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同校においては、性教育ほ昭和46年の開校以来行われてきた。しかし、1999年夏に、同校が併設されている七生福祉園からの入所生同士による性的問題行動が判明し、従前行われてきた性教育の妥当性・有効性を振り返る契機となった。
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上記事件後、同校と七生福祉園との間で「学校・福祉園との性教育連絡会」が設置され、さらに同年10月にほ同校内に「性教育検討委員会」が設置され、両会議において性教育が有効適切になされるための授業内容、発達段階に応じた教育等について話し合われた。その結果、問題行動が起きたときの対症療法的な指導ではなく、性に関して必要な指導をしつつ(例えば、男子生徒の精通指導や、女子生徒の月経指導等)、生徒が自己肯定感を持ち自分の心と体に向き合えるようにする指導の必要性が認識された。
また、各学年が不統一に性教育の授業を進めるのではなく、統一的に連携を取って行われることが必要であることが認識された。
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このような経緯を経て、同校の新たな性教育の実践が始まった。
知的障害を持つ子ども達は、抽象的な事柄を理解するのに困難を伴うことから、各教諭はこのような特性に応じて、具体的でわかりやすい授業を行うことを心がけた。
また、障害の内容やそれまでの生育歴から各生徒の発達段階は区々であることから、授業実施に当たっては、発達段階が同程度にあると認められる数人単位のグループに分け指導を行った。
具体的な指導内容としては、体の各部位の名称を歌詞にした「からだうた」(性器の名称について「ペニス」「ワギナ」として含まれている)を授業開始時に歌うことや、段ボール箱にべニス模型をつけ、ペニスの先から液体を出すことができるように内部に管を通してある「箱ペニス」を用いて行う精通指導、母親の子宮の中の心地よさを体験し、生まれる瞬間を体験する「子宮内体験袋」の経験、ペニス、ワギナが付いている人形「スージー&フレッド人形」を赤ちやんと見立てて抱かせること等が挙げられる。
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なお、性教育実践がより実のあるものとなるために、授業風景を他の教諭がビデオ撮影をし、他の教諭も閲覧できるようにしたり、保健室を指導教材等の保管場所にし、各教諭が性教育に関する情報の共有を図るとともに教材を相互に利用可能となるようにしていた。
また、教材については、学校予算から購入されるものもあれば、学外の教育基金から購入費用を賄うこともあり、各教諭が自弁で制作したものもあった。
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性教育の実施にあたっては、保護者等の理解も必要であるところ、同校においては、生徒の約半数は親元を離れて七生福祉園から通学しており、上記のとおり七生福祉園との間では性教育連絡会が定期的に開催され意思疎通がなされていた。
また、自宅からの通学生については、授業の事前に実施予定の授業内容を記した連絡文書(「さわやかアップ」)を、事後に実施中の生徒の様子を個別に記した連絡文書(同)を、各保護者に配布し、意見のある保護者については返信欄に記載することにより教諭に対して意見を伝えることができる仕組みとなっていた。
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これらの同校の性教育実践は従前優れていると評価されており、1999年度及び2000年度の心身障害教育夏期専門研修(東京都知的障害養護学校校長会及び同教頭会が主催、都教育庁学務部義務教育心身障害教育課が後援)に連続して取り上げられた。その内容について、これまで主催者、後援者サイドはもちろんのこと、東京都教育委員会(以下「都教委」という。)からも何ら異議はなかった。
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2003年7月2日、東京都議会において、都議会議員(以下「都議」という。)から都教委に対し、東京都立養護学校における性教育のあり方について質疑が行われた。
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同月4日、都譲3名と日野市議会議員数名、都教委の指導主事らが、七生養護学校を視察した。産経新聞記者が同行していた。都議、指導主事らは、校長、副校長らと面談のうえ、同校の保健室に入室した。
保健室内では、主として、都議3名が養護教諭に性教育の教材について質問し、保管してある人形、本などを提示するよう求めた。都議らの言動には、性教育をはなから批判し、また養護教諭らの人格を無視するような内容が含まれていた。例えば、「あなた、体うたを宴会で歌えるんですか?感覚が麻痺しているよ!」であるとか、養護教諭が、ある都議が性教育のファイル等を持っていこうとしたことから、何を持っていくかを記録したいので教えてくださいと質問したところ、「何を持っていくかは俺達が責任をもって持って行くんだから、馬鹿なことを言うな。俺たちは、国税と同じだ。生意気なことを言うな。このわけのわからない2人(質問した養護教諭ら)は出ててもらってもいいんだ」等のごとくであった。この間、都数委、校長らは保健室内にいたが、都議らの質問を何ら制止しなかった。また怪我の手当てを受けるために保健室に入ってきた子どもたちは、養護教諭がいじめられているのではないかと心配し、動揺していた。
