【アメリカ ブッシュ政権の目的】
甲第105号証を提出します。『ラムゼー・クラークの湾岸戦争 いま戦争はこうして作られる』よりの抜粋です。この本では、1991年の湾岸戦争に向けて、アメリカ政府が策略を持って戦争を起こしたことが書かれています。引用した部分には、アメリカの国防大学の戦略問題研究所が1990年に発表した研究では、戦争を望んでいたのはイラクではなくアメリカであることが書かれています。そして、その目的は予算を維持したい国防総省、武器の販路を広げたい軍事産業、資源確保を狙う石油会社、覇権拡大を図るブッシュ(シニア)政権の思惑であったと。
甲第87号証で示した、防衛庁防衛問題研究所の報告書が描く、今回のイラク攻撃の目的と変わりません。人道支援の「じ」の字もないではありませんか。
甲第106号証を提出します。大阪の市民団体が、アメリカの世界政策研究所所長、ウイリアム・ハートゥング氏の特別報告を翻訳したものの抜粋です。『ブッシュ政権と軍産複合体』。アメリカが20年間に渡って採ってきた核兵器削減に向けての政策を転換した裏に、軍需産業の利益が大きく絡んでいることを描き出した調査論文です。
甲第107号証を提出します。毎日新聞特集記事『広告代理店を「活用」 反イラクへ世論誘導』アメリカの広告代理店がイラク出身の学生を雇ってフセイン大統領の偽の吹き替えをさせていたことや、1991年の湾岸戦争時にもイラクへの悪感情を喚起するような嘘の情報を流していたこと、いまや情報戦は常識であることなどが書かれています。私はそんな宣伝に乗って私たちの国が行き先を誤ることが我慢できません。政治にかかわる方は、もっと正確な情報で国家を運営してください。
甲第108号証を提出します。同じく防衛庁防衛研究所のホームページから、2003年2月のブリーフィングメモ『それでもアメリカを支持すべき3つの理由と3つのリスク』です。
- 米国の一国主義的政治姿勢には反発もあるが、テロ、WMDという21世紀の共通脅威への対応にあたって、「米国の描く戦略に乗ること」以外に採り得る選択肢はない。
と言い切っています。ここではまだ、イラクの「大量破壊兵器疑惑」が信じられていました。
また「考慮すべきリスク」として
- イラクに対する武力行使は、米国の自衛権とは言い難く、安保理のマンデートを唯一の国際法上の根拠とせざるを得ない。これについては、安保理決議687への違背が停戦を無効とする結果、決議678に戻って武力行使が可能との解釈を唱える声もあるが、現に解釈をめぐる争いがある以上、新決議がなければ国際社会の完全な合意がないと言う事実は残る。それは、今後長期にわたるイラクの再建や多方面に渡るテロとの戦いに必要な国際協調を揺るがす虞があろう。
とも書いています。
この判断、危惧を政府は理解していたのでしょうか。
最後に
- 9・11ではグローバリゼイションの象徴としての米国がテロの対象とされたが、古今、テロの標的として「最も脆弱な環」が狙われる。既に国際テロとの戦いを宣言したわが国としては、自らが対テロ国際協調の「最も脆弱な環」とならないよう、わが国自身の安全対策に万全を期しておかなければならない。
私は、このようなリスクを共有してまで幻の大量破壊兵器疑惑に乗った政府の責任を強く訴えます。
いま、介護職に携わる人を海外から招致するほどの少子高齢社会となった日本で、これからの若い力を軍事に割く余裕はありません。
少子高齢社会の日本が生き残る道は、可能性のない軍事大国でも、軍事大国の腰巾着でもなく、信頼されるブランド力です。
昨今のアジアとの摩擦でも、韓国では中国ほどの混乱は見られなかったそうです。このごろでは、テレビのコマーシャルからイケメン韓国俳優の韓国語が毎日流れてくるほどです。昨年からのテレビドラマなどを通しての市民や文化の交流が隣国との離反ををさせなかった。正に北風と太陽の寓話通りではありませんか。
それを、日本の側から世界に発信することこそ生き残る道であると訴えます。
【選択するべき道】
甲第109号証を提出します。カトリック中央協議会のホームページから。
今年4月2日に亡くなったローマ法王のヨハネ・パウロ2世は、1981年2月23〜26日に来日、東京の他広島・長崎を訪ねました。25日には広島市主催の「教皇歓迎の集い」で有名な平和のアピールを行ったそうです。
