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4:武力紛争の際の中立国の立場
 甲第79号証を提出します。
 防衛庁防衛研究所紀要 第7巻 第2・3合併号(2005年3月刊)掲載の『武力紛争の第三国に対する武力行使の正当性』(森田桂子氏による)です。
 かつて、戦争の成立が認められた時代の中立法は、戦争の違法化によって、法体系との整合性を求められることになりました。しかし、中立国といい、非交戦国というにしても、交戦中の国に対して利益供与をしないということは同じです。重火器を持って、占領軍の元で他国に存在している自衛隊が、中立国または非交戦国のものと認められる可能性は低いはずです。イラクの武装勢力が日本に対してテロ攻撃を示唆したという報道がありました。
 すでに第三国の立場を捨ててしまった日本は、攻撃されない権利をどのように主張すればよいのですか。私は、この危険を招いた日本政府に対し、損害賠償を求めるものです。

5:争訟性
 保護法益に関する主張:予備的主張として

 民法における不法行為の成立要件は何でしょうか。
 甲第80号証(『現代法学事典 2』日本評論社刊 別冊法学セミナー増刊 昭和48年発行の抜粋1〜2ページ)を提出します。

民法(不法行為による損害賠償)
第709条
 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 民法では、その不法行為の成立要件として権利侵害がありますが、旧大日本帝国憲法時代の大正14年12月21日大審院判決、通称「大学湯事件」(大判大14.11.28民集4/670)において、浴場経営の老舗権なるものにつき、利益侵害を認め、判決理由に下記のように書いています。

當該法條ニ「他人ノ權利」トアルノ故ヲ以テ必スヤ之ヲ夫ノ具體的權利ノ場合ト同様ノ意味ニ於ケル權利ノ義ナリト解シ凡ノ不法行爲アリト云フトキハ先ツ其ノ侵害セラレタルハ何權ナリヤトノ穿鑿ニ腐心シ吾人ノ法律觀念ニ照シテ大局ノ上ヨリ考察スルノ用意ヲ忘レ求メト自ラ不法行爲ノ救濟ヲ局限スルカ如キハ思ハサルモ亦甚シト云フヘキナリ

 つまり、民法の規定は、まず救済を求めている、侵害された利益というものが存在するならば、法律上に権利として認められていないとしても、法の目的を大局的に判断しなければならない、それが「何権であるか」というような理屈探しに腐心して救済を局限化しようとするべきでない、ということです。
 この理論が反映される中で、1947年成立の国家賠償法では、不法行為の成立要件として「権利侵害」という言葉を削除しています。上記民法の規定でも、「他人の権利又は法律上保護される利益」として、不法行為とは、他人に損害を与えるという事だけで成立するものとなっているわけです。

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 次に、保護法益として無形の価値を認められた例を甲第81号証として提出します。
 これは、行政訴訟ですが、昭和48年に日光の太郎杉を道路建設のために伐採するか否かで争われた事件の控訴審判決です。一審で原告である宗教法人東照宮が勝訴しており、控訴審でもこれを支持して、これで確定しています。下記に引用するのは、判決理由のうち「本件土地の状況、その有する価値ないし利益について」の後半部分です。

