「3 二国間の安全保障・防衛協力において向上すべき活動の例」では、グローバル事態で自衛隊が何をやるべきかが決められたわけです。15項目、ずらっと並んでいます。「防空」から始まって「港湾・空港、道路、水域・空域及び周波数帯の使用」まで。この並んでいる意味を私が解析したのが別表です。ナショナルというのは武力攻撃事態でやること。リージョナルというのは周辺事態でやること。いちばん右のグローバルというのは、今回新しく付け加わった部分です。これまではリージョナルなところで止まっていたわけですが、今回グローバルな任務というものが付加された。このグローバルの中には、すでにやっている既成事実を書いたものと、まだやってないけれどもやるべきものを書いたものとがあります。一つずつ見ていきます。
表_2 二国間の安全保障・防衛協力において向上すべき活動(operations)の例
|
|
|
|
防空
|
|
|
|
弾道ミサイル防衛
|
|
|
|
拡散に対する安全保障構想(PSI)といった拡散阻止活動
|
|
|
|
テロ対策
|
|
|
|
機雷掃海、海上阻止行動、その他の活動
(海上交通の安全を維持するための・・・)
|
|
|
|
捜索・救難活動
|
|
|
|
情報、監視、偵察(ISR)活動
(無人機(UAV)や哨戒機により
活動の能力と実効性を増大することを含めた)
|
|
|
|
人道支援活動
|
|
|
|
復興支援活動
|
|
|
|
平和維持活動 及び
平和維持のための他国の取組
(efforts)の能力構築(capability building)
|
|
|
|
重要インフラの警護
(在日米軍施設・区域を含む)
|
|
|
|
大量破壊兵器への攻撃への対応
(大量破壊兵器の廃棄、除洗を含む)
|
|
|
|
相互の後方支援活動(補給、整備、輸送)
|
|
|
|
非戦闘員退避活動(NEO)のための輸送
- 施設の利用
医療支援
その他関連する活動
|
|
|
|
港湾・空港、道路、水域・海域 及び
周波数帯の使用
|
|
|
|
最初の「拡散に対する安全保障構想、拡散阻止活動」は、もうこれは演習・訓練でやっております。
「テロ対策」もやっております。
「機雷掃海、海上阻止行動」も、グローバルな事態で自衛隊がやるようになる。
「捜索・救難活動」とは、戦闘機が墜落した場合にパイロットを救出する、そういう活動ですが、これはイラク特措法にすでに書き込まれております。ただこれまではチャンスがなかったので実績としては上がっておりません。
「情報・監視・偵察活動」、無人機や哨戒機によるもの。こういう情報活動も当然、グローバル事態ではやる。すでにペルシャ湾に海上自衛隊が鑑艦艇を出したときに、アメリカ側からの要求として哨戒機を出してくれと打診をされておりました。無人機はいま自衛隊は持っていないし、持つ計画もなかったのですけれども、導入することを計画し始めました。
「人道支援活動」はすでにやっております。
「復興支援活動」ですが、サマーワから自衛隊が撤退をした後、いまNATOを含めてやっている復興支援活動、アメリカはこれに自衛隊の将校何人かを派遣して参加してくれと打診しておりますので、当然やることになるでしょう。
「平和維持活動」、これはPKOですので、すでにやっている。
「平和維持のための他国の取組の能力構築」が何かと言いますと、アフガニスタン・イラクでは国軍の再建をやっております。警察の再建もやっております。自衛隊がその協力をするということだろうと思います。
「相互の後方支援活動」ですが、これは海上の給油についてはもうやっておりますので、空中給油が付け加わる。航空輸送は、航空自衛隊がいま米軍の基地の間のエアリフトを肩代わりしてやっております。海上輸送もやります。高速輸送艦も買うことにしております。こういう兵站支援のオペレーションをやる。
「非戦闘員の退避活動のための輸送」ですが、これは周辺事態でもやることになっておりますが、じつはサマーワからマスコミの人たちをすでにこの活動でもって救出しております。実績がありますので、今後もやる。
ということで、15項目が現在挙がっているわけですが、グローバル事態では今挙げたような10項目をやることを決めたわけです。
大事なことの一つは、これは戦時にやるということと、主要な戦闘が終わった後にやることとが区分けをされて、それぞれについてやることと、また双方にまたがってするものもあるということです。もう一つは、「可能な協力分野を包括的に列挙することを意図したものではない」とわざわざ記述されていることから、この意味はこれから追加する活動があり得るということです。このペーパーを作った段階では、グローバルなミッションとしてはこれだけのことをやりましょうと合意をしたということです。
皆さんが関心があるのは治安維持の活動だと思います。対ゲリラ対処が入っていないということです。2+2の合意の後に開かれた日米の防衛首脳協議のなかで、ラムズフェルド国防長官が額賀防衛庁長官に対して「治安維持活動もやってくれ」というふうに言ったと報道されています。額賀防衛庁長官は即座に「ノー」と答えたというのが当時の報道でしたが、共同通信の後追いの報道ですと、そう単純な断りかたではなかったということになっております。当然今後、治安維持任務、対ゲリラ戦闘が追加で入ってくる可能性が高いと思います。これは日本国内の世論、それから戦況の状況によって決まるのではないかと思います。