「戦争は人間のしわざです。戦争は人間の生命の破壊です。戦争は死です」と。
アピールの一部は平和記念公園の中の記念碑に記されています。
- 過去をふり返ることは、将来に対する責任を担うことです。
広島を考えることは核戦争を拒否することです。
広島を考えることは、平和に対しての責任をとることです。スマトラが大津波の、山古志村や神戸の名が大震災とともに記憶されているように、広島・長崎の名が被爆という被災と共に記憶されることは決して幸せなことではありません。
でも、その不運の上に立って未来を作るのは人間の立派な営みです。
この痛み持つ日本という国の名前が、揺れ動く世界の政治の中で、平和の立場を譲らないための重しとして、大切に記憶されることは誇りに思っていいことです。痛みの中から考えること、そこにしか、出発点はありません。
私たちの平和に生きる権利は、世界の最前線で、誠実に相手と対することのできる方々の地道な努力にこそ守られてきたのだと感謝します。これまでの弁論でご紹介した、国連軍縮大使の猪口邦子さんや、長年、中東地域で日本大使を務めてこられた片倉邦雄さんの例はその証拠です。
他ならぬ、現政権で活躍してきた人々によって語られた事実を通して、軍事でない外交活動こそが機能することを確認できたことは嬉しいことです。
国連の大量破壊兵器査察委員会のハンス・ブリクス氏の著書を通してもそれは示されました。査察委員会の任務が妨害されずに全うされていれば、今のイラクの惨状はあり得ませんでした。
再び、猪口さんのコラムを引用します。(日経新聞2005年2月23日)
- 『後任の国連小型武器議長』
「貴殿の後任となった。国連会議の議長としてのノウハウを分けてほしい」。フィンランド外務省のパトカッリオ大使から昨年末、東京の研究室に突然電話がかかってきた。国連小型武器プロセスが順調に発展している。2003年7月、小型武器軍縮の実施のための国連政府間会合が開催され、当時日本の軍縮大使であった私が初代議長を務めた。その後の国連総会にて、第2回実施会合の開催について加盟国全会一致の決定を得た後に私は離任したが、その議長に選任されたという。
- ---(著作権に配慮して中略)-(
- 鬨「日本議長の成功を再現したい」。そう言って今なお敬意を払ってくれる外国高官の熱意に、心血を注いで世界の平和と日本の名誉のために国連議場で働いた日々が報われる思いがした。本年7月の国連での小型武器軍縮会議の成功を、無数の犠牲者と誠実な新議長のために祈りたい。
金の卵を産むめんどりというイソップの寓話があります。日本の昔話にも、似た話があります。金のたまごを一遍に手に入れようとして雌鳥のおなかを開いてしまった農夫は、そこに一つの卵も見つけられませんでした。
平和も同じだと思います。目障りだと思う陣営に対し、「いっぺんに除いてしまえば簡単だ」「やってみれば“自由のと民主主義の世界”が待っている」などと暴力で切り開いても、待っているのは虐殺と混乱です。
一つずつ平和の妨げになる事物を丁寧に除いてきた先人と、いまも各地で努力し続けている外交官の人々や民間団体の人々の労苦を無駄にせず、次の一歩を大切に踏み出しましょう。その一歩を踏みにじらないでください。
これは、これらの人々が本当に命がけで積み上げてくださった平和への保険です。掛け捨てにしないで下さい。保険を捨てて自らの、それこそ自己責任で戦場に出ていくだけの判断の元となる情報力を自前で持つほどの余裕があるのですか?
長年積み立てた平和外交と信頼という保険年金の果実を、危険な軍拡競争という先物取引の賭につぎ込むようなまねはやめてください。
甲第110号証を提出します。6月10日、神奈川新聞のミサイル防衛に関する記事です。『日本への早期警戒情報 米側、供与に難色』。自国の防衛情報さえアメリカに頼っている日本。それでいて、自衛隊のイラク派遣の判断は独自情報で行えたというのは、本当でしょうか。軍事同盟というのは、それぞれの自国の安全への利用、それだけの関係でしかないのです。自らの安全は、先人の守り続けてくれた平和の保険を元手にこれからもかけ続けていくしかありません。
平和憲法のもとで、平和に生きる権利の果実として私は生きています。次の世代にもそれを手渡したいです。