(二)そうして本件土地付近の人文、景観及び本件土地付近に存する史実、伝説についての当裁判所の認定は、原判決が七七丁裏五行目から八〇丁裏一〇行目までに説示するとおりである(なお、当審における証人佐々木耕郎、同金谷正夫、同吉村清英の各証言はいまだこの認定を左右するに足るものではない。)から、これを引用する。
 つぎに、日光杉並木街道が特別史蹟及び特別天然記念物に指定されたいきさつは、原判決が八一丁表二行目から同丁裏八行目までに認定するとおりであつて、当裁判所もこれを引用するが、本件土地上の太郎杉を含む杉群が右の指定の対象に含まれていないことは弁論の全趣旨によつて明らかである。しかし、右引用にかかる部分に掲記の各証拠(原判決八一丁表二行目から四行目に記載のもの。)に弁論の全趣旨を総合すると、本件土地上に成育する一五本の巨杉群は、いずれも本件道路に沿つてほぼ並列的に成育し、かつ、右は本件土地の西側に接する東照宮表参道の両側に同様に並列的に成育している巨杉群に連なつていること、本件土地の東側には、日光杉並木街道寄進の碑が建立されており、同碑によると、右杉並木は日光山山菅橋(即ち神橋)付近から植栽されていることがうかがわれこれらの事実に前記日光杉並木街道の歴史を総合して判断すれば、本件土地上に成育する巨杉群は、日光杉並木街道のそれと時を同じくして植栽されたもの(但し太郎杉についてはそれ以前から成育していたものとみるべきである。)であつて、日光杉並木街道の出発点にあたるとする見解もそれ相応の事由があるものというべきであり、仮りにこの見解が厳密な歴史的、学術的考証にたえるものではないとしても、少なくとも一般国民の意識の上では、その史的・文化的価値の点で、特別史跡・特別天然記念物としての日光杉並木街道のそれと同じ程度の価値を有するものと評価されていると認めることができる

 この杉を切られることは、原告の体に傷を負わせるものではありません。また、ここではその金銭的価値を判断しているわけでもありません。「一般国民の意識の上」での「史的・文化的価値」を評価して、それを、法律で守られるべき利益と認めているのです。

 私たち日本国民が、武力を使わない国に暮らす権利というものは、それに劣るものでしょうか。長く、国内のみならず国際社会で評価されてきた日本国憲法が保障してきた平和に生きることの利益。これは、日本国憲法の果実です。これへの侵害を、私の損害であると主張します。
 軍隊を持たないという原則の下で、武力攻撃による殺人を犯していないという国家で平和に暮らす権利が利益でさえないというのなら、被告はその具体的根拠を示すべきです。

 そしてまた民法においては、将来の権利侵害に対する保護として、差し止めが救済の主要な方法と認められています。

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【2】自衛隊のイラク派遣の違法性について
1:アメリカのイラク攻撃の違法性---国際法上の根拠

 甲第82号証を提出します。コフィー・アナン国連事務総長が2003年9月23日に行った第58回国連総会での演説です。ここからから引用します。

 国連憲章第51条は、いかなる国も攻撃されたときには、固有の自衛権を持つと規定しています。しかし今までは、国際平和と安全保障に対する広範な脅威に対処するために、国家が自衛を超えて軍事力の行使を決定した場合、その国家は、国連だけが与えることができる正当性が必要だと理解されてきました。
 ところが今、大量破壊兵器で「武装した攻撃」はいつでも、警告なく、秘密組織によって開始されうるため、こうした理解はもはや通用しないと考える国が出てきました。
 こうした国は、そのような攻撃が行われるのを待つべきではなく、加盟国には先制的に武力行使する権利と義務があると主張しています。他国の領土においてさえ、また攻撃に用いられる兵器システムがまだ開発中であるときでさえ、先制攻撃ができるというのです。
 この主張によると、各国は、安全保障理事会が同意するまで待つ義務がなく、単独で行動したり、その場限りの連合を組んだりする権利があるということになります。
 この論理は、過去58年間、不完全とはいえ世界の平和と安定を保つ基礎となってきた原則に対する根本的な挑戦です。

 これが何を指しているかはおわかりと思います。国連は、イラク攻撃を決して認めていません。
 
 1980年代に、中米のニカラグアに対して、アメリカのレーガン政権は武力をもって侵攻しました。その事由は、ニカラグア国内での人権侵害だと、レーガン政権は主張しました。しかし、国際司法裁判所は1986年6月、「武力行使は人権保障を監視したり確保したりするための適切な方法ではない」と判示したのです。

 甲第83号証『人道的介入』(最上敏樹:著 岩波新書:刊2001年初版)を提出します。これは、2001年の9月17日に脱稿しています。つまり、あの9.11事件の直前にほとんどが書かれた本ですがとても示唆に満ちています。
 前記【1】の 2:平和的生存権の国際法上の根拠により、武力行使の違法化が法律上の基本原則となったいま、この原則を破って武力行使を正当化する論理-つまり、刑法で言う違法性の阻却事由にあたるものとしては、下記の条件を満たすべきだと言われています。(参考:『人道的介入』(最上敏樹:著 岩波新書:刊2001年初版)

