3:公共性ある行為と違法性との関係
最高裁判決昭和56年12月26日の通称大阪空港騒音公害事件において、下記のように判断されました。
- 国営飛行場の使用及び供用が第三者に対する違法な権利侵害ないし法益侵害となるかどうかについては、侵害行為の態様と侵害の程度、被侵害利益の性質と内容、侵害行為のもつ公共性ないし公益性の必要性の内容と程度等を比較検討するほか、侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況、その間に採られた被害の防止に関する措置の産む及びその内容、効果等の事情をも考慮し、これらを総合的に考慮して判断すべきである。(最高裁判決平成5年2月25日判決も同趣旨)
被告は自衛隊のイラクへの派遣がわが国のためであると主張するわけですから、公共事業であるということです。では、これについて「侵害行為のもつ公共性ないし公益性の必要性の内容と程度等」を比較検討し、また、「侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況、その間に採られた被害の防止に関する措置の産む及びその内容、効果等の事情」を考慮できるだけの資料を提出してください。それがかなわなければ判断はできないはずです。
先に提示した甲第81号証の日光太郎杉事件でも、この杉の無形の価値を認めて道路建設のための土地収容を取り消す判決が確定しています。
4:立証責任について
甲第88号証を提出します。
これは、平成4年10月29日の最高裁判決です。伊方発電所原子炉設置許可処分取消訴訟といわれているものです。
判決要旨から引用します。
- 二 原子炉施設の安全性に関する被告行政庁の判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟においては、右判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきものであるが、被告行政庁の側において、まず、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議において用いられた具体的審査基準並びに調査審議及び科断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることが事実上推認される。
この判例によれば、イラクへの自衛隊派遣決定経過における具体的判断基準、並びに調査情報や判断の過程でもまた、「被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する」責任があると、私は読みとります。この判断に従い、別紙にて、被告に対し求釈明をいたします。
2004年(ワ)第9274号 違憲行為差止等請求事件
原 告 杉山百合子
被 告 国
について
求 釈 明 書 (2)
原告 杉山百合子
【1】民間の人道支援団体が活動していたイラクに、武器を持つ形での派遣をした根拠を示してください。
他の方法での人道支援活動を選択しなかった理由を、根拠を持って説明して下さい。
【2】国会での審議に先駆けて派遣を決定した緊急性を説明してください。
【3】甲第86号証に示した防衛庁防衛研究所の『防衛戦略会議 報告書』の以下の見解に対して政府の見解を示してください。特に、自衛隊派遣の根拠についてこのような判断があって行ったかどうか釈明して下さい。
- ア:「不義」を正す意欲と能力を持つ者がいれば、その者に委ねるというやり方が考えられ、かつ、それ以外のやり方は考えられない。
イ:『日米同盟強化がわが国最高の国益の一つである』と言っても、もはや日本国内で奇異な印象を与えることはないだろう。国民多数は、日本が熟年期を迎え、国力の低下が避けられないことを感じ始め、国益を実現するためには世界強国である米国の力を賢明に利用して、国際秩序を維持する必要があることを知っている。
ウ:国内、国外とも盤石の態勢で、戦力も充実しており、米国の中東に対する影響力を強める千載一遇のチャンスだ。トンキン湾事件、プエブロ事件のようなきっかけが必要になり、イラク北部に居る反政府勢力が、化学兵器を地中に埋めたとしても十分な理由になる。1月20日頃に状況を作るだろうが、それでも新決議ができない場合には米英だけで攻撃するであろう。その場合に、攻撃の中心に参加する国も出てくる。
【4】「テロ資金供与に関するEATF特別勧告」における、行為とその前提行為との関係をイラク攻撃における自衛隊派遣他の日本政府の行為に当てはめるとどのような判断が導かれるか釈明してください。