか?これは人権侵害という他ありません。(「国境なき医師団」等、本当の人道支援活動を行っているNGOになら、喜んで支援しますが)
 実際、米軍や自衛隊の活動によって、現地で「人道」が復興していますか?イラク人捕虜の扱いで暴露されたように、人道が地に堕ちている占領米軍。その「米軍支援活動」を自衛隊員は、命の危険を冒してやらされている。「人道」の方は「復興」するどころか、兵士も民間人も、ジャーナリストもNGO活動家も、見境なく人質にしたり殺したり、人間を平気で取引材料として扱うほど、イラク人の人道をも退化させてしまった。

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 現地の「安全確保」は進みましたか?米軍の日々の死傷者が増え続けているだけでなく、イラク戦争が始まる遥か以前から現地で人道援助活動に携わっていた諸国のNGO活動家やベテランジャーナリスト等が、自国政府がイラクに派兵したため、そのスパイと疑われるようになり、拉致されたり殺されたり、全く危険な場所に一変してしまいました。現地に住み続けるほかないイラク市民は、「人道復興」どころか毎日毎日大量に命を失っています。
 こういう所に自衛隊(先ず北海道、次いで東北!どうして防衛庁長官や中央幹部が先頭に立って、真っ先に行かないのですか?ここに本当の問題があるのでしょう。「イラク派兵違憲訴訟の会・東京」の尾形 憲氏が陳述されたように、戦争はいつもこうです)を強制的に行かせる「イラク特措法」は、憲法第9条で保持を禁止されている「戦力」である自衛隊を、「正義と秩序」に全く反する米軍の侵略の後始末のためにイラクに派遣する点で、明瞭に憲法違反である。しかも小泉首相が国会で、憲法前文の「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、・・・この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」を引いて自らのイラク「国際貢献」政策・イラク特措法を正当化したのは、東京高等裁判所昭和56年7月7日判決(憲法前文に「表明された基本的理念は、・・・それ自体・・・国政を拘束しうるものではない。殊に、平和主義・・・について言えば、平和ということが理念ないし目的としての抽象的概念であって、それ自体具体的な意味・内容を有するものではなく、それを実現する手段、方法も多岐、多様にわたるものであるから、その具体的な意味・内容を直接前文そのものから引き出すことは不可能である。」)を無視して、法的に不可能なことを敢て行った無法行為だということになるだろう。被告は、自分が引用したこの判決を、我々に向ける前に自分に向けるべきでしょう。
 イラク特措法は、被告の立場からしても無法な政策によって生み出された無法な法であることになるでしょう。
 以上で第1回目の原告意見陳述を終わります

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イラク派兵違憲訴訟の会・東京
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