  1. 甚だしい人権侵害がある
  2. 武力行使は最後の手段であり、それ以前に平和的手段が尽くされていること
  3. 介入の目的は、甚だしい人権侵害の停止に限られ、国益の実現などの、それ以外の目的を含まないこと
  4. とられる手段は、状況の深刻さに比例したものであり、実施される期間も必要最小限であること
  5. 執られた措置(特に武力行使)の結果として、多くの人が迫害から逃れ、生命の危機から脱するなど相応の人道的成果が期待できること
  6. 国連の安全保障理事会の承認を得ること。少なくとも、介入措置について安全保障理事会に通告しておくこと
  7. 個別の国々が独自に行う介入よりも地域的国際機構が行う介入を、地域的国際機構が行う介入よりも、国連が行う介入を優先すること

 今回のブッシュ政権のイラク攻撃がこれらの条件を満たしたものであるか、国際司法裁判所の判示に背かない行動であったかどうか、前回までの書証により、判断してください。私は、背く行為であると主張します。また、上記の違法性阻却事由2〜7のいずれにも当てはまらないと主張します。
 もちろん、「人道的介入」の方法は前記7条件の(2)にもあるように、武力行使に限りません。むしろ、犠牲になっている人々への直接の支援の方がよほど重要であるし、緊急でもあります。アメリカ政府が長年主張してきたフセイン政権の人権侵害に対し、経済制裁という手段で救援を妨げてきたのは、他ならぬアメリカを主導とする国際社会でした。

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 甲第84号証を提出します。1971年12月20日、フランス人の医師・ジャーナリストからなるグループにより創設された「国境なき医師団(MSF)」「イラク戦争、人道上の問題」と題された2003年3月25日のニュースリリースです。ここより抜粋して引用します。

MSFは激しさを増すイラクへの攻撃の結果がイラクとその周辺国に住む人々に及ぶことを懸念しています。MSFは現在6名のボランティアからなる医療チームをイラクに派遣しており、ヨルダン、シリア、イランでもチーム編成を進めています。各チームは、人道援助の必要性の調査を行い、どのような支援活動が可能かを探っています。

MSFはその中立の立場から、戦争について賛成・反対いずれの立場も取ることはありません。しかし、イラクにおける軍事攻撃が激しくなっている現在、下記の事項について深い懸念を抱いています。
●戦争遂行のあり方と市民への被害
この戦争の当事者は、市民への被害を最小限にするよう細心の注意を払うべきであるとMSFは考えています。市民も、市民が生きていくために不可欠な施設も攻撃の対象となるべきではありません。

軍事的な標的と民間人を区別しない無差別攻撃のための武器は使用されるべきではありません。アフガニスタンでは、同盟軍がクラスター爆弾を投下し、国土の多くが不発弾の危険地域に覆われる結果となりました。

大量破壊兵器の使用も懸念されます。アメリカ側もイラク側も、今後発生しうる衝突の中でその使用の制限をしていません。また人道援助団体は、生物・化学・核兵器などの特殊な武器による被害者に対しては、十分な救援の準備を行っていません。

また、民間人は人間の盾として利用されるべきはありません。意図的に移動させられたり安全でない地域からの脱出を阻害されるべきではありません。また戦争当事者は捕虜の扱いについて、国際法に従わなければなりません。

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 同じ年、5月8日には甲85第号証のニュースリリースが出されています。引用します。

英米軍に対し、イラク国民の医療を保証する義務を遂行するよう求める

国境なき医師団(MSF)は5月2日ワシントンDCで記者会見を開き、イラク占領勢力である米英軍は、国際人道法によりイラク国民の医療を確保する責任があるにもかかわらずこれを果たしていないと述べました。緊急の課題である保健医療システム再建について、対策が講じられておらず、長引く病院体系の混乱がイラク国民の健康を脅かしています。MSFは英米軍に対し、イラク国民の医療を保証する義務を早急に遂行するよう再度求めます。