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都議らは、提示を受けた人形等を床に並べ、ズボンやスカートをずらしで性器等をあらわにするように置いて、これを産経新聞記者が写真撮影をした。この間、都教委、校長らは、保健室内にいたが、同記者に対し何ら制止をしなかった。この写真は、7月5日付の同紙に記事とともに掲載された。
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別紙一覧表記載の教材は、後日都教委がこれを校長から提出させ、現在に至るまで、保管している。なお都教委は、これら保管中の教材を、都議や報道関係者等に見学させている。
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7月9日、都教委により、全教職員の事情聴取がなされた。前日に校長から、事情聴取に応じるようにと、職務命令が出されていた。当日、37名の指導主事が来校し、2名ずつで17組にわかれ、教職員1名あたり約30分間の聞きとりを行った。質問は、「不適切な性教育であるかどうかを調査するため」という目的で、「ことさら性器を強調した人形」等といった表現が使われていた。質問項目は全員ほぼ同様だった。
何らかの処分を前提とした聴聞という説明はなかった。またこの時点では、後日問題とされる服務規程違反等についての質問はなかった。
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7月15日、都教委は、「都立盲・ろう・養護学校経営調査委員会」を発足させた。
性教育の問題のほか、学級編成、服務規程違反が問題とされ、すべての都立盲・ろう・養護学校に監査が入り、校長ら管理職の事情聴取が行われた。同委員会は、8月28日に報告を出し、七生養護学校において、組織的に不適切な性教育が行われていたこと、学級編成の不正があり、服務規程違反の実態があることなどが報告された。
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保護者らに対しては、7月9日、17日、9月4日にそれぞれ保護者会が開かれ説明がなされた。この間、一部の保護者は、東京都教育長等に対し、七生養護学校の性教育の意味を認め、続けることができるよう、要請行動を行っている。
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都教委は、7月29日付で「束京都立学校経営アドバイザー設置要綱」を施行し、8月1日付で、七生養護学校に1名のアドバイザーを配置した。
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都教委は、七生養護学校に対し、9月1日付通知を交付した。授業内容について、1週間毎の授業案(週案)を作成、提出することを求められ、管理職が、事前に内容について指示を出すようになった。特に性教育について、細かい指示が出された。 |
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9月4日、都教委の指導にしたがい、性教育全体計画が作成され、保護者に説明された。
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9月11日、都教委は不適切な性教育や服務規程違反などの理由により、七生養護学校の教職員が含まれる養護学校管理職37名について、停職、降格、減給、戒告、文書訓告、教員等65名について、口頭による厳重注意、教育庁関係者について、戒告、文書訓告の処分を出した。このうち明確に「不適切な性教育」を理由として行われた処分は、七生養護学校13名、調布養護学校1名、立川養護学校1名、江戸川養護学校1名、町田養護学校4名、石神井養護学校1名の合計21名の教員に対する「厳重注意」であった。
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9月17日、都教委は「障害のある児童・生徒の性教育に関する実施指針」を示し、10月6日に七生養護学校内の研修会を行った。
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11月14日付で七生養護学校内で、「今後の性教育の指導について」が作成された。
従前の性教育と比べると、内容、指導時間、指導形態などに、大きな変化が生じた。
すなわち、指導時間は大幅に短縮され、内容、指導形態については、ペニス、ワギナ、性交といった言葉の使用が事実上禁止された他、人形や模型等を用いた指導を行うことが禁止され、図等の平面教材についても使用が著しく制約された。
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