MSFインターナショナル会長で、バグダッド医療チームに参加したモルテン・ロストルップ医師は、「この戦争の準備は何ヶ月も前から進められていました。そして英米軍の占領から既に3週間が過ぎましたが、人口約5百万人のバグダッドには運営を完全に再開した病院がいまだにありません。」と話しています。
「クラスター爆弾などによる爆撃や、現在も続く一般市民を巻き込んだ交戦の影響で、人びとが病院に通い医療を受けることは非常に困難になっています。加えて、バグダッドやその他の都市で生じている無秩序状態と権力闘争によって、保健医療システムは混乱に陥っています。」

アメリカは行政機能の復興に重点を置いていますが、負傷者の迅速な救援には取り組んできませんでした。また、病院や病院職員の安全確保が求められていた時にも彼らを守ることを怠りました。バグダッドでは病院の衛生状態は悪く、またその多くが略奪の被害に遭い、救急搬送システムも停止しています。戦闘による負傷で入院していた患者らは、米軍占領直後の混乱の中、病院から避難したか退院させられましたが、治療を続けるためにどこに行けばよいのか分からずにいます。中には手や足の切断を要する重傷の患者もいます。病院の収容能力が低下しているため入院患者は早々に退院させられています。糖尿病・腎臓病・癲癇などの慢性疾患の患者は薬を手に入れることが出来なくなっています。イラク人医師や看護師は給料の支払いを受けないまま仕事を続けています。MSFがバグダッド、アマラ、バスラ、カルバラ、ナシリアなどの都市で行った病院訪問では、結核やカラアザールなど生命の危険のある病気にかかっていても、薬が手に入らず治療を続けられない患者も見受けられました。

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 さらに2004年11月、国境なき医師団は、治安の悪化に活動を停止せざるを得ませんでした。全文を転載します。

MSF、イラクでの活動を停止
[ イラク ] 情報発信日:2004年11月05日


イラクで人道援助従事者がさらされる危険の度合いが極めて深刻化している事態にともない、国境なき医師団(MSF)は同国での活動の停止を決定した。人々が人道援助・医療援助を今もなお必要としているなかで、この決断をとらざるを得なかったことは非常に遺憾である。

しかしながら、暴力がエスカレートし続けている状況下で、明らかに国際人道援助組織に向けられた深刻な危険にスタッフをさらし続けることはもはや容認できなくなったとMSFは考える。

MSFのオペレーション支部のひとつ、MSFベルギーの事務局長であるGorik Oomsは次のように述べる。「MSFという組織が、外国人、イラク人を問わず自らのスタッフに容認できるレベルの安全を確保することは不可能になってしまいました。イラクの人々が以前にも増して医療援助を必要としている今、それに応えられなくなってしまったのは無念の極みです。」

MSFは常に「活動の独立性」という原則を遵守し、医療援助を緊急に必要としている人々を支援するという方針に、政治的、軍事的、またはその他の動機による干渉が加えられることを決して認めることなく活動してきた。しかし今日のイラクでは、紛争当事者は独立した援助活動を軽視する態度を繰り返している。

MSFはイラクで2002年12月から援助を提供してきた。バグダッドが爆撃されている間は、外国人派遣ボランティアからなる小規模なチームが市内に残り、いくつかの病院の支援を行った。その後間もなく、サドル・シティに3つの診療所を立ち上げるとともに、中核病院の支援を開始した。サドル・シティの診療所では、2004年1月以来、計10万件の診療が行われた。2004年に入ってからは、激しい戦闘にさらされた街(ファルージャ、ナジャフ、ケルバラ)で調査を実施し、地元の医療従事者の支援を行った。またサドル・シティでは救急車を用いた活動も開始した。最近では、ファルージャから避難した人々への支援に着手していた。

 この、誰から見ても真の人道的支援を行っている人々に非難され、その支援活動を断念させるようなアメリカなどの軍事行動が、国際的に認められるべき活動であるかどうか、法に照らしてご判断下さい。

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イラク派兵違憲訴訟の会・東京
会としては2007年9月 解散しました。
ここでは、訴訟の記録を残していきます。
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携帯電話 090・5341・1169